約 969,215 件
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/554.html
http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1341918213/ 京太郎「毎日毎日、雑用ばっかで疲れたなぁ」 京太郎「冷静に考えたらここまで働いてる以上、何らかのご褒美があってしかるべきだろ」 京太郎「よし! そうと決まれば、セクハラでもしに行くか!」 京太郎「きっとみんなも、笑って済ませてくれるだろ」 京太郎「まずはオーソドックスにスカートめくりでもするか」 京太郎「最後にやったのは小学校低学年だっけ? まさか高校生にもなって再びやるとは想定していなかったぜ」 京太郎「問題は咲、和、優希、部長、染谷先輩の中の誰にするかだが……」 京太郎「とりあえず、最初は染谷先輩にしておくか」 京太郎「あの五人の中では一番俺への扱い良いし、ちょっとしたスキンシップってことで誤魔化せるだろ」 京太郎「そうと決まれば、さっそく二年の階へGOだ」 京太郎「染谷先輩!」 まこ「ん、京太郎か。珍しいのう、ここは二年の階じゃよ」 京太郎「ええ、知ってます。実は染谷先輩に用がありまして」 まこ「用……?」 京太郎「その……実はですね……」 まこ「何じゃ、気軽に言ってみ」 京太郎「では、失礼して……そりゃっ!」 バサァッ まこ「なっ……!」 京太郎「うん、白ですか。健康的でいいですね」 まこ「きょ、京太郎……お前、どういうつもり……」 京太郎「では、また部室でお会いしましょう! 失礼します!」ダッ まこ「な、何だったんじゃ一体……」 京太郎「とりあえず、スカートめくりは無事達成した」 京太郎「だが、まだまだ俺の労働に対する報酬としては割に合わないな。染谷先輩だし」 京太郎「次のセクハラは……ん、そういえば部室にベッドがあったな」 京太郎「スヤスヤと眠る俺、起こそうとする女の子……しかし、俺はなかなか起きない」 京太郎「痺れを切らせてバッとシーツを剥ぐと、そこには丸裸の俺が!」 京太郎「これは完璧じゃないか! スカートめくりは完全に俺が悪いが、こっちはフィフティーフィフティーっぽいしな!」 京太郎「さっそく放課後やってみるか」 京太郎「そんなわけで、やって来ました麻雀部」 京太郎「よし、まだ誰もいないな……じゃあ服を脱いでと。パンツも脱いじまうか」 京太郎「この服は適当に、見えない所に隠しておけばいいかな」 京太郎「後は寝たフリをしながら、誰かが来るのを待つだけだ」 数分後 ドア「ガチャッ」 京太郎(お、来た来た……誰だろう) 咲「こんにちはー……って、まだ誰もいないかな」 京太郎(咲か……いいだろう、俺の裸を目に焼き付けるのだ) 京太郎「zzz……」 咲「あれ? 京ちゃん寝てるの?」 京太郎「ん……咲か……」 咲「京ちゃん、そのベッドはお泊り用だよ。起きなよ」 京太郎「あと1分……」 咲「もう、わかったよ。1分ね」 咲「……ほら、1分経ったよ」 京太郎「うーん……もう1分だけ……ムニャムニャ」 咲「はぁ……今度こそ最後だからね」 咲「はい、京ちゃんおはよう」 京太郎「……あと5分……」 咲「伸ばさないの! ほら起きて起きて!」 京太郎(ここでシーツをぎゅっと引き寄せることにより、咲にシーツを意識させる) 京太郎(そうすればきっと、咲もバッとシーツを剥ぐに違いない!) 京太郎「zzz……」ギュッ 咲「…………」 バッ 咲「ほら、京ちゃん起き……って、きゃああああああああああっ!」 咲「な、何で裸なの京ちゃん!?」 京太郎「あー……いやぁ、俺の生まれたままの姿を咲に見てほしくて……」 咲「そんなの私は見たくないよっ!」 京太郎「まぁそう言うな。見よ、この肉体美」 咲「あっち向いてるから早く服着てよ!」 京太郎「おーい咲、もういいぞー」 咲「もう、信じらんない……」 京太郎「まぁまぁ、そうぷりぷりするな。俺たちの仲じゃないか」 咲「はぁ……こういうイタズラはもうやめてね……」 京太郎「善処する」 京太郎(そんなこんなで部活が始まったわけだが、まだまだセクハラし足りないな) 京太郎(次はどうしたもんか……そうだな、エロ本でも見せるとするか) 京太郎(麻雀の勉強がしたいって言って本を借り、返す時にエロ本をセットでつける) 京太郎(うん、こんなところか。それにしても染谷先輩と咲の視線が痛いぜ) 京太郎(さて、誰から借りるか……もう一回染谷先輩や咲にするか、それとも他の3人の誰かにするか……) 京太郎(よし決めた、優希から借りよう) 京太郎「優希、悪いが麻雀の勉強に良い本とか持ってたら貸してくれないか」 優希「いいけど……どういう風の吹き回しなんだじぇ?」 京太郎「いや、俺って弱いじゃん……だからみんなの特訓相手にはあんまりならないし」 京太郎「だからさ、せめて本でも読んで一人の時間でも強くなれるようにと思って」 優希「おー、犬のくせにやるじゃないか!」 和「素晴らしい心がけだと思います」 久「でも須賀君も部員の一人だからね。気軽に打ってくださいって言ってきていいのよ」 京太郎「うぅ……みんな、ありがとう……」 優希「ちょうど今いい本持ってるから貸してやるじぇ!」 翌日 京太郎「こんにちは、みんなお揃いですか」 久「こんにちは、須賀君」 咲「……京ちゃんより後に来ると嫌な予感がしたからね」 まこ「……咲、お前さんも何かあったんか?」 咲「あ、え、えーと……って、染谷先輩も?」 まこ「あぁ、いや……」 京太郎「あ、優希。ありがとな、これ返す」 優希「おー、もう読み終わったのか……って、何で袋に?」 京太郎「いや、ちょっとばかしお礼の品を詰めておいたんで」 優希「本当か! お前は使える犬だじぇ!」バリバリ 京太郎(って、今開けるのかよ!) 優希「おぉ、これ……は……」 久「……へ?」 和「あ……」 優希「なっ……なっ……なっ……」 京太郎「俺の一番大事なものだ! 大切にしてくれよな、優希!」キラーン 優希「こ……こんなの、いらないじぇーーーーーっ!」 ブンッ 京太郎「ぐはぁっ!」 優希「……京太郎、どういうつもりなんだじぇ?」 京太郎「いや、優希にはいつもよくしてもらってるから……お礼に大切なものをと」 久「須賀君、女の子にプレゼントするならもっと選びようがあるでしょう?」 和「最低です……」 京太郎「はい、ごめんなさい……」 まこ(京太郎、昨日から何かおかしいのう……) 咲(京ちゃん、何か嫌なことでもあったのかな……) 優希「罰として今すぐタコスを買ってくるのだ!」 京太郎「ガーン!」 京太郎「体よくパシリにされてしまった……」 京太郎「さすがにそろそろ、みんなも何かおかしいと気付き始めている……」 京太郎「だが、もう少しならいけるかな」 京太郎「よし次は優希にディープキスするか!」 京太郎「か、買ってきたぞ……ぜぇぜぇ……」 優希「ご苦労だった犬! さっさとよこすんだじぇ!」 京太郎「ほらよ」 優希「ガツガツガツ……んー、タコスうまー」 京太郎「……俺にも一口、くれないか」 優希「許してやろう。ほれ、よく味わって食うんだじぇ」スッ 京太郎「いや、そっちじゃなく……」 優希「ん、どうした犬。そんな近づいて……」 ブチュウウウウウウ 優希「~~~~~~~~~~!」 一同「」 京太郎「ふぅ……ファーストキスはレモン味って言うけど、タコス味だったな」 優希「…………」 京太郎「確かに一口貰ったぜ、優希」 優希「……う……」 京太郎「ん?」 優希「うわああああああーーーーーーーん!」 京太郎「うわ、泣くなよ!」 優希「ぐすっ……ぐすっ……」 和「よしよし、怖かったね優希……」 咲「京ちゃん……」 まこ「……京太郎、説明してくれんかのう?」 久「まこと咲からも話は聞いたわ」 京太郎「はい……」 久「昨日から少しおかしいと思ってたけど……一体どういうつもりなの?」 久「あなたは、そんなことをする人じゃなかったはずなんだけど」 京太郎「……実は、これには事情があるんです」 久「事情? 何かしら」 久「もちろん……ちゃんと納得のいくものなんでしょうね」 京太郎「これは……」 京太郎「みんなが可愛すぎるからいけないんです!」 久「……へ?」 京太郎「だってそうでしょう! 俺は頭の中が真っピンクの思春期の男子高校生!」 京太郎「それがこんなに可愛い子に囲まれて、毎日毎日一緒に過ごして……」 京太郎「俺は……あふれ出る性欲を、抑えきれなかったんですよぉー!」 京太郎「うぅ……ごめん、みんな……」 咲「…………」 和「…………」 優希「…………」 まこ「…………」 京太郎「俺、麻雀部やめます……」 久「……須賀君……」 京太郎「これ以上ここにいたら、またみんなに何をするかわからない……」 京太郎「半年にも満たない短い期間だったけど、今まで楽しかったです」 京太郎「ありがとう……それじゃ、全国頑張ってください」 久「ちょっと待ちなさい」 京太郎「何ですか……」 久「はぁ……実はね、みんなそんなところだろうと思っていたのよ」 久「そして、いずれ麻雀部をやめるなんて言い出すことも予測済みだったわ」 京太郎「え?」 久「あなたは、やめる必要なんてないわ。なぜなら……」 久「そういうセクハラは全部私にすれば、他のみんなにイタズラすることもないでしょう?」 京太郎「ぶ、部長……いいんですか!?」 久「よくないわよ……でも仕方ないじゃない、雑用がいなくなっても困るし、私は部長なんだから」 久「ただし! 節度は守ってね、あくまでも問題にならない程度よ!」 京太郎「あ……ありがとうございます、部長!」 まこ「やれやれ……自己犠牲精神は立派じゃのう」 咲「部長、ごめんなさい……京ちゃんが迷惑かけて」 和「ほら、優希ももう泣き止んで……」 優希「……うん……」 京太郎「じゃあ部長、早速ですが……」 京太郎「罵ってください」 久「……は?」 京太郎「俺に汚い言葉で! 滅茶苦茶に罵ってください!」 京太郎「俺は部長に、叱られたいんです!」 久「……そ、それで須賀君が満足するのなら……」 京太郎「お願いします」 久「ふぅん……本当にそんなのがお望みなのね。とんだド変態ね」 京太郎「はぅっ」 久「何興奮してるのよ。生きてて恥ずかしくないの?」 京太郎「はぁ……はぁ……」 久「どうしてほしいの? ちゃんと言わなきゃわからないわよ」 京太郎「あぁ、もっと……もっと、罵ってください……」 久「あらあら、何て顔してるのよ。だらしないわね」 久「心の底まで犬に成り下がっちゃったのかしら?」 久(こんなのでいいのかしら……?) 久「ずっと私の体見てたんでしょう? 本当にいやらしい子……」 久「あら、ズボンが膨らんできたわよ……何考えてるの?」 京太郎「ぶ、部長のことを……」 久「私のこと? 何想像してるのよ、エッチね……」 久「あなたなんか、一人で慰めているのがお似合いよ」 久(私、何してるんだろう……) 優希「リーチだじぇ」 和「集中できません……」 まこ「あの二人に目を向けたらいかん」 咲「京ちゃんが遠いところに行っちゃった……」 そんなこんなで全国会場 優希「ついに来たじぇ、東京!」 和「さすがに人が沢山いますね」 京太郎「うおおおお……あっちにもおっぱい、こっちにもおっぱい……」 咲「京ちゃん、問題だけは起こさないでね」 京太郎「部長、おっぱい揉ませてください」 久「またなの……? 全国大会くらい我慢しなさい」 京太郎「いや、揉みたいんです。あぁ、もう他の選手でも……」 まこ「久、こいつから絶対目を離さないようにの」 久(須賀君) 京太郎(何ですか、部長) 久(清澄の部員が他校の選手の胸を揉んだら、大変なことになるわ) 京太郎(でも、我慢できません) 久(ほら、その……ホテル戻ったら、私のを揉ませてあげるから……) 京太郎(いいんですか!?) 久(よくないわよ! でも仕方ないでしょ、そうしないと咲たちに矛先が向くんだから!) 京太郎(うう……ここは……でも……) 京太郎「やっぱり我慢できません!」 久「ちょっと、須賀君!?」 京太郎「だってさっき、永水女子の岩戸さんや阿知賀の松実姉妹も見ちゃったんですよ」 京太郎「これで我慢できたら、今のような状況になってません!」 優希「うむむ、確かに……」 和「優希、納得するところじゃないですよ」 京太郎「部長がおっぱいを揉ませてくれないなら、俺は彼女たちを……」 ザワザワ ナニ?オッパイ? 咲「ちょ、ちょっと京ちゃん、声が……」 久「わ、わかったわ! わかったから静かに!」 京太郎「ありがとうございます。じゃあここにしますか、場所変えますか」 久「ここでしたら叩き出されるでしょ……」 京太郎「じゃああっちの人の少ないところにロッカーがありましたから、その中でしましょう」 久「我慢するのよ久……、今は雑用の人手が必要、今は雑用の人手が必要……」 咲「行っちゃった……」 和「こんなのバレたら、どうなるんでしょうか」 まこ「二人は恋人だからこれくらい当たり前……とでも言って誤魔化すしかないのう」 優希「絶対当たり前じゃないじょ……」 久「ちょ、ちょっと狭くない……?」 京太郎「狭いところが落ち着くのって何なんでしょうかねアレ」 久「知らないわよ……それより、さっさと済ませてよ」 京太郎「では、失礼して……」 モミュモミュ 久「んっ……」 京太郎「相変わらず揉み心地いいですね。大きすぎず小さすぎず、良い形のおっぱいです」 久「何か複雑な気分ね……」 久「んっ……はぁ……」 京太郎「感度よくなってませんか、部長?」 久「そんな……こと……んんっ……」 京太郎「やっぱり感じてますよ。開発されちゃったってやつですか?」 久「違っ……須賀君が、うまいから……」 京太郎「ほら、やっぱり……あぁ、ちょっとこれヤバいかも」 久「須賀君、何を……」 京太郎「ごめんなさい。スカート、失礼します」バッ 久「!?」 久「す、須賀君! 約束が違うわよ、節度は守ってって……」 京太郎「でも、もう限界です」ヌギヌギ 久「だ、ダメよ!」 京太郎「部長も、本当はしてほしいんでしょう?」 久「そ、そんなこと……」 京太郎「ほら、だってこんなに濡れてるじゃないですか」クチュクチュ 久「あっ……はぁ……」 京太郎「部長……いきます」 京太郎「いいですか……?」 久「…………」 京太郎「……部長……」 久「……はぁ、わかったわ。でも、痛くしないでね」 京太郎「……ありがとうございます。じゃあ……いきます」グッ 久「うっ……!」 京太郎「うぁっ……部長、すげぇ気持ちいいです……」 久「あっ……あぁ……」 京太郎「ぶ、部長……ダメです、もう……」 久「須賀君……! だ、ダメ、中は……」 京太郎「部長、好きです……」 久「え……」 京太郎「大好きです、部長……」 久「はぁ……す、須賀君……」 京太郎「いきます、部長!」 久「あぁっ!」 京太郎「はぁ……はぁ……」 久「……須賀君……」 京太郎「ぶ、部長……」 久「はぁ……もういいわ。でも、中はダメって言ったでしょ」 京太郎「あ……すいません」 久「……それより、さっさと服を整えましょう。出るわよ」 京太郎「出るところを誰かに見られたら、どうしましょうか」 久「言い訳できないわね……匂いもあるし。誰にも出くわさないことを祈りましょう」 ガチャッ ??「……え?」 久「あ、あなたは……」 京太郎「か、風越の福路さん……」 福路「あなたは、う……竹井さんと、確かマネージャーの……」 京太郎「須賀京太郎です。マネージャーじゃないですけど」 久「あっちゃあ……」 福路「お、お二人は……何をなさっていたんですか?」 福路「こんな狭いところで、汗だくになって……」 福路「服も乱れてるし……ま、まさか……」 久「何してたかって言われると……」 京太郎「ナニしてましたとしか言いようがないですね」 久「最低のオヤジギャグね」 福路「……」 久「あの、福路さん……このことはできれば内密に……」 久「その、部長と部員が会場でいかがわしい行為をしていたなんてバレたらまずいから……」 福路「……は、はい……わかりました……」 福路「ぐすっ……お邪魔しました、お幸せに……」タッタッタッ 京太郎「……なんで、泣いてたんでしょうか?」 久「さぁ……ちょっと刺激が強すぎたのかしら、彼女ウブそうだし」 久「それより、須賀君。さっき言ったこと……本当なの?」 京太郎「さっきって……」 久「私のことが、好きだって……私は溜まった性欲をぶつけるだけじゃなかったの?」 京太郎「……最初は確かにそうでした。でも、今は違います」 京太郎「以前の俺でしたら、今も福路さんに何らかのセクハラを働かずにはいられなかったでしょう」 久「もはや呆れて言葉もないわ……」 京太郎「今は……もう、俺の心は揺らいでません」 京太郎「俺がいやらしいことをしたいのは、部長だけです!」 久「…………」 京太郎「お願いです……俺と、付き合ってください」 久「…………」 京太郎「…………」 久「はぁ……間違いなく、私の人生において最低の告白ね……これは」 久「まずロッカーの中で、その……しながら告白して、その後はいやらしいことをしたいのは私だけって……」 久「もう少し、ムードってものを考えるべきじゃないの?」 京太郎「……すいません……」 久「……私、人使い荒いから付き合うのは大変よ」 京太郎「それは身に染みて承知してます」 久「そういえば、そうだったわね……でも、よく文句の一つも言わずについてきてくれたわ」 久「……本当に咲や優希じゃなくて、私でいいの?」 京太郎「……咲や優希のことも、もちろん好きです。でも、恋人になってほしいのは、部長以外考えられません」 京太郎「俺が愛してるのは……あなただけです、部長」 久「……そういう言葉をまともなムードで言ってほしかったんだけどなぁ。ダメな後輩で苦労するわ」 京太郎「ごめんなさい……」 久「でも……一緒に苦労するのも、悪くないかもね」 京太郎「そ、それって……」 久「ほら、そろそろ戻らないとみんな怪しむわよ。あと、昼食の買い出しもよろしくね」 京太郎「は、はい! 行ってきます!」 久「あ、ちょっと待って」 京太郎「な、何ですか?」 チュッ 久「これからよろしくね……京太郎君♪」 END 福路「うわぁぁぁぁぁぁん!」 池田「よしよし……ほらキャプテン、いい加減泣き止むし」 吉留「そ、そうですよ。世の中にはまだまだ素敵な人が沢山いますし……」 文堂「でもキャプテンって、いずれ悪い男に騙されそうですね」 深堀「それ、ちょっと分かる」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/10058.html
前話 次話 インタビューの続きー。 照「ただいま。……?」 菫「ああ、照か。おかえり」ギチギチギチ 淡「あわばばばばば…………」 照「……どうして菫が淡にロメロスペシャルかけてるの?」 誠子「これです」 照「…………お菓子の盛り合わせ?」 誠子「これを持ってきた時、淡の奴は「貰った!」とだけ言ってたんですけど、例のSK君の動画を見て、材料費は自腹とはいえ彼にタカってきたのが分かりまして」 尭深「先輩は見ましたか? 動画……」 照「ああ、うん。うちの事が話題に上がってた」 誠子「それで、開会式抜け出したのと、動画で他校をおちょくる発言したのが分かったのも合わせて、今部長がお仕置きしてる所です」 照「成程……」 淡「テルー! テルー! 納得してないで助けてー! 今淡ちゃんの背骨が大変な事になってるの!」 菫「まだ余裕そうだな。もう少し強くいくか」 淡「あわびゃああああああああ!!!」 淡「」チーン 菫「それで照。例の動画の事だが」 照「?」 菫「長野県代表清澄高校の大将、宮永咲という一年が妹というのは、本当か?」 照「…………し、知らないし。私に妹とかいないし」 菫「とぼけようとするのは、不仲だからか?」 照「…………」 菫「それともネットで「会場でオーラ撒き散らすポンコツ魔王」と呼ばれてる妹の姉だと思われたく無いからか?」 照「いや、それは……」 菫「言っておくが、記者の前では取り繕っていても、ポンコツ加減においてはお前も相当なものだからな?」 照「……ひどい」 菫「ひどくない」 照「はぁ……。そう。彼が言ってた通り、咲は私の妹」 菫「やっぱりか」 照「……あんな発言をされなきゃ、知られずに済んだのに」 尭深「……それはどうでしょう?」 照「? どうして?」 尭深「……多分ですけど記者の人は、先輩と清澄の子とはインタビュー前から何か繋がりがあると睨んでいて、S君に聞いたのは裏を取る為に過ぎないように思います」 照「でも、それを認める必要は無いんじゃ」 誠子「いえ。全部を隠そうとするより、一部の表面的な事を認めて、それ以上は家庭の事情と言えば、そこから先に踏み込む事は憚れるムードは出来ますね」 菫「無論それでも踏み込んでくる者もいるにはいるだろうが、そういうのは彼が認めようが認めまいが掘り下げてくる。ならば、それに非難的な目が出来た方がいいかもしれんな」 照「……それなら、感謝すべき? なのかな?」 尭深「……それもどうでしょう。先輩に断りないのは事実ですし、そういう意図があったのかも、ただの憶測ですから……」 誠子「まぁ、S君のキャラ的にそんな計算高そうじゃないですしね。あったとしても、誰かの入れ知恵かも」 菫「その辺りの事情については」 照「……話したくない」 菫「ならいい。私も無理に聞いたりしない」 照「……いいの?」 菫「私達に遠慮してるだけなら、無理にでも聞き出すが?」 照「…………私が話したくないだけ、です」 菫「よろしい」 淡「テルーって、キョータローの事は知ってたの?」 誠子「あ! 復活して早々にこのバカ! せっかく話が綺麗にまとまりそうだったのに!」 照「……一応。返事はしなかったけど、咲から送られてきた手紙に「京ちゃん」って名前が何回も出てきたから、読んでたら嫌でも覚えた」 淡「ふーん。そのサキってのには会いに行くの?」 菫「お前な……」 照「いいよ、大丈夫。でも、会いには行かないかな」 淡「なんで?」 照「……会いたい気持ちが無いわけじゃないけど、会いたくない気持ちと、会ってどうしたらいいか分かんない気持ちのが大きいから」 淡「そっかー。あ、お菓子食べる!? キョータローが作ったやつ、ハチャメチャにおいしーんだよ!」 菫「いやお前話題の変え方強引過ぎるだろ」 照「食べる」 菫「こいつもこいつで……」 照「もぐもぐ」 菫「はぁ……、まぁいい。美味だったのは確かだからな」 照「もぐもぐ」 誠子「こういうの作り始めたの最近みたいですけど、それでこのレベルならセンスありますよね。執事さんとやらの教えが上手いんでしょうか?」 照「もぐもぐ」 尭深「これとこれは、緑茶にも合うからおすすめ……」 照「…………」ゴックン 淡「これは日持ちしないから早めに食べとけってさー」 照「…………ねぇ、菫」 菫「? どうした?」 照「白糸台が三連覇達成したら、京ちゃんって子をマネージャーに引き抜いていい?」 菫「お前この大会終わったら引退だろうが」 照「……仕方無い。プロ入りしたら、私専属のマネージャーに」 菫「言っておくが、私がお前をポンコツと呼ぶのはそういう所だからな?」 カン 前話 次話
https://w.atwiki.jp/kyo3nen/pages/41.html
京太郎「東京、来ちまったな」 久「なに憂鬱そうな声出してんのよ」 京太郎「いや、人多いなって」 久「何言ってんのよ。この前大阪に行ってきたばかりでしょ」 京太郎「そうだけどさ、なんかもっとこう……密度が違うなって」 久「それはそうかもね」 京太郎「で、今日は行き先決まってるのか?」 久「白糸台か臨海に行こうかなって思ってるけど」 京太郎「要するにいつもの行き当たりばったりだ」 久「そうとも言うわね」 京太郎「岩手はくじ引きで行き先決めたってのに、オファーはしっかり取り付けてたのにな」 久「とりあえず駅から出ましょ。息つまりそうだし」 京太郎「さて、どっちに行く?」 久「どっちでもいいけど、臨海の方は留学生が多いから打たせてもらえるかって話よね」 京太郎「そもそも強豪校はそういうのに厳しそうだよな」 久「そうよねぇ……この前の千里山みたいな例の方が珍しいのよね」 京太郎「それもこれも俺のおかげだけどな」 久「本当、妙なところで役に立つのよね」 京太郎「お、やっと役に立つって認めたか」 久「調子乗んな」 京太郎「じゃあ、コイントスで決めよう」 久「そうね。その方がスッパリ決まりそうだし」 京太郎「よし、そうと決まれば早速」 久「表が白糸台で、裏が臨海ね」 京太郎「じゃあ、投げるぞ」 久「いいわよ」 京太郎「そらっ――」 京太郎(表か裏か――確率は二分の一) 京太郎(白糸台には照ちゃんがいる……) 京太郎(もし、表が出れば俺は――) 「おっと、すまない」 「この百円玉、君たちのものか?」ヒョイ 京太郎「あ」 久「あ」 「なに、蹴ってしまったとは言っても百円玉は百円玉だ。使えなくなるということはない」 京太郎「……」 久「……」 「な、なんだ……なにかいけないことをしてしまったか?」 京太郎「いや……」 久「別に……」 「ならそんな目で見ないでくれっ」 「本当に済まなかった」ペコッ 京太郎「もういいよ」 久「やりなおせばいいだけだしね」 「ならさっきはなんであんな目で……」 京太郎「それはなんというか……」 久「その場の流れってやつね」 「……私はもう行ってもいいか?」 京太郎「おう、悪かったな」 久「あ、最後にひとついい?」 「……構わないが」 久「あなた、白糸台か臨海の生徒だったりする?」 「そうだが、よくわかったな」 久「なーんて……うそっ」 京太郎「ひょっとしてまたしても当たり引いたっぽい?」 「白糸台高校一年、弘世菫だ」 京太郎「いやー、これもう俺のオカルトってことでいいんじゃね?」 久「麻雀にはまったく役に立たないけどね」 京太郎「どうせ弱いですよーだ」 菫「一体何の話だ?」 久「ちょうど麻雀の相手探してたの」 菫「なるほど、そういうことか」 久「白糸台の生徒だったら強さも期待できそうだし……どうかしら?」 菫「私個人は構わないが……もう一人は見つかるかどうか怪しいな」 久「できればもう二人で」 京太郎「もうやめてっ」 菫「彼は打てないのか?」 久「打てるけど、打てないも同然ってところね」 菫「……そうか」 京太郎「ちくしょう! そんなに言うんだったら俺が探してきてやるよ!」 久「ちょっと、どこ行くのよ」 京太郎「どこか! 一時間後に集合な!」 京太郎「威勢良く言ったけど、どうしようか」 京太郎「こんなとこじゃ知り合いもいないしな」 京太郎「うーむ……」 京太郎「ま、適当に声かけてみるか」 京太郎「ねーねー、そこの君ー」 「ん、私か?」 京太郎「そうそう、ちょっと聞きたいことあるんだけど」 「これは、俗に言うナンパというやつなのか?」 京太郎「いや、麻雀できる相手探してたんだけど」 「麻雀?」 京太郎「そうそうちょっと腕試しで東京に来てみたんだけど、相手探すのに苦労しててさ」 「なるほどな……いいだろう」 京太郎「だよなー、そんなすんなり……っていいのかよ」 「カタギかどうかは見ただけで大体わかる」 京太郎「カタギって……」 「ちょうど暇してたんだ……辻垣内智葉、臨海女子の一年だ」 京太郎「マジか!」 智葉「行こう、時間が惜しい」 京太郎「そうだな、案内するよ」 京太郎「てなわけで、つれてきました!」 智葉「臨海女子一年、辻垣内智葉だ」 久「……やっぱりあんたのそれってオカルトかもね」 菫「臨海女子……」 智葉「この四人で打つのか?」 久「できればもう一人ほしいところだけど……」ジロッ 京太郎「だからそれはもうやめろって」 久「ま、仕方ないか」 菫「なら移動しないか? 外は正直暑い」 智葉「そこらの雀荘だったら冷房も効いているとは思うが、どうする?」 久「それに賛成。東京暑すぎ」 京太郎「へぇ、ここが雀荘か……以外と綺麗なんだな」 菫「最近は子供も出入りしているからな」 久「昔みたいなイメージのままだと競技の印象も悪くなるしね」 智葉「まぁ、そういう場所もないわけではないが……」 京太郎「……思ったんだけどさ、辻垣内って何者?」 智葉「言ったはずだ。ただの女子高生だよ」 京太郎「ただの女子高生がカタギって言葉を使うのか……」 菫「……なかなかに混んでるな」 久「こんな気温だしね、みんな涼みたかったんじゃない?」 京太郎「お、あそこの卓空きそうじゃね? 行ってみようぜ」 智葉「ん、あれはまさか……」 「今日はありがとうございました」 京太郎「ちょうど終わったみたいだな」 久「うそ……」 菫「夢、ではないのか?」 智葉「残念ながら現実だな……」 京太郎「三人とも、どうかしたのか?」 久「どうかしたって……あんた、あの人知らないの?」 京太郎「どっかで見たことあるような気がするけど……あっ」 京太郎「小鍛治健夜! たしか……アラフォーマスター!」 健夜「アラサーだよっ!」 久「このバカっ」 京太郎「いてっ」 久「グランドマスターよグランドマスター!」 京太郎「そうだ、それだ」 健夜「ちょっと、打ってく? 私も今日は暇してたからさ……」ピクピク 京太郎「あわわわわわわ」 久「……無事に長野に帰れるかな?」 菫「ど、どうしよう……ここはまずサインをもらうべきなのかっ」 智葉「相手にとって不足はない……と言いたいが、これはやばいかもな……」 健夜「さぁ……麻雀、やろうね」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6142.html
ステルスバースディー 京太郎「誕生日おめでと」 桃子「ありがとうっす!」 京太郎「今日は俺の手料理をご馳走してやるから楽しみにしてろよ?」 桃子「はーいっす♪」 食事後 京太郎「ほら、モモに誕生日プレゼントやるよ」 桃子「マジっすか?!」ガタッ 桃子「ちょー嬉しいっす!」ワーイワーイ 京太郎「ほらよ」サシダシ 桃子「さっそく開けるもいいっすか?」 京太郎「おう」 桃子「なっにかなーなーにかなっす」 桃子「これは・・・ピンクのお花っすか?」 京太郎「お花の髪飾りな。モモに似合うと思って買ってきたんだ」 桃子「えへへさっそく着けちゃうっす♪」ニコニコ 桃子「どう・・・・・っすか?」ウワメヅカイ 京太郎「すっげー似合ってるぜ」ナデナデ 桃子「えへへーやったっす」ニヤニヤ 桃子「そういえばこれってなんのお花なんですか?」 京太郎「ブーゲンビリアって花だよ」 桃子「へぇー京さんって詳しいっすねぇ」 京太郎「まぁな!」 桃子「今日はとっても楽しい誕生日になったっすよ。ありがとうっす」 京太郎「俺も毎年祝ってもらってるんだからこれくらいっさせてくれって」 桃子「なら、これからもずっと京さんの誕生日を祝ってあげるっす♪」 ※ブーゲンビリアの花言葉を調べた桃子が真っ赤になりベッドにばたんきゅ~しますが別の話です おもち大戦争 桃子「ぐぬぬ・・・」 桃子(まさか京さんの知り合いにこんなにおもちを持ってる人がいるなんて・・・) 美穂子「えーっとなにかしら?」 和「これはなんの集まりなんですか?」 咲「私に聞かないでよ・・・」 咲(なんでみんなおっぱい大きいの・・・不公平だよ・・・) シロ「京太郎、おんぶ」 京太郎「はい喜んd」 照「させない」ダキッ 桃子「・・・・・・」 桃子「もしかして皆さん」 桃子「京さんのこと好きっすか?」 美穂子「・・・・・////」 シロ「まぁ・・・(告白までしたし)」 咲「・・・・///」コクン 和「いやあのなにがなんだかわからないんですが・・・」 桃子(他の女の子は皆好きみたいっすね・・・) 桃子(でもこのおっぱいさんだけはまだ好きじゃないみたいっす) 桃子(こんなおっぱいで迫られたらおっぱい好きの京さんじゃイチコロっす) 桃子(絶対にこれだけは阻止しないと・・・・っす) 桃子「絶対負けないっす!」 京太郎「照さん、いつまでくっついてるつもりっすか?」 照「内緒」ポリポリ 咏たんうんたんぺったn( 京太郎「皆今頃全国の舞台で戦ってるんだろうなぁ・・・」 京太郎「ま、暗くなってないで部室の雑用でもこなしますか!」 京太郎「まずは雀卓の掃除をして」 ガララッ 京太郎「今、麻雀部はいませんよー」フキフキ ?「お、いるじゃん」 京太郎「いやだから、麻雀部は全国大会に行ってますって」フキフキ ?「いやいやあたしは須賀に用事があってきたんだよ」 京太郎「はい? それにどうして俺の名前を?」 ?「男子の予選見させてもらったからね。それに中々面白い打ち方するじゃんか」 京太郎「どんな打ち方をしても勝てなかったら意味ないですよ」 ?「もっと強くなりたいか?」 京太郎「もちろん! 強くなって・・・全国行きたい」グッ ?「即答かい」 ?「須賀がどれだけ強くなれるかわっかんねーけど」 / /. . l / | ハ ヽ \ ハ . . l. . . . l | /. . l l 厂|` ー /、 l | \ { \, 斗-― . l. . . l | /.. . . l l | ! ヾ | ヾ/ヾ | } . . l. . . l | i . . l l l_ | | ハ | \___ } イ . . l | | i l l 孑卞 芋ミx′ ̄ ̄ ̄ ィ斧芋苡`V / | l. . . l | | l l | 込 | |じリ ら{ リj 犲 | l . ./ l | /| l l ト { 乂 |少 乂辷少 / 从 / l |{ .! l l ヾ| | | / / l || l/\l 「` | | , 〃〃 / / l || 从 \ \ヽ | | / ' l || ヾ 人\ \| / 、_____, / / || .〉 ヽ \ \{ ` ´ < >ヘ | / \ \ \ \ > < _彡 ' . . . .} | 「この三尋木咏が師匠になって強くしてやるよ」 見た目で判断すると痛い目見るよね 京太郎「三尋木さんってプロだったんですね・・・知らなかった」 咏「咏でいいっての」 咏「そりゃ牌のお姉さんとかと比べると知名度は低いだろうけど麻雀やってるんだったら知っててくれよー」ペシペシ 京太郎「ははーまことに申し訳ございませんー」ドゲザ 咏「で、さっきからそこにいるのは?」 桃子「私が見えるっすか?」 咏(そりゃああんだけ負のオーラ出してたら気づくんじゃねぇの? 知らんし) 咏「それがアンタがオカルトか、わっかんねーけど」 京太郎「コイツ、ものすごく影が薄くて誰にも気付いてもらえないんすよ」 桃子「京さんが初めて私を見つけてくれた人っす。もはや運命と言っても過言ではないっす!」 咏「あーなるほどなるほど」 咏「つまりコレな関係か」コユビタテ 京太郎「違います」キッパリ 桃子「 」ハゥ 咏(あーあ、ショック受けてやんのー女泣かせだな、知らんけど) 咏「なぁ京太郎?」 京太郎「どうかしました?」 咏「強くなるために何でもやるか?」 京太郎「もちろんですよ」 咏「なら、私の仕事についてきな」 咏「いいもん見せてやるよ」 プレゼントする物の意味を考えないと大変なことになるよね 京太郎「咏さーん」 咏「んー?」 京太郎「そういや前に櫛が壊れたーとか無くなったーとか言ってたっすよね?」 咏「そうだっけ? わっかんねー」 京太郎「それでいつもお世話になってる咏さんにプレゼントっす」 咏「ほうほう。私はいい弟子を持ったねぇ、知らんけど」 京太郎「これっす」 咏「・・・・あーこれか」 京太郎「あれ? お気に召さなかったっすか?」 咏「いやいやすっげー嬉しい」 咏(嬉しいけど・・・コレ・・・櫛を女性にプレゼントする意味知ってるのかねぇ・・・//) 咏(・・・なんかちょっとときめいちゃったじゃん///) 咏(ばーか///) 雑用も大事 京太郎「なんかすいません、こんなことに付き合わせちゃって」アハハ 美穂子「大丈夫ですよ?」ニコニコ 美穂子「こういう作業も結構好きですから」 京太郎(やっぱり天使だった) 美穂子「それにしても京太郎くんがこっちに来てるなんて驚きです」 京太郎「あはは、色々ありまして」 美穂子「京太郎くんは不思議な人ですね」フフ 京太郎「そうっすか?」ニヤニヤ 京太郎「いっ!!」 美穂子「だ、大丈夫ですか?!」 京太郎「ちょっと針が指に刺さっただけなんで舐めておけば治るっすよ」 美穂子「ちょっと貸して下さい」 京太郎「え、ちょっと何を」 美穂子「はむ」パクッ 京太郎「 」 美穂子「ちゅるちゅ・・・ちゅぱ」 京太郎(いつの間にか美穂子さんが俺の指を咥えていた。何を言ってるかわからねぇと思うがry) 美穂子「ちゅ・・・はい、これで大丈夫ですよ」ニコッ 京太郎「あ、はい・・・ありがとうございます」 美穂子「後でちゃんと消毒してくださいね?」 京太郎(この指は二度と洗わないでおこう) 美穂子「私ったらなんてはしたないことを・・・///」 美穂子「でも・・・ちょっと気持ちよかったかも・・・///」エヘヘ 咏たんレッスン 咏「京太郎、お前は相手の当たり牌を抱えるオカルトを持ってるだろ、わっかんねーけど」 京太郎「はい、そのせいで上がれなくなることが多々あるっす」 咏「大会でもそうだったけど放縦はあんまりしない」 咏「たとえ当たり牌を抱えたとしてもそれが本当に当たり牌なのか分からないのに放縦しないし」 咏「もしかして相手の手牌とか見えてたりするのか?」 京太郎「見えるっす」 咏「あーやっぱり」 咏「全部相手の当たり牌になったりすることもあるんだろ? 知らんけど」 京太郎「まぁ・・・そういうときは一番点数の低い相手に振込みますけど・・・」 咏「うし、決まった」 京太郎「何がです?」 咏「京太郎の教育方針だよ」 京太郎「ちょっとしか俺のオカルトのこと話してないっすよ?」 咏「いやそれだけ聞けりゃ十分」 咏「京太郎は相手の当たり牌で上がりを目指せるようにしな」 京太郎「は?」 咏「相手の上がりを止めながら自分が上がる」 咏「防御系のオカルトの基本だぜ? 知らんけど」 咏「まず開始にオカルトを使って相手の手牌を全て確認してどの牌が当たり牌になるか候補を決めておく」 咏「そんでその牌がきたら候補から外れた牌を切ってけ」 咏「自分が聴牌したら全力で突っ込め」 咏「当たり牌を止めてるから相手は上がれねーし」 京太郎「他の相手の当たり牌をツモったら・・・?」 咏「そのときは男らしく散れ」 咏「骨だけは拾ってやんよ」 咏「だからお前は自信を持って麻雀を打て」 咏「京太郎が自分の麻雀を信じれなくなったらあたしを信じろ」 咏「あたしは京太郎のこと信じてる」 咏「京太郎はあたしの自慢の弟子で」 咏「あたしは京太郎の師匠だからな」 咏「忘れんじゃねーぞ、知らんけど」 京太郎「はいっ!」 ステルスプール 桃子「京さーん」 京太郎「んー?」 桃子「この水着どうっすか?」ムネヲハリ 京太郎「ぶっ!!?」 京太郎(黒ビキニだと・・・!?) 京太郎(モモの白い肌に対称的なコントラストの黒いビキニはとても似合ってる。そしてなによりビキニを膨らませる大きく実ったおもち!) 京太郎(中学の時とは一回り二回りも大きいおもち。まるで私はここにいると主張している。天国はここにあったのか)(血涙 桃子「そんなに見られると照れるっす///」モジモジ 京太郎(モジモジすることでおもちが左右に揺れる・・・あぁもう死んでもいいかな) 桃子「あ、京さん、もしコレ取りたくなったらいつでもいいっすよ」クルッ 京太郎(紐ビキニだとおおおおお!!!!) 京太郎「いやいや、そそそんなことしないから///」 桃子「京さん照れてるっすね」ニヤニヤ 桃子「さっきの仕返し成功っす」 京太郎「やってくれたなモモ・・・」 桃子「悔しかったら捕まえてみろっすー」パタパタ 京太郎「準備体操しないでプールに入ったら危ないぞー」 桃子「鬼さんこちらー手のなる方へーっす」 京太郎「ったく・・・待ってろよー」 桃子「流れるプールに逆らうのって一度はやってみたいことっすよね」 京太郎「まぁわかる」 桃子「はぁ楽しかったっす」 桃子「またここに来たい・・・///」ザブン 京太郎「ん? 肩まで水に漬かってどうかしたか?」 桃子「えまーじぇんしーっす////」 桃子「・・着が・・・たっす///」 京太郎「ごめんよく聞こえなかったんだけど」 桃子「だから・・・水着が流れたっす///」 京太郎「!?」クルッ 桃子「京さん?///」 京太郎「早く俺の背中に隠れろって///」 桃子「は、はいっす///」ピトッ 京太郎(うぅ・・・このやわらかい感覚は、当たってる・・・///) 桃子(ちょっと恥ずかしいっすけど、京さんを密着できるチャンスっす///) 桃子(積極的にいくっすよ////) 京太郎「出入り口の近くまでこのまま歩くからそのまま着いて来てくれ///」 桃子「・・・///」コクン 桃子(京さんの顔も耳も真っ赤になってるっす///) 桃子(こうやって護られるのって女の子の夢なんだったりするんっすよ?///) 京太郎(モモのおもちが背中で縦横無尽に動いてるせいで俺の暴れん棒が大変なことに・・・) 桃子(えへへ、京さんも男の子っすね///) 京ちゃんツイッター始めました キョータロー『そろそろ桃を食べたい』 桃子「!?」 桃子(京さんが私のことを食べたいって///)イソイソ 桃子(待っててくださいね京さん///) 桃子「今すぐ食べさせてあげるっすよ!///」ダダダッ 京太郎「お、親戚から沢山届いたみたいだなぁー」ゴソゴソ <ピンポーン 京太郎「ん?こんな時間になんだろうか」スタスタ 京太郎「はーい、どちらさまですかー?」 <モモっすよ京さん 京太郎「んーなんのよう?」ガチャ 桃子「どうぞ私を食べてくださいっす///」 京太郎「 」 京太郎「ゴメン、ちょっとなに言ってるかわかんない」 桃子「え、だって京さんツイッターでモモを食べたいって呟いたじゃないっすか?」 京太郎「それ果物のほうだからな?」 桃子「・・・・・////」カァァ 桃子「早とちりしたみたいっす///」 桃子「ご迷惑おかけしたっす///」トボトボ 京太郎「あー、せっかくだし桃食べてくか? さっき親戚の家から届いたからさ」 桃子「・・・・・いいっすか?」 京太郎「おう、だから早く中入れよ」 桃子「やっぱり京さんは優しいっす! 大好きっす!」ダキッ 京太郎(さっきモモに食べてくださいって言われたとき襲いそうになったのは言わないでおこう) 京太郎の背中は誰のもの? 京太郎「あーあっつい・・・東京ってこんなに暑いのか」 咏「つべこべ言わず歩けっつーの」 京太郎「いやいや咏さんが俺の背中に乗ってるから更に暑いんすけど」 咏「こんな美少女をおんぶ出来るんだから役得だろー? 知らんけど」 京太郎(他の人が見たら兄妹って感じなんだろうなぁ・・・それにどうせおんぶするならおもちがもっとある人じゃないとなぁ) 京太郎「いてっ」 咏「今失礼なこと考えただろ」 京太郎「そんなことないですって」 咏「嘘言ったって無駄だぜぃ?」 咏「顔に描いてるっつーの、わっかんねーけど」 京太郎「さいですか」 京太郎(はぁ・・・おもちが大きな女の子とかいないかなぁ) シロ「・・・・」グデー 京太郎「咏さん」 咏「んー?」パタパタ 京太郎「ちょっと知り合いがいるんで先に行って貰ってていいっすか?」 咏「しょーがないねぇ」 咏「後でちゃんとホテルにきなよ」 京太郎「わかりました」ペコリ 咏「じゃぁねぃ」パタパタ 京太郎「シロさーん」 シロ「・・・・誰?」 京太郎「うぐっ・・・」ガクリ シロ「冗談」 シロ「久しぶりだね京太郎」 京太郎「・・・二年ぶりですね」 シロ「京太郎はなんでここに?」 京太郎「シロさんなら他の人に言わないと思うので言いますけど」 京太郎「今は三尋木プロの付き添いでこっちに来てます」 京太郎「遅くなりましたが、全国大会出場おめでとうございます」 シロ「見てくれたんだ・・・ありがと」ニコッ シロ「いきなりで悪いんだけど京太郎」 京太郎「はい?」 シロ「おんぶして」 京太郎「ハイ、喜んで!」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/9979.html
京太郎「ポニーテールの照さんとか可愛すぎね?」 誠「いや、普段の宮永照ってのを知らんからな?」 京太郎「これが所謂俺ら知ってる今の照さんな」 誠「グラビア載ってる号なんて良く手に入ったな!?」 京太郎「ああ、本人からもらった」 誠「くそう、持つべきは幼馴染みか」 京太郎「んでこっちが……これ、どうよ?」 誠「白糸台の……大星さんとのツーショットとか何時撮ったんだよ!」 京太郎「間違えた、こっちな」 誠「おお、確かに可愛いが……セーラー服?」 京太郎「中学ん時だってさ、智葉さんが言ってた」 誠「智葉さん……ってもしかして臨海の辻垣内智葉!?」 京太郎「あ、やべ回りにあんまり言うなって言われてんだ」 誠「なあ、京太郎?」 京太郎「なんだ、誠」 誠「雀明華さん紹介してください」 京太郎「土下座してまで!?」 明華に確認したところそう言うのはちょっと…と断られたそうです、カン
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/9242.html
咲「ちょっこれーと、ちょっこれーと」 まこ「それは別メーカーじゃ」 京太郎「それ以前に何で咲のふりしてんですか照さん」 咲?「違う、私は咲、その証拠に此処に来るのに京ちゃんの案内が必要不可欠」モックモック 京太郎「さすがの咲も部室に来るくらいで案内は要りません」 照「そ……んな……」ガーン まこ「白糸台ではどんな日常おくっとるんじゃ?」 カン
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6317.html
ぽつんと、取り残されてしまった。手元には、淡がなめていた飴だけがある。 「やれやれ……あいつの言うとおり、塩送ったことを後悔するかもな……しかし、これどーしろってんだ……」 手元の飴を見る。さすがに舐める気にはなれない。 もったいないけど、捨てちまうか…… と、考えていると、突然にゅっと湧き出した手に飴をかっさらわれた。 「うお?! ……て、え?」 「……」 するとそこにはなんとインハイチャンプ宮永照。口にはすでに棒付きキャンディを咥えている。 「……え、えーと」 「激励に来た、つもりだった」 ぽつりと呟いた。そして、こちらを見上げてくる。 「……役目は横取りされたけど、ね……ありがと、淡の友達さん」 そういって彼女は去ってしまった。 飴の処理はすんだが、どうにも……釈然としない。 「……帰るか」 トイレにしては長く出すぎただろう。大の方でしたといいわけでもするか。 俺は、もうすっかり静かになった廊下を、清澄の控え室に向けて歩き出した。 対面に座った淡を見て、咲は思わず眼を見張る。 (……さっきまでと全然違う) 一回目の半荘が終わる頃には淡はすっかり憔悴しきっていた。 それもそのはず、自分ら3人に徹底的にマークされていたのだ。 (それでも、削りきれなかった) 咲からすれば、完全に想定外であった。それほどまでに大星淡の防御力は圧倒的だった。 京太郎のいう『急所』を見つけてなお、咲は淡を抜き去ることができなかった。 (ここからは他の二人も、敵になる) 残りの半荘、点数を稼ぐため、協力していた二人も問答無用で咲から点を奪いに来るだろう、厳しい戦いになる。 (それに、なにより……) 淡の、眼が違う。覚悟を決めた、強く輝く、星のような瞳。油断も慢心も一切ない、全身全霊でもって、『護り』にきている。 (それでも……負けたく、ない) 起親穏乃が牌をきった。続けて咲もツモり、切り出す。 (私は……勝つ。皆と一緒に!) 大星淡は考える、どうすれば勝てるか。 無論、相手より点数が高くなくてはならない、それは大前提。 そして淡は7000点のリード……これは、あまり大きくない。 3900の直撃、場合によっては5200のツモで捲られるだろう。 しかし淡はこの7000点が、とてつもなく頼もしい防壁に思える。チームが稼いでくれた、私に繋いだバトンだ。 手を眺める。少しだけ考えて、淡は牌を切った。リーチはしない (リーチしてこない……) 先ほどまでも見受けられた傾向だ。手を組み替えて、高い手を作るのだろうか。磐石ではない点差を穴埋めするためか。 (でも、そこが弱点!) そここそが、淡に食らいつくための急所だ。遅れたスタートダッシュ『六向聴』を補うため加速せんと、咲が喰らい付く。 「ポン!」 穏乃の切った牌に鳴く。鳴いて、少しでも早く。 咲は素早く不要な牌を切り出した。 「ロン」 背筋が、凍りつく。 「30符一飜だけ、だけどね。1000点」 黙聴だ。理解して、咲は思わず冷や汗をかいた。 これは、強敵だ。 京太郎は滝のような冷や汗をかいている。 別に、先ほどの淡との会話が誰かにばれたとかではない。知ってるのはおそらく宮永照だけだ。 では、なぜかというと画面内の淡の恐ろしさに、である。 大星淡はテンパイを維持したまま、リーチをかけず黙聴という手を取り、放銃率の低い咲から直撃を奪った。 点数こそ低いが、驚異的なのは速度とその隠密性だ。 (手が遅くなるハンデを背負って、あんなのと打ち合わなきゃいけねーのかよ) 今更ながら京太郎は恐怖した。淡を焚きつけるべきではなかった。まさかこれほどまでの魔物だとは夢にも思わなかった。 (これ咲が負けたら完璧俺のせいじゃねーーーか!!) なんとも情けない話だが京太郎は自分の保身を考えていた。ばれたらやべーなとか、土下座の美しいフォームとか、ハラキリセプクの作法を学ぼうとかだ。 しかし、画面に映る、淡の顔を見て、その煩悩も露と消えた。 (いい顔しやがって) そこには、覚悟を決めて、しかしあの独特の愛嬌も失わない美貌が映っている。とても、いい顔だ。 (頑張れよ……二人とも) 咲に心の中で謝る。この戦いはどちらかの応援ではなく、一人の麻雀うちとして見学させてほしい。 この試合は、きっと素晴らしい試合になるだろうから。 ーーー ーー ー (あぁ……気が遠くなってきた……) 頭をフル回転させすぎて淡は顔がぼんやりと赤くなってきた。知恵熱を初めて実感している。 とにかく、とにかく早上がりを目指し続けた。他家は五向聴以下自分は聴牌というハンデを最大限活かして、とにかく早く流した。 全て安手であったが、相手のアガるチャンスを潰し続けた。 そして、ついに、オーラス。 (……ちくしょー) 手元を見る。配牌は確かに、聴牌、しかし役がない。 (黙聴は無理かー、でもなー、咲だっけ?相手に手を組み直してる余裕あるかなー) 対面をちらりと見る。咲の方も相当余裕がなさそうな顔をしている。じかし向こうはささっと鳴いて、ついでにリンシャン牌を掴んで五向聴を早ければ3巡で聴牌まで持ち込んでくる。なんの冗談かと思うが、自分は人のことを言えないか、と苦笑する。 (リーチ棒出したくないなー) 二位清澄との点差は、わずか2300まで迫っている。1000点の直撃ならまだギリギリで勝てるが、リー棒を出してたらもうアウトだ。 (怖いなー) 頭がボンヤリする。勝負を仕掛けるのが怖い。やはり手を組み替えるべきではないか。しかし、しかし、だがしかし…… (いや、迷うな、逃げちゃダメだ) さすがに今ここで逃げられない、どっちみち黙聴はバレているのだから、先にアガったほうが勝ちというシンプルなルールで行こう、そうしよう。 淡、一世一代の大勝負、点箱から千点棒を取り出し、宣言。 「リーチ!」 場が張り詰める。他二校も、点差は1万程度まで迫っている。誰にでも勝機がある。 (この渾身のダブリー、振り込んでよね) あぁ、手を伏せた後にドッと淡の背中から冷や汗が吹き出てきた。 怖い、ちょー怖い。こんなに緊張した麻雀はいつ以来だろうか。テルーに初めて順位で勝つかどうかの卓でも、これほどの緊張はなかったと思う。 (……この一勝負で考えれば私は20000以上く削られてるよね、ダメだなー、私) しかし、しかし今自分は勝っているのだ、仲間の稼いだ点のおかげで (よし、きめた、とりあえず控え室戻ったらみんなに謝ろう。とくに菫に……いや、菫部長って言ったほうが今はいいよね?多分) 牌が切られてゆく (とにかく早くみんなにあって、謝ろう、そうしよう) 牌をひく、あたり牌ではない。 (で、そんでもって、うちが勝ったら、その後すぐに清澄の控え室行こう。そんでもって、きょーたろーが出てくるの待って、どうだーかったぞーって自慢してやろう、そしてすぐにアイスクリーム食べに行こう) ツモ番が、咲へ回る (……負けたら、そうだな、その時は) 「……カン!」 (あーーーーー) 大星淡は負けを悟った。 ……… …… … あぁ 脚が重い 己の脚はこんなに重かっただろうか まるで、足首に10キロのバーベルをくくりつけているようだ あぁ でも 戻らなくては 控え室に ドアノブに手をかける。 ……決心がつかない。 みんなに、どんな顔をして会えばいいんだろうか 全てを、台無しにして、私はどんな顔をすれば、いいんだろう。 手が動かない、ドアノブを回せない、まるで杭が打ち込まれなように手首が動かない。 だめだ、ダメダメ、だめなんだ、謝らないと 不意にドアが開かれた。 「あっ……」 「……ん?」 その先には、テルーがいた。 あれ?戻ってきてたんだ、と言いたげな顔だ。 あぁ……心臓が潰れてしまいそうだ。 「……ほら、こっち」 「あう……」 手を握られて、引かれるがまま、控え室の真ん中に連れてこられた。 みんなが、私を見ている。 「……ぁ……そ、の……」 謝ろう、そう決めたはずだ。 負けたら謝ろう。精一杯謝ろう。土下座してでも、謝ろう。 そう、決めたんだ、最初の一言は、言い出しにくいけれど。 みんな、私を見ている、と、思う。 私が顔を伏せてるから、表情は、わからない。 怒ってるのか、悲しんでるのか 「……ご……ごめん……」 精一杯口にした それで限界だった。 すいませんでした、とか、申し訳ありませんでした、とか、丁寧な口調を意識したけど、結局出てきたのはこの三文字だけ あぁ、菫部長に怒られるなーって、おもった。 とたんに、何か温かいのに包まれた 「ぇ……テルー?」 「……」 テルーが、私を抱きしめてた。あったかくて、やわらかくて、お菓子の優しい香りがする。 「……いい麻雀だった、淡。私の、自慢の後輩」 「っ」 ずるい そんなこと、いわれたら がまんできるわけないじゃないか 「うっ……ふぇ……うえぇぇぇぇぇん……ごめんなさい……ごべんなざぃ……ごべんなざぃぃぃぃ……みんなの、みんなが、取ってくれた点数……全部、私が、私が……」 強くテルーの体を抱きしめると、強く、抱き返してくれた。 また、後ろから何かが覆いかぶさってくる。 「馬鹿……あんないい麻雀見せられて怒れるものか。チームのために、己を捨てて……頑張ったな、淡」 右から 「淡ちゃんは頑張ったよ……みんな知ってる」 左から 「私の尻拭いで大変だったろう? ……もっと、お前に楽させてやれなくて、ごめんな」 あぁ、やさしくしないで 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!!」 泣き止みどきが、わからなくなっちゃうじゃないか そのまま、みんな、私が泣き止むまで、ずっと抱きしめててくれた。あぁ、一生分の借りを作っちゃったかもしれない。 ー夜ー 「ではーーーーーーーー!清澄高校の団体戦で優勝を祝ってーーーー!!」 { ` /,ヽヽ \ _, -‐ ´ ∟_ \ ヽ / \ /λ ヾ 、 \ へ / |iミ V.彡} l } ヽ 、 ー 、 j |l ノ j| | ゝ 〉 >、 ` ヽィュ_ |i ハ ゝ, {| ヘ \i / \ \``ゝ, }. / ヾ、ヽ ヽゝ `, ヽ / | , -‐ ` ヽ \ ノ. ∠`へ, ' ノ x弋 ヾミ 、 \ 〈 ',. | } } \ }´`ゝ~ ュ _ . 〃 i'〈弋 リ` ´{テ } 〉ヽハ , 乾っ!杯っ! ヽ }. | ´ / ,,_ ゝ,,._ \ゝ 从 ,, , ` ,,, / 从 / ですわーーーーーーーーー!!!!!! ′. ヽ ヘ.__, -‐ ト _ >、  ̄ ` ヽ .\ ', ヘ ャー― , . /ヘ ゙,ソ /j ゝ ゝ ー,,ュ, -‐ ´ ー´,, ` ー- , } ヘ ` ヾ , ヽ ノ , ´{| ゝ /ノ\ `ゝ、  ̄ ゝー‐< ,, _`` ‐- ´ } ヽ ー < | f メ ⅳ \ \ `\ , -‐ `>ー- ェ 〉 \ /V ,ヘー- ュ ゝ ゝ、 ` ,, / /´´ \ \ .` ひ二つ ∧ `ヽ } ー 、 \ , -‐ ´ / ' / ヘ 〉 \ | 、 ノ ヘ ヽ } / ノ ノ 〉、 / i \ ', { 〉 \ \ 「「「かんぱーーーーーーーーーい!!!!」」」 「うるせー……」 マイクによってより煩くなった龍門渕透華の乾杯音頭で、宴会場に寄り集まった長野勢が一斉に飲み物を喉に流し込む。 なんとかアルコールにしてくれと透華は必死にハギヨシに頼み込んだが、流石に無理だと突っぱねられていた。 代わりというか、宴会場を盛大に貸し切ったこの優勝おめでとう会は、どこから持ってきたのか海の幸山の幸詰め込み放題の超豪華宴会である。 「ちょっと!私より目立たないでよ!なんで優勝校の部長の私よりあんたの方が目立ってんのよ!」 「やかましいですわ!こうでもしないとこのssの私の目立ちどころがないではありませんですこと!?」 「ssってなに!?」 やかましく言い争う清澄部長と龍門渕部長を捨て置き、部屋の隅で、京太郎は静かにオレンジジュースを喉に流し込んだ (……いずれぇ) 女三人よらばなんとやら、それならば20人近く集まったこれはなんなのか。阿鼻叫喚か、地獄絵図か、少なくとも男の夢とは言い難い。 (どうしようかな……) そんなことを京太郎が考えていると、ぽんぽんと、肩を叩かれた。 「須賀くん、よければご一緒しませんか?」 そこにはごく最近龍門渕の執事さんだったと知ったハギヨシが、グラスとワインを手ににっこりと笑っていた。 「さ、どうぞ」 トクトクトクと、手にしたワイングラスに濃厚な色の液体が注がれてゆく。 「いや、いいんすか?俺が飲んじゃって」 「お気になさらず、男同士の話には酒がつきものでございます」 そういいつつ、優雅にくいっとワインを喉に通すハギヨシ。 動作のひとつひとつが様になっていてまるで映画の俳優のようだ。 それに倣い、京太郎もグラスの中身を喉に流し込む。 家で親の目を盗んで飲んだビールよりも、幾分か熱く感じる。 「くぁっ熱……でも、うまいな」 「そうでしょう、なかなかいいワインでして」 笑顔を絶やさずワインを口にするハギヨシ。 結構度数が強いはずだがためらいなく飲み込んでゆく。 執事は酒にも強いのかと、京太郎は内心畏れを抱いた。 「あのような女性の花園、須賀くんには辛いでしょう」 「あはは……五人は慣れてるんすけど、あの人数はさすがに、女子校に迷い込んだみたいで」 「心中ご察しします」 暗い部屋で、ワインを交わしての話し合い。 なんとも大人っぽくて、京太郎は静かに胸躍らせた。 「さて……せっかくの人目に触れない酒の席……年の差は4歳程度ですが、須賀くんは何か悩み事はございますか?」 唐突に語り出したハギヨシの質問が京太郎の胸を深くえぐった。 「悩みというものは人に打ち明ければ幾分か軽くなるもの、あわよくば解決策がわかるかもしれません。須賀くんの年の頃、私は多くの悩みに打ちひしがれていまして……相談できる大人がいれば、何度もそう考えました。須賀くんが、同じような目にあっていなければ、と思いまして」 全くもっていつもの調子でハギヨシが訪ねてくるが、全くもってその通りで京太郎は悩みを抱えていた。 この悩みは、自分一人で解決すべきではないか、京太郎は、なんとなくそう考えている。少なくとも、そう考えるを得ない性質の、悩みであった。 ふと、数日前を思い出す。 『何かに迷ったときは、身近な大人を頼ること』 白い髪の女性の言葉を思い出す。今思えば、あの言葉は今この瞬間を、予期していたのではないか。 「じつは……」 京太郎は、ポツリポツリと、胸の内をハギヨシに明かし始めた 「最近、一人の、同い年の女の子と知り合ったんです」 「最初見たときはなんだこの妖怪とか思ったんですけど……まぁ、なんやかんやで、交流ができまして」 「一回、一緒に遊びに行って、それ以外にも、なんかの縁で出会ったりして、それ以外にも、LIMEで話をしたりして……」 「……なんでだろう、俺は、今日そいつがピンチで負けそうってときに、自分の高校の麻雀データをそいつに見せちまったんです」 「そんな気はなかったんですよ、ただ、そいつが負けて打ちひしがれてるから、俺がもっとボコボコにされてる記録見せれば元気になるかなって……」 「でも、冷静に考えれば、なんでそんなことをしたかわからないんです」 「少し考えれば相当やばいことって分かるはずなのに、俺はいつの間にかそいつのところに行って、頑張れって言ってたんです」 「そいつを応援するようなそいつを励ますような、そいつを支えるようなことを、LIMEとかでいろいろ、行っちゃったり、して」 「それで、いまは……」 「清澄が優勝して、すげー嬉しくて、でも……頭の片隅で、いま、あいつは、どうしてるんだろうって考えてる自分が、いるんです」 「これがなんなのかよくわかりません……それが、俺の悩みです」 一通り語り終わった京太郎はワインをやけになったかのように飲み込む。ハギヨシは微笑ましげにそれを眺めている。 「……そうです、か……須賀くん、時に、今LIMEには何か連絡は来ていませんか?」 「え?」 京太郎はそう言われて、慌てスマホを取り出して電源ボタンを押す。なんだ、何も通知はない…… とたんに通知が届いた。新着メッセージが届いたようだ。 「……」 京太郎は化け物でも見るかのような目でハギヨシを見つめるが、ハギヨシはただニコニコと笑うばかりだ。 とにかく、その通知を開いて見ると、何の因果か、件の淡から届いたメッセージのようだ。 『今、旅館の外にこれる?』 文章からして、京太郎が泊まっている旅館の外のことだろう。無論、行ける。 「須賀くん」 ハギヨシが、京太郎を呼ぶ。 「皆様のことは、私にお任せを……君は、自分の迷いを断ち切るために、自分の信じた道を行きなさい」 京太郎は、すっと立ち上がった。少なからず酒を飲んだ体はしかし、少しもふらつきを見せない。 「ありがとうございました、ハギヨシさん」 京太郎が体を翻し部屋を出て行く。 それを見送った後、ハギヨシはグラスとワインを何処へやらと片付けた。 「頑張ってくださいね、須賀くん」 そして、ハギヨシはゆっくりと立ち上がった…… 懐から執殺と書かれたメンポを取り出しながら 「……」 「……」 二人とも、無言だ。 京太郎はなんとなしに空を見上げる。この辺りな東京にしてはまだ空気が綺麗な方らしく、空にはぼんやりと星が見えたりしたのだが、今日は雲が厚く、見ることは叶わない。 「負けちゃった」 唐突に淡がぽつりと呟いた。 「あの後さ、控え室に戻ったら……みんな、私のこと慰めてくれたんだ」 下を向いたまま、淡は言葉を紡ぐ。 「私が全部のリードを台無しにしたっていうのに、みんな、私は悪くないって、自分たちがもっとリードをって、無理させて、済まなかったって……」 声の調子は変わらないが、少しづつ、途切れることが多くなってきた。 「っ……あはは……こん、な……悔しい黒星、初めてだよ……白糸台の……大星、淡なのにね……笑えないや……」 なんとか声の平成は保っているが、ノイズのように混じる嗚咽で、もう、ごまかしようはない。 「っ……悔しい……!こんなの、悔しくて……みんなに申し訳なくて……!悲しくて、情けなくて……!」 一度決壊すれば、後はもうたやすい。きつく閉じた目からホロホロと大粒の涙が流れ出し、地面の色をポタポタと濃くしてゆく。 「みんなそれでも、優しく……!それで余計辛くって……!!」 隣でただうつむいて涙を長く淡を、どうすればいいか京太郎にはわからない。ただ、なんとなく、不器用に、淡の頭を優しく撫でてやった。 サラサラでツヤツヤの金髪が指をすり抜けてゆく。 そのまま、しばらく京太郎は淡の頭を撫で続けてやった。 やがて、淡の瞳から溢れる雨が止む。 こてんと、倒れるようにして京太郎の肩に、頭を預けた。 甘く柔らかい香りがして、京太郎の鼓動が少し早くなる。 「なぁ淡」 ぽつりと、京太郎が言葉を漏らした 「空を見てみろよ。ひでー曇天だな」 言葉を受けて、淡がゆっくりと、腫れぼったい目を空へ向ける。その先には今にも降り出しそうな黒い雲が浮かんでいる。 「俺って、あんなんだ」 京太郎の言葉の意味がよくわからず淡は首をかしげた。 「いやな、俺の麻雀の戦績ってさ、あの曇り空に似てるんだ……」 「俺の一位率って、部内で一割を超えることないんだよ、三位以下が7割くらいだ、一位取れた日なんかもう、飛び上がって喜ぶね、そんくらい負け込みで、それがなんとなーく、あの空に似てるんだ」 淡は少し笑った。あの清澄メンバーにボコボコにのされてうめく京太郎の姿が脳裏に浮かんだからだ。 「でもな、どんな曇りでも、ほんの少しの風が、その雲を吹き飛ばしてくれるんだ」 「風?」 「うん、風。とっさの閃きとか、運とか、そう言うのだ。そういう要素で麻雀って勝敗が変わるんだ」 「お前は今日たまたま風向きが悪くて、雲に覆われちまった……でもな、きっとそんな雲、すぐに風が吹き飛ばしてくれる、万年曇り空の俺が言うんだ、間違いないぜ」 ポンっと、改めて京太郎は淡の頭に手を置いた。無抵抗のまま頭を撫でられる淡は黙って、京太郎の言葉を聞いていた。 「そっか……今みたいな曇り空でも……ちょとした風が吹けば……」 「雲の切れ間に」 「星が輝く」 「……ま、つまり麻雀なんて運ゲーってことだからそんな落ち込むなってことだよ!あー、夜更かしして眠いぜーったく……」 自分のセリフが恥ずかしくなったのか、京太郎は顔を赤くしてポンポンと淡の頭を軽く叩き、態とらしい伸びやあくびをする。 そんな京太郎をみて、淡はクスリと笑った。 「……うん、やっぱ、きょーたろーに、相談してよかった」 「なんかいったかー?」 ハンドボール仕込みの無駄にアグレッシブな柔軟体操を披露する京太郎に、淡はいよいよ頬を緩ませ、それこそ、満天の星空のような笑顔を浮かべた。 「きょーたろーに、ありがとーっていったの!」 「は、はは!礼を言われることなんてしてないぜ!お、俺そろそろ旅館戻るわ!じゃなー!」 「あ、まってよー!ウラ若き高校100年生を送ってかないつもりー!?」 思わず走り出し公園から飛び出す京太郎を淡が慌てて追いかける。 そんな、二人は気づかない。二人の真上に位置する雲が、ちょうど揺らいで切れ間を作り、そこに、輝く夜空が広がっていた。 須賀京太郎にとって東京という土地は、憧れと、驚きと、そして若干の嫌悪を抱かせる場所である。 この驚きというのは実に多彩な意味を持つ。 まさかの40℃越え、まさかの迷宮地下鉄、まさかの出会い、まさかのetcetc…… そんなこんなを体験しつつ、個人戦第1日目の朝、京太郎は新聞を読みながら朝食を喰らっていた。 「はー、『またも襲撃!?マフィアボスの執事がボコボコに……』なんかんだこの執事を集中的に狙った事件ってのは、ハギヨシさん大丈夫かな」 「あの人ならば暴漢に襲われても余裕で返り討ちにしそうじゃのう……」 「で、あるか」 同じく朝食をかきこむ先輩二人よりも早く、朝食のフレンチトーストを胃に収めた京太郎は、試合に出場する咲と和の荷物を肩にかけた。 「じゃあいってきまーす」 「はい、咲のお守りよろしくねー!」 「わしらも後で行くからのー」 「お待たせしました、須賀くん」 「京ちゃん、よろしくね」 「おう、じゃあいくぞ」 蒸し暑い日差しの中、三人は旅館の外へと踏み出した。 今日は2人の個人戦第一試合がある。京太郎は2人の荷物を運ぶ兼咲のお守りだ。ちなみに荷物運びはついでであり本命は咲の見張りである。 「あっつい~……」 早くもグロッキーになりかけている咲の頬に冷たい麦茶の入ったペットボトルを押し付けて、会場へと向かう。和はその暑さにはもう幾分か慣れたようで、うんざりしつつも順調二歩を進めていた。 「2人とも頑張れよ、今日の個人戦」 「はい!1位2位のトロフィー、両方清澄に飾ってみせますよ!」 「どっちが金かは勝負だね、和ちゃん!」 2人の満面の笑みを見て頼もしくなった京太郎は、気合を入れて会場へ到着足を進めた。 そして、試合会場に到着した。会場内には初日に勝るとも劣らない観客が詰め寄っており、その盛り上がりはいろんな意味で団体戦を上回るかもしれない。 「じゃあ、私たちは控え室に入ってます。須賀くん、荷物ありがとうございました、重くなかったですか?」 「あんくらい軽いもんだよ!じゃあ、部長たちの席確保してくるわ、頑張れよ!」 2人から離れて、京太郎は巨大モニターの設置されたルームの中の椅子4つほどに確保を示す荷物を置いた。 そのうちの一つに腰掛けて、ふうと一息、モニターを眺める。 「部長たちが来るまで30分くらいか……」 その間、暇だ。 暇つぶしに自分の荷物から麻雀の教本を取り出し、パラパラとページをめくる。 そしてしおりを挟んでおいた『牌の透視方』の項目を開き、いざ読みふけようと気合いを入れた 「きょーたろ!」 「おわ!」 その途端、柔らかい何かが後ろからぶつかってきた。 「あ、淡か?」 「せーかーい!むー、つまんない」 首だけで振り返るの、ぷーっとむくれているのは見間違えようもない、星のような瞳を持つ大星淡である。 「あー、お前も個人戦出場枠か?」 「そう!こっちでは雪辱をハラハラしてやるんだからー!」 メラメラと燃え上がる闘志を瞳な携える淡は傍目から見ても相当気合いが入っている。 「そうか、俺は清澄の2人の応援だけど、お前も頑張れよ」 「そんなこと言っておきながら私のことも応援してくれるきょーたろーが好きだよ~!」 「好きってお前……」 呆れたような口調ながらも頬を少し染める京太郎をニヤニヤとチェシャ猫のような笑いで眺める淡は、すっと姿勢を正し、京太郎にビシッと指をさした 「そう、実は今日は個人戦以外にも一つ大事な用事があったのさ!」 「大事な、用事?」 「そう、きょーたろーに一つ、挑戦状を叩きつけに来たのだー!」 「挑戦状?」 意味がわからない。強い側から弱い側に挑戦状というのは意味がわからない。 頭にクエスチョンマークを無数に浮かばせる京太郎をくすくすと笑い、淡は、告げる。 「私こと大星淡は優勝してみせます!テルーよりも!咲よりも強く!優勝してみせます!」 なんと、と京太郎は思った。こういうことを臆面なく言えるのは淡の大きな強みだと思う。 「だから、一つ京太郎に約束してほしいことがあるの」 「え、それ強制?」 「モチのロン!」 「マジかよ」 京太郎はうなだれた。この元気っこが突きつけてくる無理やりの約束が、まともなものとも思えない。 「その約束ってのは、なんだー?」 「それはねー……京太郎、今年の冬までに、個人戦、長野枠で出場できるくらい強くなって!」 「……は?」 また、無理難題を押し付けられたものだ。第一、それで淡になんのメリットがあるのか 「私もネトマで協力するからさ!ね!頑張ろうよ!」 「なんでお前にそんなこと言われなきゃいけねーんだよ」 「だって、そうじゃないと季節ごとに絶対に会えるって保証、ないじゃん?」 「……は?」 にこやかに告げる淡に、京太郎は少し、固まった。 会えるって保証。つまり、会いたいって、こと? 「おまえ、それ、どーゆー」 「はい!約束したからね。それじゃ、これは契約の証!」 ぼーっとしてる京太郎の頬に、淡は唇を寄せて…… ちゅっ♪ 「……は?はぁ!?はぁーーーーーーーーーーー!?!?」 椅子から飛びすさり尻餅ついて無様に交代した京太郎は声にならない声を上げた 「アハハ!キョータロー面白い!」 「おま!おま!だって!おま!!」 幸い周りに人は少ないが、その少ない人多々は全員こっちをガン見していた。 「いまのは、この淡ちゃんとの契約の証、約束破ったら、承知しないんだから!!」 そして淡は振り返り、まったねーと、去っていった。耳が、真っ赤だ。 しばらくへたり込んでいた京太郎は、顔は真っ赤のまま立ち上がった。周囲の人間の視線が、痛い、死ぬほど痛い。 「はぁ……やれやれ」 また面倒ごとが増えてしまった、と、京太郎は首を振った。 取り敢えず、今日個人戦が終わったらみんなに麻雀の指導を頼まなくてはいけない。 カンッ!! ーーー京ちゃんが好きだと自覚したあわいーーー 「はいはい、呼ばれて飛び出て即参上」 たったいま、数秒前、LIMEを送ったばっかり。 それなのに、すっかり見慣れた金髪の京太郎は、そばの物陰から姿を表した。 なんでもうここにいるんだろう。 呼んだらすぐ来てくれた、まるでヒーローみたいな登場に、少しだけ、ほんの少しだけ、胸が高鳴る。 「ほれ」 何かを差し出された。 麻雀ダコだけではないその手には、チュッパチャプスくらいの棒付きキャンディーが乗っている。 「脳みそってスゲー大食いな器官でさ、しかも甘いもんしか受け付けねーらしいぜ」 「……そうなんだ」 なんとも、どうでもいい豆知識を聞かされた。 私のことを気遣って、甘いものを、持ってきてくれたのかな? 胸が高鳴る。 「……びみょー」 気恥ずかしさを隠すように、すこしだけ、尖らせた口調で言う。 「ははっ、まぁもらいもんの飴だからな、文句はその人に」 「もらったものを誰かにあげる?フツー」 何が楽しいのか、にこにこと、京太郎はわらっている。気楽そーな顔してさ。 「……なんで、送ってすぐに来たの?」 「こりゃ呼ばれるなって思って。紳士たるものレディの呼びかけには5秒以内に応じるもんだぜ」 「ストーカー?」 「ちげーよドアホ」 「アホだと~?」 あぁ、全く、こっちの気分も知らないで ずいぶん前から、まっていてくれたんだろう。 すこしだけ、ほんの少しだけ、罪悪感が募る。 「なぁ、麻雀で勝つって、なんだと思う?」 すこしだけ話をして、不意に京太郎が問うてきた。 「……そんなの、点数が少しでも高ければ勝つでしょ」 「そおーだそのとーりだ!たとえ百点棒一本でも多い奴の、勝ちだ。100点でも低けりゃそいつの負けだ」 何を、当たり前のことを。京太郎は真剣な顔だ。 「そのルールのせいてで俺の部内の一年生四人の中では、トップ率はダントツドベの0.95だ。わかるか、10回やって1回目トップになれるかどーかだ。そりゃそーだ、何もかもが劣ってる俺があいつらに容易に点数合戦で勝てるわきゃないからな」 「何その自虐情けない」 「やめろ死にたくなる」 えらそーに語ってたかと思えば途端に顔を曇らせる。 ……私にだって、わかる。それは私を励まそうとしてるんだ。 不器用に、どう慰めればいいかわからなくて、自分の情けない姿を見せるくらいしか、方法が思いつかないんだ。 なんだろう、そんな姿が、すこしだけ、可愛い 「まぁともかく麻雀ってのはそういうゲームだ……で、淡、聞くぜ。いま、この麻雀で勝ってるのは誰だ?」 「そんなの……私だよ。7000点、上にいる、けど……」 「そーだお前はまだ勝ってる!お前の仲間たちが、稼いでくれたおかげでな」 その言葉に、四人の顔が思い浮かぶ。 まったく、生意気だ。京太郎のクセに きっと、私に足りないものが何かわかっててそれで、厳しい口調で私に教えてくれてるんだ。 思い込みじゃあない。その顔を見れば、真剣そのものな顔を見れば、そのくらいわかる。表情を読むのは、麻雀打ちの基本だし。 そんでもって、京太郎に励まされた私は……まぁ、なんというか、結論から言うと負けちゃいまして。 おまけに何が悔しいって、そのあと、控え室で大泣きしてしまったことだ。 あぁ、あぁ、思い出しただけで、あぁ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁわぁぁぁぁぁもおおおぉぉぉぉぉ!!! 「ふっはははははは、どうした淡、普段の態度が影も形も見当たらないぞ」 「やめて!スミレやめて!忘れて!私泣いてないもん!高校100年生は泣かないもん!」 「ふふ、淡ちゃんの泣き顔、写真撮っちゃった」 「タカミー!?」 「あっはははは、淡~、ちょっとイケてないんじゃなーい?」 「うわああぁぁぁぁぁ!!」 もうダメだ、私はこのメンバーにこのネタで一生からかわれ続けるだろう。想像するだけで頭の中がすっからかんになる程に恐ろしい。 でも、まぁ、いやじゃ、ない。 「淡」 そのあと、珍しくテルーが気を使って私を控え室の外に連れ出してくれた。 テルーは私をからかってこないからなんとかかんとか、一息つくことができた。 「あぁ……ありがとテルー……あー……はずかしー……」 「気にすることはない」 テルーは何やら口に白い棒を咥えてピコピコと揺らしている。みたところ棒付きキャンディーの棒の部分か。 先程きょーたろーからもらった、ベトつく飴を思い出す。 「淡、あの男子は、清澄の生徒?」 ビクッと、思い切り体が震えた。 この状況からして、あの男子、というのはどう考えても…… 「テルー……見てたの?」 「うん」 「……どの、あたりから?」 「脳みそってスゲー大食いってあたり。彼のおかげで私のお菓子好きが間違いではないことが証明された」 「ああぁぁぁぁぁほぼぜんぶじゃぁぁぁぁん!!」 またも撃沈、もうやめて、とっくに淡ちゃんの点棒はゼロだ。 つまりボロボロ泣きながらつぶやいたあのつぶやきもこのつぶやきも……あああわあわあわあわぁぁぁぁぁぁぁ!!! 「彼のおかげで、淡は変われた。本当は私たちの役割だっただけに、ちょっと悔しい」 ポンっと頭に手を置かれた。そのままなすがままに撫でられる。抵抗する気はない、気力がない。 「淡、あの男子の前では素直だったね」 「ちがうもーん……あの時だけだもーん……気の迷いだったんだもーん……」 「淡」 テルーは、ポンっと私の頭を軽く叩いた。 じっと、目を見つめてくる。 「ちょっとゴメンね」 「え?」 「照魔鏡!!」 「アワァァァァァァァ!!!??」 突然なんだと言うのだ、慌てて壁にもたれかかっていた体を起こすと、テルーはこちらを見て、にっこりと笑った。 「うん。うんうん。淡、青春だね」 「なにそのよく雑誌で作る作り物笑顔!?」 「大丈夫、私は全部わかってる」 「覗いたからでしょ!なに!?なにを覗いたの!?」 「淡の淡い恋心、彼への」 「……へぇ、恋心、へぇ……へえあ!?」 「ふぅん、淡はあの彼に抱きしめて欲しいんだね、それで……あれ、それだけだ。それ以上は想像できない?キスとか浜辺で追いかけっことか××××とか『イリアステルに削除されました』とか歯磨きプレイとか」 「なにいってんの!?何言ってんの!?」 もうテルーの大暴走は止まらない、超絶営業スマイルで私も知らない私の心の内を暴くだけだ、もう絶対楽しんでる。 「ふふ……淡」 「ぎぎぎぃ……なによぉ……」 もうスクラップ寸前の私の肩を、ポンっと叩くと、やっと普段通りの無表情……に、少しだけ笑みを浮かべた。 「叶うと、いいね」 「……ふんっ」 散々からかわれた私は、ツンっとそっぽを向いてやった。それでもクスクス笑うテルーが鬱陶しい。 でもまぁ、そのテルーのおかげで、私は京太郎への想いに気づくことができた。 でもやっぱ納得いかないのでそのあとテルーのお菓子を奪って食べてやった。バレた。これは……面倒なことになっちゃった…… おまけ(時系列を気にしたら敗け)- 「海に行こう!」 「……うん?」 唐突であった。 本当、本当に唐突であった。 第1巡目で不要牌を切ったら人和されちゃいましたーってくらい唐突だった。 りんりんらんらんと真横で鼻歌を歌っている淡をスルーし麻雀指導本『これであなたも神域の打ち手』を読みふけっていた京太郎は思わず聞き返してしまった。 「あ、いまうんっていったね!いいましたね!はい、確かに言いました!」 「まて、何もかもをお前の中で進めていくな」 とうっと、淡の頭にハエも殺せないチョップをかます。いった~いと、オーバーなリアクション。 「だって、せっかくの夏だよ!?麻雀だけで終わらせたらアラフィフになっちゃうよ!」 「お前その麻雀だけで終わらせる奴がこの東京に今何人いると思ってんだ」 「そいつらは全員アラカンになればいーの!私とキョータローは違う!」 ミャーミャーとやかましい猫のように騒ぎ立てる淡を前に、京太郎は深く、深海より深く、地球のコアくらい深くため息を吐いた。 短い付き合いだが、こう言い始めた淡が頑固だというのは重々承知している。ちうしれ、にもらずいぶん困らされたものだ。 「はいはいわかったわかったいってやるよ」 「やたー!じゃあ早速水着買いに行こう!」 「え?」 「だって持ってきてないでしょ?買わなきゃじゃん」 「あー……うん、そうか、そうだよな、変なことないよ……な?」 「ないない、ないよ、全然ない。すごく自然!」 というわけで、二人は仲良く連れ立って近くの水着専門店へとやってきた。 「水着、専門店……か。長野にこんなものはなかったな」 「え?マジ?」 「長野は内陸の土地だぞ」 「あっ……」 何かを察した淡はそれ以降何も言わず、そのまま店内へ徒歩を進めた。男女合わせて置いてあるらしく、カップルも少なくない…が、金髪コンビの二人は結構目立つ。 「じゃあ先に京太郎えらんじゃってよ!」 「そうか?じゃあ……予算的に……うん」 京太郎はどんな水着を選ぶのか、と目を輝かせる淡を背に、京太郎はドンドンと買い物カゴの中に商品を放り込んで行く。 「こんなもんかな……」 麦わら帽子 サングラス アロハシャツ 真っ黒なトランクスタイプ サンダル ボディタオル 「……キョータロー……」 「な、なんだよ」 「ヤクザ?」 「ちがわい!」 しかしすでに淡の頭の中には浜辺のレディ達に恐れ慄かれる金髪長身でサングラスをかけた威圧感満載の筋肉モリモリマッチョマンしか浮かばなかった。 さて、今度は淡の番……となって、焦るのは京太郎である。 淡に手を引っ張られるままに連れてこられたが、女性用水着が木々のように辺りにそびえる女性水着コーナーは、なかなか近寄りがたいものがある。 これどうかしらとか彼氏に聞いてたりしてる人もいるから問題はないだろうが…… 「あ、これかわいい!どうどうみて!」 と、声のほうを向くと淡は一つの商品に目をつけたらしく京太郎に見せびらかしている。 「あー……首の後ろで結ぶ奴か」 「そうそう!ホルターネックって奴!ビキニだよビキニ!」 どうどう~?と胸の辺りに水着を当てて見せびらかしてくる淡。その涼しげな水色の水着は淡によく似合うように思える。特に、こう、なかなかに豊満な淡のバストを持ち上げるように強調するビキニ姿を想像すると…… 「ふふーん、これ気に入ったっぽいね、じゃあとりあえず保留!」 おもわずぼーっとしてたら悟られたらしく、淡はそれを買い物カゴに放り込んでしまった。どうやら好みを悟られたようだ…… 「じゃあこれは?どう?真っ赤なパレオ!」 次に取り出されたのは、やはりというか、なかなか大胆に胸を露出するパレオタイプのビキニだ。下半身には長めのスカートのようなものがついているため、必然的に肌色の多い上半身に目がいってしまう。情熱的な赤色もまた、淡には似合うだろう。 「なるほど~、きょーたろーは正直さんだね!じゃあ次は~」 と、ドンドンと淡は水着を漁る。 ふと、淡の買い物カゴに大量の水着が積み重なった頃、ふと京太郎の視界に白い水着が目に映った。それを見逃さなかった淡はその視線の先の水着をバッと手に取る 「ふんふん、モノキニかぁ~」 取り出された純白のモノキニ。 ヘソの辺りにレースで編まれた花弁のような部位があり、そこから四方向に花弁が開いたようなデザインだ。胸の谷間、脇腹など、なかなかに挑発的なデザインをしている。 「ふふ~ん……こういうの、好きなの?」 「どうだか」 ニヤニヤと笑いながらたずねる淡に京太郎はそっけなく顔を背けた ……耳まで真っ赤だが 「ふふふふ~ん……ほんっとーに嘘つけないねーきょーたろーはさ!じゃあこれに決めた!サイズは~……」 「い、いや別に好きとは」 「あれ?嫌い?」 「いや、別に、どっちでも……その……」 「あ~もーかわいーなー!」 んーっと背伸びして淡は京太郎の頭を撫でてやった。 「ななっな、なにすんだよっ」 「うんうん、かっこいいきょーたろーもかわいーきょーたろーもいいね!じゃあ買ってきまーす!」 そのまま、選考落ちした水着を一瞬で元の場所に戻すと、他の幾つかの商品と一緒に淡はレジへとかけて行った。 「……知られてはいけないことを、知られた気がする」 周囲の生暖かい視線をこらえながら、よろよろと京太郎もレジへと這っていった。 淡のお買い物 モノキニ ラッシュガード 麦わら帽子 そして、そのまま淡に引っ張られるがままに電車を乗り継いで、ついに二人は海へと到着した! 「海だ~~!やったーーーー!!ジャカジャン!」 「せーかい中をぼーくらのー……何言わすかこら」 すでに体力をほぼ削られた京太郎は、元気よく飛び跳ねる淡についていくのがやっとである。 暑い、すんごく、暑い。午後1時くらいだろうか、もう日差しは生命ある全てを焼き尽くさんとするほどサンサンと降り注いでくる。いや、惨々と言うべきか。 「じゃあ早速着替えてこよう!海の家の前で待っててね!」 元気よく更衣室へ飛び込んでいく淡を見て、まぁ、せっかくなら楽しむか、と、苦笑いしながら京太郎も男性更衣室へと足を運んだ。 「……」 海の家の前のベンチの一つ。一人の男が腰かけている。 その長身は、どうやら足の長さが理由らしく腰の低いベンチのせいでなかなかに窮屈そうだ。 短めの金髪は麦わら帽子に収められ、鋭い眼光は真っ黒なサングラスに隠されている。 アロハシャツの隙間から覗く分厚い胸板や割れた腹筋、トランクスタイプの水着から覗く引き締まった太もも。 それは、誰が、どう贔屓目に見ても、近寄り難いくらい、怖かった。おまけにそれがはるか虚空を眺めているのである。尚更だ。 「おっまたせ~~~!」 すると、そんな人々が思わず振り向くくらいかわいらしい声が響く!男どもはその声の主人を見て鼻の下を伸ばし、女どもは嫉妬に目を細めた! その恐ろしい金髪男とお揃いの麦わら帽子からは、しかに長く、艶やかに、きらめく金色の髪が揺れている。 顔は喜色に染まり、クリーム色のラッシュガードに覆われた体躯はしかし、でるとこは出て、締まるところは締まったボディを隠しきれていない。 肌は日本人離れして白く、シミ一つもない。そして、それより何より、帽子の影に隠れているはずの瞳が、何よりも魅力的に輝いていた。 だれだ!!?この美女におっまたせ~と言われたのは誰だ!?と男たちが視線を走らせる!果たしてその美少女の向かった先には…… 「きょーたろー!」 「ダアアアバカ!!抱きつくんじゃぁねえ!!!」 「イージャンイージャン!役得でしょ!」 「こっちは命がけなんだ馬鹿野郎!!!」 あの、おっかない男であった。 男たちは血の涙で砂浜を染めた。 「えっへへへ~、じゃあ早速泳ごう!」 「はいはい……」 淡にひかれるがまま、海辺の方へと向かって行く。砂浜を濡らして、引いてまた濡らし、を繰り返している浅瀬へと足首をつからせる。 「ひゃーつめたい!」 「あぁ……すずしいな……」 アロハシャツと帽子はベンチの近くに置いてきた。もう濡れるのは怖くない。だんだんとテンションが上がってきた京太郎は、手首を掴む淡の手を外すと、ぐっと身をかがめ、そして跳ねた! 「わ!」 「イヤーっ!」 そのまま、ダッシュ、そしてバク転、派手に着水。周囲に盛大に水しぶきが飛び散った。 「す、すごーいきょーたろー!」 「へへ、昔取った杵柄ってな」 頭の先まですっかりずぶ濡れた京太郎は、警戒心なく駆け寄ってくる淡に、一気に水をかけた! 「ひゃっ!」 「どうだ!お前も濡れろ!」 「やったなこの~!どりゃー!くらえすたーすぷらっしゅ!!」 「ただの水かけじゃねーか!」 そのままギャーギャーと、色気も何もないまま二人は盛大に水を掛け合う。 ついた当初感じていた疲れは、すっかり京太郎から消え去っていた。 「むぐむぐ……ぷはっ」 「どうだ」 「ちょっとはやいよー……」 暫くはしゃいだ後、少し離れた場所で二人は泳いでいた。淡は浮き輪装着、京太郎は立ち泳ぎである。 「お前がそんなのつけてるからだろ」 「むー、きょーたろーにはレディーを待つっていう精神がないんだね」 「お前以外にはあるよ」 「なにそれ!」 ギャーギャーと喚いてくる淡におもわず京太郎は笑ってしまった。それにつられて、少し遅れて淡も笑いだす。 「あははははっ!……ふー。ねー、京太郎」 「ん?」 急に真面目トーンになった淡に、京太郎も少しだけ真剣になる。 「……来年の夏も、その次の夏も、こうやって、二人で遊びたいな」 「……」 「もちろん夏だけじゃないよ。春は桜、秋はもみじ、冬は……雪、ないんだよなぁ……でも、インハイ出れば、こっちに来れるんだから……その……」 「……頑張って、麻雀」 「……おう」 こっぱずかしくなって、京太郎は浅瀬の方へとくるっと向いた。 「さあさあのろまな大星さん。浅瀬まで競争と行こうぜ。買った方がコーラ奢りな!」 「え、ちょ!」 「ヨーイドン!」 「ま、まってよー!きょーたろーのばかー!」 後ろで喚く淡を放って凄まじい勢いで京太郎は泳ぎ始めた。今日は散々やられっぱなしなのだから、このくらいの仕返しは、許してもらいたい カン! エピローグ 須賀京太郎にとって東京という土地は、憧れと、驚きと、そして若干の嫌悪を抱かせる場所であった あった。過去形であって、もちろん今は違う。 須賀京太郎にとって東京という土地は、もはや長野についで二番目に長い時間を過ごした場所であり、もはや憧れや驚きなどとっくに枯れ果て、いまや臭い空気と濁った空と、蒸し暑い温度に嫌悪を抱くばかりである。 だが、それでも、ここには魅力がある。 「春のIH以来だな……」 去年の冬の頃に買ったキャリーバッグをどかっと地面に下ろし、京太郎は一息ついた。 予算を節約するために、交通手段は深夜バス。本来なら新幹線でひとっ飛びなのだが、個人的な理由により、夏休みに入ってから速攻で課題を終わらせた京太郎は一足早く東京入りしていた。 そのため、大会期間に入るまでは安ホテルで節約生活だ。財布の中にはバイト代が詰まっているが、無駄遣いは避けたい。 「……さて、あいつは……」 バスの止まる場所は教えてあったはずだ。 人で賑わう辺りを見回してみる。すると、見当違いの方向を向いてピョンピョンと跳ねている見慣れた金髪が目に映った。 ばれないよう、そろりそろりと近づいてみる。 「うーどこだろどこだろ……」 「……あーわい!」 「あわわわっ!」 後ろから、そいつを抱きすくめてやった。一瞬身を縮ませたものの、こちらの正体に気づいたそいつは、パアッと顔を明るくして無理やり振り向きこちらに抱きついてくる。 「きょーたろー!」 「春以来だな」 「うん!うん!長野県一位おめでとう!」 「おう!」 須賀京太郎。清澄高校二年生。 長野県男子個人一位である。 そのまま近くのカフェになだれ込んだ二人は、テーブルを挟んで、淡は紅茶を、京太郎は珈琲を口に運んでいた。 「いやー、本当に京太郎はすごいよ!」 「お前に散々叩き潰された成果が出たな」 「ふふーん、高校101年生の淡ちゃんのおかげだね!」 「お前それまだやってんのかよ」 苦笑いとともにブラックコーヒーを啜る。その好みだけは理解不能だと淡に突っ込まれた。眠いのだから仕方がない。 「で、京太郎……次の目標わかってるよね」 「おう、勿論……」 少し溜めて、宣言。 「次の目標は、俺とお前、揃って個人戦で優勝すること」 「そのとーり!二位なんてちゃちいことは言わないよ、やるんなら優勝!」 「そしてその後に……」 「エキストラマッチ!」 そう、今年の夏は、昨今さらに加速した麻雀旋風に乗るように、インターハイに新たな目玉が追加された。 それは、男子女子個人戦の1.2位を集めたエキストラマッチである。 「そこで戦うのが私たちの目標!忘れないでよね!」 「あったりまえだろ!お前こそ咲にやられんじゃねーぞ」 二人は、お互いの目標を再確認し、そして、お互いを激励しあった。 / / | | | | | l l | | | | | / / | |__ | | | | | l l /| | | | |. /// | |\ |‐\八 | | | |__,l /-|‐ リ リ | | / / - 、 | x===ミx|‐-| | `ー /x===ミノ// / ∧{ / | .八 _/ { { 刈`| | l /´{ { 刈\,_| イ /ー―‐ ..__. / / | |/ \{^ヽ 乂辷ツ八 |\| /' 乂辷ソ ノ^l/ } / . . . . . . . . . . `「⌒ .. // /| l、 ー‐ \{ | / ー‐ j/ /}/ . . . . . . . . . . . . . .| . . . . . / _,/ . ..| | \ ! j/ ′/ . | . . . . . . . . . . . . . . .| . . . . . . / . . . . { |\ハ_, ノ ,___/{ . .| . . . . . . . . . . . . . . .| . . . . .∧ がんばろーぜ、淡!. / . . . . . . . ′ | . .|\圦 / j/l/. . ′ . . . . . . . . . . . . . . . ./ . . .∧. /. . . . . . . . . . ′_,ノ⌒ヽ | 、 、 _ -‐' / . / . . . . . . . . . . . . . . ./ . / . . / . /\ . . . . . . r‐ ' ´ ∨\/ ̄ )  ̄ ̄ / /. ./ . . . . . . . . . . . . . . / . / . . ./ . . / . . . . . .\ . .ノ ----- 、 ∨/ / 、 / ,/ . / . . . . . . . . . . . . . . / . / . / . . . . . . . . . . . . . / ‘, ‘, ./、 \ / /. . / . . . . . . . . . . . . . . ./ . // . . . . . . . . . . / . . . . .{ ---- 、 ‘, } / . . } ̄ \ ̄ ̄ ̄/ ̄ / .{/ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . -<⌒ . . . . . ./ . . . . ./ ‘, ‘,「l /⌒^\________/}/ . . . . . . . . . . . . . . . . . /´ \ . . . . / . . . . . .{ . . ‘, 人U{ . . . . . . .| \ / .| . . . . . . . . . . . .―‐┐ / \ . . . . . . . . } -- /\ . ノ r/ / . . . . . .| . . . \ ,/ . . . | . . . . / . . . . . . . . . . . ./ _, -──- .,_ '´ `丶、 / \ , / \. / . / ヽ ′ / / `、. .' / /, // /| | ` i . / 」_ ′/ | | i| . i. i | j/, /イ`メ、 | 小 || ト.! j .| ∨/ / |/ ヽ | ァT丁l | | ノ i| V j 抖竿ミ ノ ノ ,ノイjノ | i___ ____彡' , i| i| j 八| x x /ィ竿ミ 刈 | } ̄¨ え≠ / 八 i|/l | | x x / ノ | ′ / -‐ ' ハ 八 ト、 ヘ.__ ` 厶 イ ノ/ __,.斗‐=≠衣 ヽ八\ 丶.__ソ . イ(⌒ソ イく きょーたろーこそ! jア¨¨^\ \ \ >-=≦廴_ ア /ノヘ\ 斗ァ'′ \ \ ヾ. \___ ⌒ヾく<,_ `ヽ )ノ/圦 | 、\ ヽ 、∨tl `ヽ . ∨ V\ i { `| Vi \ ハ i } | } i } ∨,} }≧=- | 辻_V\`i} i } | /} iハ} 辻ノ ノ ¨〕V//リ iノ ////V〔 ¨〕もいっこ!カン! n∧ i / | | | .| | | | w .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| J( 'ー`)し | かんけつ | .ノ† ( ⌒\ |_____| ( ヽへ \ .| i / \\ . | .| ( \\、| i ノ ヽ ヽ、っ) .i/ ノ | / / \ / ./ \ ヽ、_ / / ヽ、_ \ / ( ヽ、\_ / ノ \ ヽ / / ヽ ( / / ヽ) / ) ./ / .し'
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3481.html
http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1390033543/ ――7月中旬 教室 7月中旬に差し掛かり、夏休みを期待するあの独特のゆるい雰囲気が学校を包むようになってきた そして今は4限目の授業中 しかし先生のもその空気に当てられたのか、後半はほとんど雑談である 先生「おっ、もうこんな時間か。では授業は終わりにする」 教室を出て行く先生を見送っていると、見知った2人が廊下を歩いているのが見えた その2人はなぜか俺のクラスメイトに話しかけている、何か用だろうか? 「熊倉くーん、お客さんだよー!」 部長「悪いがちょっと来てくれ」 副部長「ごめんね貴重なお昼の時間に」 「え、あれだれ?」 「なんちゅー胸しとるんや、うちへの当てつけか」 「ちっ、女かよ……」 流石我が部の美人二人組み。教室に現れただけでこの騒ぎようだ 京太郎「どうかしたんですか?」 「もしかして、熊倉君の彼女かな?」 「なに!?うちとは遊びやったんかー!」 「俺の方が絶対気持ちよくしてやれるのになあ」 なにやら一部物騒な言葉が聞こえたが、気にしない 部長「時間がもったいないから簡単に説明するな」 部長「実はインターハイに向けて一緒に合宿を行ってくれる高校を探していたんだが…」 副部長「今朝連絡があってね、やっと見つかったのよ」 部長「場所はうちの高校の合宿所を使う予定なんだが、色々買わないといけないものもあるんだ」 あー何だか嫌な予感がするぞ、雑用的な意味で 部長「そこでだ、ここに書いてあるものを買ってきて欲しいんだ」 ほらきたやっぱり 副部長「悪いとは思うんだけど、私たち他にもやらなきゃいけないことがあって…」 部長「重いものもあるから、他の者にも頼めないんだ」 京太郎「それなら宅配便を使えばいいのでは?」 部長「残念だがうちの高校はそこまでお金を出してくれないんだ」 うーむ別に構わないが 部長「だ、ダメか?///」ウワメヅカイ 京太郎「」キュン 副部長「ね、お願い///」ムニュ おおおお、おも、おもちが、あたたたたたたたたたた 京太郎「……」 京太郎「はい!喜んで!!」イケメンスマイル 副部長「ほんとう!?ありがとう!」 京太郎「お二人のためなら何だってしちゃいますよ~」デレデレ ___________ _____________ ___ ふぅー、危うく教室で昇天するとこだったぜ しかし副部長のおもち柔らかかったなぁ、世界文化遺産に指定するべきだよあれは 「「………………」」 アレ?なんだかクラスの様子がおかしいぞ 京太郎「小鍛治ー、昼飯食べようぜ」 小鍛治「……」プイッ あ、あれ、俺なにかしましたっけ? 「熊倉くん、あれはないんじゃないのかな」 京太郎「へっ?」 「小鍛治さんかわいそう…」 「彼女を放置して他の人とイチャイチャするなんて…」 京太郎「い、いや、小鍛治と俺はそんなんじゃ――」 「この、鬼、悪魔、京太郎!」 「胸か!?やっぱり胸が大事なんか!!このケダモノ!!」 京太郎「……」 「彼女と胸、どっちが大切なの!」 「変態!変態ッ!!変態ッッ!!!」 京太郎「……」 京太郎「ちくしょー!さっきから好き勝手言いやがって!だったら俺も言わせてもらうぜ!」 京太郎「貴様ら女子連中はおもちの何たるかを理解していない」 京太郎「おもちはただの脂肪の塊にあらず!!愛なんだよ愛!!愛そのもの!!」 京太郎「それを今から貴様ら凡俗にも分かるように説明してやる!!心して聴けい!!」 京太郎「まずは――」 _________ _____ __ 20分後 京太郎「――というわけだ、分かったかっ!!」クドクド 女子「「……………」」 「小鍛治さん、こんな変態とお昼なんてやめて私たちと一緒に食べよ?」 小鍛治「え、いいの?」 「もちろんだよ、こっち来て」 「なんか近くによると妊娠しちゃいそうだしね」 小鍛治「う、うん、ありがと///」チラ 京太郎「……」 まーたこのパターンか……女子社会はきびしいや 「おー彼女取られちゃったか、ならこっちで俺達と食おうぜ!」 京太郎「だから小鍛治は彼女じゃねーって」 「まー知ってるけどね」 ちくしょう、こいつら 「…でさ、一つ聞きたいことあるんだけどいいか?」 京太郎「おう、なんだ?」 「さっきの胸の感触教えてくれ」 京太郎「しね」 久しぶりに男子と昼飯を食べた。女子からのキツイ眼差しも一緒だったけど ま、でも 小鍛治『そ、そんなんじゃないって!』キャッキャッ 小鍛治が楽しそうだから良しとするか ――7月下旬 合宿初日 夏休みに入り、インターハイに向けて最終調整に入る――合宿だ なにやら相手先は島根県の女子高らしい、遠路はるばるご苦労なこって ちなみにその高校は県の代表校ではないらしいので、練習試合はオッケーだそうだ 副部長「あら、来たわね」 校門前で待っていると、10人ほどの集団が向こうからやってきた 部長「朝酌女子高校の方々ですね、遠いところからはるばるお越しいただきありがとうございます」 「ご丁寧にどうもありがとうございます。3日間ですがどうぞよろしくお願いします」 互いに挨拶している間、他の部員を見てみた とりあえず目に付いたのは3人だ 黒髪ロングの子、金髪のセミロングの子、やや幼い顔立ちの子 特に童顔の子は実にいい…なぜって?おもちが大きいからに決まってるだろう 童顔の子「」ニコッ ゲスなことを考えてると微笑まれた、しにたい ----------------------- 合宿所などの設備の案内が終わり、さっそく合同練習となった まあ実戦形式で打つだけなんですけどね しかし全く知らない人と打つのはなかなか勉強になる そして確実に強くなってることが実感できる もう飛ぶことなんてほとんどないし、隙あらば上位にだって食い込める だけどこんなんじゃ足りない。もっと強くなりたい。誰よりも、もっと、もっと―― 童顔の子「きみけっこう強いんだね」 京太郎「!!」 童顔の子「驚かせちゃったかな?」 京太郎「い、いえ…大丈夫です」 童顔の子「敬語はいいよ、同い年なんだから。ねっ、熊倉京太郎くん」 京太郎「よく覚えてるね」 さっき全体で簡単に自己紹介したのだが…俺はほとんど聞いていませんでした 童顔の子「たった一人の男子部員だったし、なんとなくね」 京太郎「ありがとう」 童顔の子「ふふ、どういたしまして。じゃあ私の名前は?」 京太郎「……ごめん、正直言って忘れてしまいました」 童顔の子「そうだろうと思った。私は朝酌女子高校1年の―」 童顔の子「瑞原はやり、だよ☆」 京太郎「」 京太郎「ほげっ!」 京太郎「……瑞原はやり(28)…さん?」 はやり(16)「なんで敬語なのかな?」 京太郎「あ、間違えた」 京太郎「……瑞原はやり(16)…さん?」 はやり(16)「なんで二回も!?」 京太郎「い、いや…だってねえ?」 確かにそうだ、どことなく雰囲気が瑞原プロに似ている 幼い顔立ちに、その自己主張するおもち…まだ発達段階だけど、間違いない つーかこれって偶然か? どちらにしろ、ここは慎重に対応したほうが良さそうだ はやり(16)「どうしたの?」 京太郎「いや、なんでもないよ。それよりも一緒に打とうぜ」 はやり(16)「うん!」 __________ ______ __ とりあえず今日の練習が終わった。あとは飯食って寝るだけだ 慣れない環境だったせいか思ったより疲れたが、勉強にもなった 小鍛治「おつかれさま」 京太郎「おう、おつかれさま」 小鍛治「えと…さっきさ、朝酌の子としゃべってたけど」 京太郎「ああ、瑞原さん?」 小鍛治「うん…それで、何の話をしてたのかなあって思って」 京太郎「ああ、簡単に自己紹介して一緒に打っただけだよ」 小鍛治「本当に?なんかちょっと…」 京太郎「ん?どうかしたのか」 小鍛治「…いや、なんでもない」シュン 京太郎「?」 小鍛治「それより夜ご飯の準備しよ」 京太郎「お、おう」 少し小鍛治の様子がおかしかったが、その後はいつも通りだった ご飯を食べた後、皆お風呂に入ったが、お約束の覗きなんてしておりません というか俺以外女子のこの環境で覗きがばれたりしたら村八分じゃすまないからね、仕方がない で、今俺達は広間でくつろいでいるのだが、朝酌の子の何人かが俺に話しかけてきた 「ねえ、君。熊倉京太郎くんだっけ?ちょっとお話しようよ」 京太郎「はあ…いいですけど」 「ありがと。それでさ熊倉くんって彼女いるの?」 小鍛治『あわわわわ』ガクガクガク 部員2『どうしたの、すこやんの番だよ?』 京太郎「うぇっ!な、なんですかいきなり!?」 「えー?ほら私たち女子高だからさ、共学の男子ってどうなのかなーって気になって」 京太郎「はぁー、残念ながらいませんよ」 「そうなの!?熊倉くんってけっこうモテそうなのにー、もったいなーい」 京太郎「そうだったら良かったんですけどねえ…」 「じゃあさ、私と付き合ってみる?」 小鍛治『ぶほっ!』ビチャ 部員1『ちょ、きたな!』 京太郎「ほんとですか!」ガタッ 「うそでーす」テヘッ 京太郎「まあ、分かってましたけどね…」 京太郎「伊達に彼女いない歴=年齢じゃないですから」 「あっ、なんかごめん…」 「私は男子の好みとか聞いてみたいな、女子高にいるとそういうの分からないし」 京太郎「そのくらいなら構わないですけど、もうからかうのは無しですよ?」 小鍛治『うぅ…』チラチラ 部員2『すこやんも話しに加わればいいのに…』 ――7月下旬 合宿2日目 今日も昨日に引き続き、朝から麻雀、麻雀、麻雀だ ただ朝酌の子と打つたびに、小鍛治がこちらをジロジロ見てきて少々やりずらかったが… そして午後3時を過ぎ、練習も一通り終わった頃 副部長「ねえ、京太郎くん。悪いんだけどいいかしら?」 京太郎「ええ、なんでしょう?」 副部長「実はね、夜の食材なんだけど思った以上に減りが早くてね。追加の分を買ってきてもらいたいの」 京太郎「いいですよ。でも一人だと流石に持っていけないんで何人か欲しいんですが…」 副部長「そうねえ、だったら――」 小鍛治「ハイ、ハイ!なら私行きます!!」クワッ あれ小鍛治さんいましたっけ!? 副部長「あらそう?ありがとうすこやん」 「そういうことなら、うちのを一人持っていっても構いませんよ」 向こうの部長さんだ 副部長「いいんですか?ありがとうございます」 「おっ!ちょうどいい、瑞原こっちに来てくれ」 はやり「はい、どうかしましたか?」 「食材の買出しに一緒に行って来てもらいたいんだが、いいか?」 はやり「部長の頼みとあらば!」 「そうか、よろしく頼むぞ」 はやり「はい!」 小鍛治「むぅ…」 とりあえず3人で駅前のスーパーに来た というか駅前まで行かないと基本何もないからね、ここらへん はやり「茨城ってけっこう栄えてるんだねー、こんなになってるの初めて見たよ」 京太郎「え、いたって普通だと思うけど」 はやり「そうなの?私の地元だと駅に行くにもひと苦労するくらいだしね」 京太郎「へえー。えっと確か瑞原さんって島根だっけ。島根ってそんなになにも無いの?」 はやり「まあ基本的にはなにも無いかなー、でもその代わり自然はほんとにきれいだけどね」 京太郎「やっぱりそんな感じなんだ」 はやり「そんな感じとは失礼な!」 京太郎「はは、ごめんごめん」 小鍛治「……」 京太郎「……ん?どうした小鍛治さっきから」 小鍛治「なんでもない、さっさと買い物済ませちゃおう!」プイッ 京太郎「あ、ああ」 はやり「……ふーむ、なるほどね」ボソ 買い物を済ませるとかなりの量になったが3人もいれば割と余裕だ 時計を見るとまだ時間に少し余裕がある はやり「まだ時間あるから、あそこのデパート見に行きたいんだけどいいかな?」 京太郎「いいんじゃないか、なあ小鍛治?」 小鍛治「わ、私は別にどっちでも…」ゴニョゴニョ はやり「じゃあ行こう小鍛治さん、ほらっ!」グイッ 小鍛治「わわっ!引っ張らなくていいから!?」 ~服飾店 はやり「どうどう?熊倉くん似合ってるかな?」 京太郎「ああ、なかなかいいんじゃなか」 はやり「ふふ、ありがと」 京太郎「でもそんな服、買うお金なんてあるのか?」 はやり「あるわけないじゃん、いわゆるウインドウショッピングだよ」 京太郎「ウインドウショッピングねえ……楽しいものなのか?」 はやり「熊倉くんは女の子の気持ちがよく分かってないみたいだね……」チラ 小鍛治「……」ハァ 京太郎「?」 はやり「小鍛治さん、こんなのどうかな?」 小鍛治「えっ!わ、私ですか?」 はやり「ほらほら敬語はいいから。きっと似合うよ」 小鍛治「で、でも、私…こんな派手なの着ないし…」 はやり「別に買うわけじゃないんだから、それに熊倉くんも見てみたいでしょ?」 京太郎「おお、まあ見てみたいかな」 小鍛治「そ、そう?//じゃあ着てみようかな…」 しばらくすると… 小鍛治「ど、どうかな///」 京太郎「うーむ」 小鍛治「///」 京太郎「意外と似合ってるんじゃないか」 はやり「うんうん」 小鍛治「意外とは余計だよっ!?」 はやり「じゃあ次はこんなのどう?」 ~雑貨店 ひと通り服を見た後は雑貨店に来た 女の子ってこういうところ好きだよね。男の俺にはよく分からないけど はやり「ねえねえ見てこれ、かわいー」 小鍛治「え、そう。私はこっちの方が好きかな」 はやり「ええー、熊倉くんはどう思う?」 京太郎「どちらともよろしいんではないかと」 はやり「適当だね」 小鍛治「京太郎くんに気の利いたセリフを期待するほうが間違いだよ」 京太郎「ひどい言われよう」 だいたいお店を見終わり、さあ帰ろうということになった エスカレーターで1階まで降りてきたところで、突然瑞原さんが俺に荷物を預けてきた はやり「あー、ちょっと待っててね」モジモジ 京太郎「え、どこ行くんだ?」 小鍛治「ばかっ」バシッ 京太郎「いてっ!何すんだよいきなり!」 小鍛治「さ、このアホは無視して早く行ってきて」 はやり「…ありがとう、小鍛治さん」 そう言うと瑞原さんはどこか行ってしまった 小鍛治「もう!京太郎くんはデリカシーないんだから」 京太郎「デリカシー?……ああ、そういことか」 小鍛治「今度から気をつけてね、まったく」 流石にアレだけじゃわかんねえよ。女子の空気を読む能力は異常 瑞原さんが戻るまでの間、特にすることもないので、周りの店を見回してみる やはりというか…どこのデパートでも同じだと思うが、1階はやはり宝飾品など女性向けのものばかりだ なんで出入り口である1階にこの手のお店を置くのだろう? 男性客が入りづらくなるだけだと思うのは俺だけだろうか? 京太郎「あれ、小鍛治はどこ行った」 くだらないことを考えているうちに小鍛治もどこかに行ってしまった 辺りを見回すと、黒髪の女の子が宝飾品店の品物をじっくりと眺めている 何を見ているのか興味が湧いたので、後ろからこっそり覗いてみる シルバーのチェーンに薄い青と透明の宝石(アクアマリンとダイアモンドか?)があしらわれている シンプルだがなかなか綺麗なネックレスだ。ついでに値段はと…… 京太郎「5万か……ちょっと高いな」ボソ 小鍛治「わっ、いたの!?」 京太郎「いたのとは失礼なやつだな」 小鍛治「ご、ごめん」 京太郎「…小鍛治もこういうの興味あるのか?」 小鍛治「私だって一応女の子だよ!?興味ぐらいあるよ」 京太郎「じゃあ、試着してみれば?」 小鍛治「え……いや、いいや。気に入ったらほんとに欲しくなっちゃうから」 京太郎「ふーん、そんなもんか」 小鍛治「そんなもんだよ」 はやり「ごめんお待たせー」 京太郎「お、来たか。じゃあ、帰ろうぜ」 小鍛治「…うん」 ――7月下旬 合宿最終日 特に問題も無く最終日の練習を終了した 俺はインターハイに出場するわけではないけど、とても実りあるものだったと思う そういや今気付いたけど、俺合宿するの始めてだったんだよな…… 清澄での境遇に比べればここでの俺の扱いは、素晴らしいものといわざる得ない 元の時代に帰ったら部長はロッカーだな 部長「3日間練習にお付き合いいただきありがとうございました」 「いえ、こちらにしてもとてもためになりましたよ」 「インターハイぜひ頑張って下さい」 部長「ありがとうございます、気を付けて帰ってください」 「「ありがとうございましたー!!」」 一通り挨拶が済むと、瑞原さんがこっちにやってきた どうしたのだろう? はやり「熊倉くん、最後にちょっといいかな?」 京太郎「おう、なんだ」 はやり「えーとね…」 はやり「女の子の胸を見るのもいいけど、一番大事な子から目を離したらダメだぞっ☆」 はは、ばれてましたか…恐れ入りました 京太郎「ありがとう、肝に銘じておくよ」 京太郎「ついでに俺からも一ついいか」 はやり「なにかな?」 28になっても語尾に☆をつけることとか、あの年甲斐の無い衣装とか 一人称が「はやり」のこととか、うわ…このプロきついとか… 言いたいことはたくさんあったけど、ひとつだけ 京太郎「瑞原さんがたとえプロになっても、またいつか俺と麻雀打ってくれないか?」 はやり「はは、何それ。お安い御用だよ!」 京太郎「ありがとう、またな」 はやり「またね」 _________ _____ __ 小鍛治「ねえ、京太郎くん。瑞原さんと最後何の話してたの?」 京太郎「……うーん、ちょっとした約束をしたんだよ」 小鍛治「約束?どんな?」 京太郎「ひ・み・つ」 小鍛治「うわぁ…きもちわる…」ドンビキ 京太郎「ひでえ!」 京太郎「でもそういう小鍛治だって、瑞原さんとなにか話してたじゃないか」 小鍛治「私はその……お、応援されただけだから//」 京太郎「瑞原さん偉いなあ…インターハイ頑張らなくちゃな!」 小鍛治「はあ…そうだね」タメイキ 京太郎「?」 ――8月上旬 東京 部員1「とうちゃーく!」 部員2「田舎者丸出しだからやめてくれない?」 副部長「まあいいじゃない、久しぶりの都会なんだから」 ついにインターハイ出場のため東京までやってきた、実に約半年振りの東京だ あらためて辺りを見回すと、以前来た時に比べて明らかにその風景が変わっている さすが大都会東京、様変わりするのもかなりの速さだ 小鍛治「荷物持ちますよ」 トシ「ありがとう健夜ちゃん、それなら頼もうかねえ」 驚いたことに今回はトシさんが俺達と同行することになった なにやら新しい人材の発掘、またそれとは別にやることが一つあるそうだ 部長「さあ、さっさと会場に行って抽選を済ませよう。なるべく早く休みたいからな」 いくら茨城県からとはいえ、電車で2時間近くかかったからな 部長の言うことももっともだ。正直俺も疲れたので早く休みたい ----------------------- 抽選会が終わりトシさん以外皆くたくたで、予約していたホテルに入った 部屋割りは俺とトシさんが一緒の部屋で、それ以外がまた一部屋となった 夢も希望も無いね! 部屋では特にやることもなかったので、早々にベッドの中に入ってしまった 自分が出るわけでもないのに、緊張してなかなか寝付けなかったのは内緒だ ――8月上旬 インターハイ 団体戦一回戦 いよいよ、インターハイの幕開けとなる団体戦一回戦だ 各都道府県の代表がぶつかり合うのだ。県予選のときのようにすんなりいくとは思えない 実際県予選の時にみんなの間にあった、あのゆるい雰囲気は既になくなっている 小鍛治なんかはその雰囲気に当てられてか、あの時以上に緊張しているようだ 果たして大丈夫だろうか… ________ ____ __ まあいつものように結果だけいうと、今日の初戦はなんとか大丈夫だった いつも通り小鍛治に回るまでに1位になり、ある程度点差をつけたのだが、そこは全国大会 県予選のように3万点差というわけにもいかず約1万点つけるのがやっとだった そして、案の定小鍛治は最初はガチガチに緊張して、ほとんど小鍛治銀行状態だった しかし後半に入ると何とか調子を取り戻し、オーラスで2位に逆転することができた 見てるほうもラス前まで3位だったので心臓バックバクだった 頼むから劇場型クローザーみたいな真似はしないでもらいたいのだが… だが跳満以上くらわないのは流石と言うべきかな 京太郎「お疲れ様、勝ててよかったな」 小鍛治「……うん、ありがと」 京太郎「前半はともかく後半の追い上げはすごかったじゃないか」 小鍛治「…そんなことない、ごめんね」 京太郎「小鍛治…」 小鍛治が俺に謝る理由は分かっていた 県予選が終わって、小鍛治が泣いた後にした俺との約束を果たせなかったからだ もう足手まといにならない、俺にかっこいいところ見せる、って ――8月上旬 インターハイ 団体戦二回戦 今日は団体戦二回戦だ 昨年はここで敗退したとのことなので、みんないつも以上に緊張している なにせ会場に向かう途中、誰も言葉を交わさなかったくらいだ そして試合前のいつもの部長の言葉が始まる 部長「さて今日の試合だが、当然これまでより難しいものになると思う」 部長「なので全員気を引きしめて、試合に臨んで欲しい」 部長「……」 部長「というセリフを昨日言おうと考えていたのだが、今日は少し正直になろうと思う」 部長「もしかしたら私は、そこまで勝ちたいと思っていないのかもしれない」 部長「みんなと麻雀を打てればそれでいいじゃなかと最近思うようになった」 部長「でも、子供みたいだが、私はこの祭りをここで終らせたくないとも思ってる」 部長「だから特に言うこともない。みんな頑張ってくれ」 部員1「おっ!たまにはいいこと言うじゃん!」 部長「なにっ!?」 部員2「まあ、確かにいつものはありきたり過ぎてつまらないけどね」 部長「」 健夜「わ、私はいつものも良いと思いますよ?」 部長「疑問系!?」 副部長「さあ、みんな行きましょう!」 「「はい!!」」 部長「それ、わたしのセリフっ!!」 大事な試合なのに最後まで締まらない まあ、俺達らしいといえばそうなのかな? さあ、俺も頑張って応援するか 部長の演説の後、俺はトシさんに誘われて、控え室ではなく観客席から一緒に試合を見ている さすが二回戦と言うべきか、部長と副部長ですらぎりぎりプラス収支がやっとで、他の2人はマイナスとなった 結果的に大将戦までに10万点を切る格好となってしまい、順位は現在3位だ 京太郎「トシさん、正直言ってどう思う?」 トシ「かなり厳しいね、2位との差は約2万、1位とは約3万。普通に考えれば無理だろうね」 トシ「最悪、4位のトビで終了…なんてこともあるかも」 京太郎「まあそうだよな…」 トシ「ただ――」 京太郎「ただ?」 トシ「…いやなんでもないよ。健夜ちゃんの応援、ちゃんとしてあげなさい」 京太郎「うん」 いよいよ、運命の大将戦が始まった いつも通りとはいかないが今日は始めからちゃんと打ててる だからといって2位との差はなかなかつけられない 俺の見立てでは、そもそもこの4人はほとんど実力差がない よほどの強運に恵まれない限り追いつくのが難しいのは明らかだ そして、点差を埋められないまま南入 小鍛治…… ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ―小鍛治健夜 この人たち強い…このままだと絶対に追いつけない いや、追いつくことはおろか、4位になることさえ考えられるよ… 負ける? ここで負けるの? 嫌だ…私だってもっとここで打ちたい まだみんなに恩返しだってしていない いままで生きてきて、ほとんどずっと一人ぼっちだった いつも自分の席で本を読んで、周りから壁を一枚隔てて過ごしてきた 本と家族だけが、私にとっての世界そのものだった 高校に入っても変わるわけないって思ってた けどそんな私みたいな人間に、興味をもって話しかけてくれる男の子がひとりいた 今までもそんな人は何人かいた。けど最後にはみんな私から離れていった それでも彼は私をあきらめないでいてくれた そして部活に誘われて、入部して…… 初めて学校に自分の居場所ができた気がする 初めて文化祭を友達と回って、初めて他人に褒められて、初めて友達とお昼ご飯を食べた いつの間にかあの分厚い壁がなくなっていた。世界がこんなにも綺麗なことを初めて知った でも私は、まだ彼らになにもしていない。なにもできていない こんなにも感謝してるのに… だからここで先輩達の夢を終らせるわけにはいかない! そして何より、京太郎くんとの約束は果たさないといけない!! 私のかっこいいところ、見せてやるんだっ!!! ゴッ! ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ビキッ トシ「おや…」 京太郎「ど、どうしたの?モノクルが…急に……」 トシ「ああ、何ともないよ。久しぶりで驚いただけさ」ニヤ 京太郎「?」 トシ「ふふ、なるほどね…ここから先は1秒だって見逃したらだめだよ」 京太郎「えっ?」 小鍛治『ロン、6400』 京太郎「やった!」 トシ「いや、まだだよ」 小鍛治『ツモ、6000・3000』 京太郎「よっしゃあ!運が向いたきた、いけるぞ!」 トシ「運?それは違うよ」 京太郎「どういうことですか?」 トシ「あれが健夜ちゃんの本当の実力さ」 京太郎「ああ…」 そうか…なるほど。これが小鍛治の…いや小鍛治プロのオカルト能力 小鍛治『ツモ、4000オール』 京太郎「これで2位、後は耐えさえすれば…」 トシ「耐える…?」 小鍛治『カン』 トシ「その必要はないよ」 小鍛治『カン』 トシ「なにせ健夜ちゃんが狙っているのは」 小鍛治『カン』 トシ「1位になることだけだからね」 小鍛治『嶺上ツモ――』 京太郎「だ、大三元…役満。捲った…!」 トシ「これは本物だねえ」 京太郎「か、かっけえ…」 _________ _____ __ 部長「なんと言っていいのか…とにかくありがとう」 部員1「あの状況から勝つなんてすごすぎだろ!シビれたよ」 部員2「こんな試合初めて見たよ、感動しちゃった」 副部長「ほんとすごかったわ!」 小鍛治「い、いえ、そんな…後半なんかほとんど何も覚えてなくて」テレテレ ガチャ 京太郎「……」 小鍛治「あ、京太郎くん…」 小鍛治「どうだった、かな?」 京太郎「……」 京太郎「小鍛治ーー!!」ダキッ 小鍛治「ちょ、ちょっ…//」 京太郎「すっげーかっこよかった!!」 京太郎「最後の役満での和了りなんて、漫画の主人公みたいだったぞ!」 小鍛治「そ、そうかな///」 京太郎「あの絶望的な状況から捲くって1位とか、もう鳥肌もんだったぜ!!」 小鍛治「あ、ありがとう////」 小鍛治「……」 小鍛治「そ、それでさ…約束、守れたかな?」 京太郎「…ああ、最高にかっこよかったぞ」 小鍛治「よかったぁ…」グスッ 京太郎「お、おい!?」 小鍛治「ううん…大丈夫」ポロポロ 小鍛治「嬉しくても涙って出るものなんだね」ニコ 京太郎「小鍛治…」 小鍛治「京太郎くん…」 部員1「あーこの部屋なんか暑くない?」 副部長「あらあら」 部員2「ちょっと!今いいところなんだから邪魔しない」 京太郎「////」 健夜「/////////」カァァァ 部長「ほらっ!馬鹿やってないで帰るぞ」 部長「ただ…その、ふ、二人はまだここにいていいからな///」ドキドキ 部長「ご、ごゆっくりー!」ダッ ガチャ 京太郎「」 小鍛治「////」 小鍛治「ね、ねえ…一ついいかな」 京太郎「お、おう、なんだ」 小鍛治「私さ、京太郎くんとの約束守れたよね?」 小鍛治「だからさ、その…一つお願いしてもいいかな?」 京太郎「まあ、俺のできる範囲でなら」 小鍛治「いいかげん私のこと、名前で呼んで欲しいかなー…なんて///」 京太郎「……」 小鍛治「い、いや…やっぱり今の無しで――」アタフタ 京太郎「……健夜」 小鍛治「えっ」 京太郎「健夜。これでいいか?」 健夜「うん!」 京太郎「帰るか」ギュ 健夜「うん///!」ギュ __________ ______ __ その後の試合については、正直言ってあまり言うべきことはない 負けてしまったからだ 副部長が3位で回ったところで他家が飛んで終了 あまりにもあっけなさ過ぎて、ほとんど実感がないのが本音だ だけどみんなが意外とスッキリとした表情をしていたのが印象的だった ともかく、俺達の団体戦はこれをもって終了となった ――8月上旬 インターハイ 団体戦は終ってしまったが、まだ副部長の個人戦がある なのでまだ俺達は東京にいるのだが、何人かは観光に出かけたようだ 俺はというと今日はトシさんに誘われて、男子の試合観戦に来ていた 健夜も誘うおうかと思ったのだが、なぜかトシさんに断られてしまった なにやら、俺だけに用があるようだ 京太郎「すごい張り詰めた雰囲気だね、こっちまで緊張してきそう」 トシ「全国から本物の怪物どもが集まってくるんだ。仕方ないよ」 京太郎「"怪物" ってのは流石にいいすぎじゃない?」 トシ「?知らないのかい」 京太郎「え、何を?」 トシ「まあ…見てれば分かるよ」 京太郎「?」 トシ「まだ、少し時間があるね」 トシ「ちょっと準備してくるから、ここで少し待っててくれるかい?」 京太郎「ま、まあいいけど…何してくるの?」 トシ「ひ・み・つ」 なかなかチャーミングだ しばらくすると、試合が始まってしまった まだトシさんが来ていないが、仕方がない 試合が始まると、さらに空気が張り詰める。なんだこの異様な圧力は… あの咲も、強いオカルト能力者に近づくと気分を悪くしていたが…これはその比じゃない 『御無礼』 京太郎「っ…!」 『県予選のときのように、もう《ゴルゴダの枷》は必要ないな』 『最初から全力でいかせてもらうか』ボッ 京太郎「ぐ、はっ…!」 なんだこの試合は、常軌を逸している… ま、まずい…このままだと…意識が 『……今の私の麻雀力は?』ゴゴゴゴゴゴゴゴッ 『32768アーデルハイドです』 京太郎「ぐわあああああああ…!!」 だめだ…もう。ごめんみんな…俺…こんなところで…… ガシッ! ??「大丈夫かい?少し遅れちまったね」 京太郎「う……ぁ…」フラフラ う、美しい……可憐だ… 京太郎「っ…」パクパク ??「喋らなくていい、そこでゆくっり休んでなさい」 ??「まったく、酷い有様だねえ」 ??「仕方がない……久しぶりに私の本気、見せてあげるよ!」ゴゴゴゴゴ スゥー…… こ、この構えは……まさかッッ! 天地魔闘の構えッッッ!!!! 天は攻撃、地は防御、魔は魔力の使用を意味する これら三つの動作を一瞬にして行う、大魔王でも全盛期にしか扱えぬという まさに、最大の奥義ッッッ!! しかし、これでは駄目だ… 天地魔闘の構えはカウンター技、自分に向かってくる攻撃に対処できるのみ……ッッ! このままでは会場にいる観客は…… スゥー……バッ! !!私としたことが、ぬかった…ッッ! これは予備動作に過ぎんッッ! ここから繰り出される技は…… 超武技ッッ闇勁ッッッ!!!! この会場に充満する"気"を奪い取る気かッッ! だが奪い取ったその"気"、一体何に使うというのか小娘…ッッッ!! むッ!なんだ、この光は…会場全体に広がって… まさか、そのエネルギーを使っているとでもいうのか…… この会場にいる人々の意思の共鳴を…引き起こしているとでも言うのかッッ!! すごい……外へ漏れようとしてした"気"が押し戻されていく だが、恐怖は感じない。むしろ暖かくて、安心を感じるとは… 眠い……この安心感……だめだ…意識が―― ~~~~~~~~~~~~~~~~~ ??「ふぅー、疲れた」 ??「とりあえず、大丈夫そうかね…」 ??「しかし、全国大会の度に呼び出されるのはたまったもんじゃないねえ」 ??「まあ、これも大人の努めか」 京太郎「……」 こうやってこの子を介抱するのも、これで二度目 ??「まったく…世話のかかる子だよ」ナデナデ _________ _____ __ 京太郎「ん…あ…」 トシ「気付いたかい、どこか痛むところは?」 京太郎「い、いや…大丈夫。なんともないよ」 トシ「そう?よかった」 京太郎「記憶があやふやなんだけど…なにかあったけ?」 トシ「さあ、なにも。夢でも見ていたんじゃないのかい?」 京太郎「そう…かなあ。あ!そういえばすごく綺麗な女性がいたんだけど、知らない?」 トシ「へえ…どのぐらい綺麗だったのかな?」 京太郎「いや、もう…今まで見た中で一番だよ!」 トシ「ふふ、そう?ありがとう」 京太郎「?」 トシ「さあ、試合見ようか。これも勉強の内だよ」 京太郎「はあ…」 トシさんに言われるまま、試合を眺める 流石全国から選りすぐりの選手が集まっているだけある、レベルが高い いや高すぎるくらいだ、県予選で戦ったアカギさん達3人もすごかった しかしここに集まっている選手達はそれと同等か、あるいはそれ以上の実力を持っている… 明らかに俺のいた時代とは一線を画している まるで別の競技を眺めているような…… 京太郎「あのートシさん、明らかに俺の時代とはレベルが違うんですが…」 トシ「そうなのかい?」 トシ「……あーなるほど、これを読んでごらん」 そういうと少し厚めの紙の束を渡された トシ「こっちで少し会議に出席してね、そのときの資料の一部だよ」 京太郎「えーなになに…『男子麻雀界の二極化に伴う新たな競技の設置について』」 京太郎「そんなのあったんだ…」 京太郎「『近年、男子麻雀選手の実力が急速に二極化し――』」 京太郎「『新たな麻雀競技を設置することでその解決を図ることを――』」 京太郎「なにそれこわい」 京太郎「『テニス、バスケにおいては既に同様の試みがなされており――』」 京太郎「『特に"テニヌ"においては中学生が分身、五感の剥奪、光速移動――』」 京太郎「『最近の研究では、恐竜の絶滅の原因はある中学生にあると考えられ――』」 京太郎「なにそれもこわい」 トシ「その様子だと、どうやら知らないみたいだね」 トシ「将来的には男子麻雀は二つの競技に分かれることがほぼ決まってるんだよ」 トシ「女子は均等にバラけてるからいいんだが、男子はあまりにも差がありすぎてね」 トシ「でも、どうやら未来では"そっち側"の競技はあまり知られていないみたいだね」 なるほど。通りで俺の時代の男子のレベルが低いわけだよ… なんとか無事に試合を見終わった レベルの高いものを見ると本当に勉強になるな まあ、一部人知を超えている方々もいたので、それは参考にならなかったが… いつか俺もあの舞台で戦いたいと思うような……思わないような 京太郎「トシさんは結局、俺にこれを見せたかったの?」 トシ「まあそれもあるけどね」 京太郎「?」 トシ「……実はタイムリープについて知っている人をついに探し出してね」 京太郎「!!」 トシ「で、その人はこのインターハイである高校に同行してるんだ」 トシ「まあ、私が呼んだんだけど…」 トシ「その高校は永水女子高校」 トシ「そこの神代さんという人が、明後日京太郎と会ってくれるそうだ」 京太郎「そう…」 トシ「今まで黙っててごめんね。できるだけ普通に過ごしてもらいたかったんだ」 京太郎「そんなことないよ。ありがとう、トシさん」 京太郎「それで、どこに行けばいいのかな?」 トシ「それならここに地図があるから。ほら」 京太郎「…明後日ここに行けばいいんだね」 トシ「そうだね…ただ一つ忠告することが」 京太郎「?」 トシ「たとえどんなことを聞かされようと、最後は自分の心に素直にね」 京太郎「……うん」 いよいよらしい、ついに帰れるのだ だが嬉しいと言う気持ちには到底なれなかった ――8月上旬 インターハイ おそらくもう長い時間、ここにはいられないと分かると、いてもたってもいられなくなった 俺はこの短い時間をどう使うべきなのだろうか? トシさんに話を聞かされてから、何度も何度も考えた だが決まって俺の頭の中には、いつもあいつの顔が片隅あった そうか。やはり、俺は…… 京太郎「よしっ!」 京太郎「トシさんごめん。少し出かけてくるよ」 トシ「まあ部屋の中にいてもしょうがないしね。二人とも気をつけていってらっしゃい」 京太郎「!!ありがとう、行ってきます」 コンコン 京太郎「すいませーん!」 ガチャ 部長「おう、どうした?」 京太郎「すいません部長、健夜を呼んでもらっていいですか?」 部長「ん?あ、ああ、分かった。少し待っててくれ」 しばらくすると、いかにもらしい格好で現れた 京太郎「ちょ、おま…花の女子高生が学校のジャージはないだろう…」 健夜「ほ、ほっといてよ!」 京太郎「出鼻くじかれたが、まあいいや。健夜、今日は暇あるか?」 健夜「うん、まあ…でも、どうして?」 京太郎「ええと、その……だな」 健夜「どうしたの?京太郎くんらしくない。もっとはっきり言ってよ」 京太郎「あー、一緒に出掛けないか?」 健夜「え、まだ先輩の個人戦残ってるから、副部長は行けないよ?部長だって――」 京太郎「いや、違う違う。俺は健夜と二人で行きたいんだ」 健夜「えと、それって……ももも、もしかして///」 京太郎「どうだ?」 健夜「ええええとね///!?もももちろん嬉しいんだけど……こっこ、こころの準備というものがありまして」アタフタ 副部長「もちろんオッケーよ」 健夜「え!?」 部員2「京太郎くんは10時に駅に待ち合わせね」 京太郎「別にホテルの前でもよくないですか?」 部員1「よくないよ!」 部長「初デートなんだから、待ち合わせからちゃんとしないとダメだろうが」 健夜「ででででデートって!?///」 部員1「すこやんはおめかしに時間がかかるから、そのうちに京太郎はデートプランでも練っておきな」 京太郎「そうですね、皆さんありがとうございます。じゃあまた後でな健夜」 健夜「え!?ちょとみんな勝手に――」 ガチャ 先輩達のおかげで健夜を誘うことができた 本当に感謝してもしきれないな ―駅前 現在9時45分、ホテルから程近い有楽町駅前に俺はいる 流石コンクリートジャングル東京、この時間からもうかなり暑い まあ元の時代の頃よりは幾分マシかもしれないが ??「お待たせ」 いきなり、かわいらしい女性に声を掛けられた 京太郎「えーと…どなたですか?」 ??「私だよ!?」 帽子を取って、よく見てみると… 京太郎「…ああ、健夜か。ごめん気がつかなかった」 気付かないのも無理は無い。朝のあのジャージ姿とのギャップがあまりにあったからだ 京太郎「いいじゃん……」ボソ 健夜「ん、どうしたの?」 京太郎「いや、なんでもない。その服似合ってるなって思って」 健夜「そ、そう//?実は先輩達から少し貸してもらったんだ」 健夜「さすがにそんなに荷物持ってきてないからね。助かったー」 先輩グッジョブ!! 京太郎「さ、時間がもったいない。行こうか」 健夜「どこ行くの?」 京太郎「まずは日比谷に映画を見に行こうぜ」 健夜「うん!」 今日は世間では平日ということになっている なのでそこまで混んでいなく、10分もすると映画館に着くことができた 健夜「何見よっか?」 京太郎「そうだなー」 えーと…この時間やっているのは 『千と千○の神隠し』『ダンサー・イ○・ザ・ダーク』『ファ○ナルファンタジー』 なんか偏ってるなーこの映画館… 健夜「この『ダンサー・○ン・ザ・ダーク』っていいんじゃなかな?」 健夜「『弱視の女性と息子との日常を描いたほのぼの感動作!!』らしいよ」 京太郎「それだけはいけない」 健夜「え?」 京太郎「それだけはいけない」 健夜「う、うん。分かった…」 健夜「じゃあこれは、『ファイ○ルファンタジー』」 健夜「『制作費1億3,700万ドルの超大作!世界初のフルCG映画をご覧あれ!!』だってさ、どう?」 京太郎「だめだだったんだ…」 健夜「なにが!?」 京太郎「回収できなかったんだよ…」 健夜「そ、そう…」 京太郎「健夜『千と○尋』にしよう、これはもう運命なんだ」 健夜「ま、まあ、京太郎くんがそこまでいうなら…」 _________ _____ __ いやー、やっぱりいい映画は何度見ても楽しめる 今見ても最新の映画と遜色ないどころか、むしろ新しい発見があるくらいだ 京太郎「どうだった?」 健夜「うーん、すごい良かったよ」 健夜「主人公の成長が軸になってるけど、脇役の活躍も欠かせない」 健夜「ジブリ独特の煌びやかな装飾とか、素朴でいて安心できる自然の風景も素晴らしかったし」 健夜「そして最後は千尋の成長からカタルシスを感じることができる」 健夜「とてもいい映画だったんじゃないかな」 京太郎「実に女子高生らしくないレビューをありがとう」 健夜「ふんっ!どーせ私は女の子らしくないですよ!」プイッ 京太郎「怒るなって」 健夜「…でも」 京太郎「ん?」 健夜「あの後、千尋とハクはまた会えたのかな?京太郎くんはどう思う?」 京太郎「そうだな……」 健夜「?」 京太郎「俺はまた会えると思う」 健夜「どうして?」 京太郎「俺だったらまた会いたいと思うから」 健夜「京太郎くん、意外とロマンチストなんだね」 京太郎「男の子はいつでもロマンを求めている生き物なのさ」キリッ 健夜「うわっ……」 京太郎「うわっ、とはなんだ。うわっ、とは…」 京太郎「そういう健夜だって、最後の方ちょっと泣いてたじゃねえか」 健夜「き、気のせいだから!」 京太郎「はいはい、そうですね」 健夜「バカにしてるっ!?」 京太郎「いいえ、滅相もございません。健夜お嬢様」 健夜「……今度は何?」ジー 京太郎「なんでもございません。さ、時間も時間ですしお昼にいたしましょうか」 健夜「それ続けるんだ!?」 お昼は近くで済ませてしまった 少し歩けばほとんど何でも揃ってしまう。東京とは恐ろしい街だぜ、まったく そして俺達が次に来たところは… 健夜「見て見て!この通りにあるのほとんど本屋さんなんだって!!」 そう本好きは避けては通れない町、神保町だ だが本だけではない。御茶ノ水の方に行けば楽器屋、スポーツ用品店が立ち並び さらに少し歩いて秋葉原まで行けば電子部品から同人誌までそろってしまう いわば、ここら一帯はマニア・オタクの聖地と言えるかもしれない 健夜「すごい!ネットでしか見たことがないような本がこんなにいっぱい!!」 健夜「うわー、ここに住みたいくらいだよ~」 健夜「ねえねえ、京太郎くん。もしかしてあれが噂の書泉グランデかな?」 京太郎「あ、ああ。そうなんじゃないかな…」 健夜「行ってみようよ!ほらっ!!」 京太郎「はいはい」 健夜「このエレベーターはね、R.○.Dっていうアニメにも出てくる場所なんだ」 健夜「それだと地下に行けるようになってるんだけど、流石に無理みたいだね」 京太郎「確かに、エレベーターの底が見えちゃってるもんな」 健夜「あの読子・リードマンもこのエレベーターに乗ったのかと思うと…」 健夜「うぅ~、感動だよ!」 健夜「あ、書泉の本棚って大型店にしては珍しく、いまだに木製の本棚なんだ」 健夜「なんだかレトロでかっこいいね」 健夜「さ、次は神保町のランドマーク、三省堂に行くよ!」 京太郎「りょーかい」 健夜「こ、これはすごいね…驚いたよ」 健夜「このビル全部に本が詰まってるんだよ?まさに本の山だよ!!」 健夜「雑誌、新刊、小説、漫画、理系専門書からさらに洋書まで扱ってるなんて…」 健夜「すごすぎるよ、感動だよ!」 健夜「聞くところによると、池袋にはジュンク堂というラストダンジョンまであるんだから……」 健夜「東京は本当に恐ろしい所だよ…」 京太郎「さいですか」 神保町に着いてから、実に一時間以上はしゃぎっぱなしだった まあ楽しんで貰えたようでなによりだ 流石に真夏の移動で疲れたので、近くの喫茶店で少し休むことにした 健夜「ご、ごめんね…ちょっと買いすぎちゃった」 京太郎「気にすんな、荷物持ちなら慣れてるから」 健夜「それってどうなの…」 京太郎「それに、デート中女の子に荷物持たせるわけにはいかないだろ?」 健夜「そ、そうかもね///」 健夜「でも、なんでこういう場所をを選んだの?」 健夜「京太郎くんなら、ディ○ニーランドとか行くのかなー、とか勝手に思ってたんだけど…」 京太郎「おいおい健夜…ディ○ニーランドに行きたかったのか?」 健夜「ムリムリ!絶対無理!!あんなキャピキャピした空間なんて絶えられないよ!」 健夜「最悪、穴という穴から砂糖吐いて気絶するよ!!」 京太郎「何その気持ち悪い妄想……」 京太郎「まあ、でもそうだろ?だから敢えて落ち着いた場所を選んだんだよ」 京太郎「それに本好きなのは前から分かってたしな」 健夜「私のことちゃんと考えてくれてたんだ……ありがとう」 京太郎「どういたしまして」 京太郎「さ、十分休んだし、最後にもう一つだけ行こうぜ」 健夜「ここは?」 京太郎「上野恩賜公園――いわゆる上野公園だな」 健夜「へえー…あ、見て、かえるの噴水がある。かわい~」 まずは基本に沿って、交番横の入り口から入る そのまま左側を真っ直ぐ進んでいく 人がまばらなので非常に快適だ 健夜「うわー、大都会のど真ん中にこんなに緑がたくさんあるなんて…すごい不思議」 京太郎「たしかにそう考えるとすごいよな」 ちなみにここは、1873年に日本初の公園に指定された歴史的な公園だ ボードウィン博士という人がこの場所を公園として残すように働きかけたのがきっかけだそうだ 実際にボードウィン博士の銅像は噴水池の横にある 俺達がここでデートをすることができるのもこの人のおかげなのだ。感謝しないとな 健夜「すごい数の桜の木だね、春に来れたらもっと綺麗だったかも」 うーむ、確かにその通りかもしれないが、決しておすすめはできないだろう 何しろあの時期のここら辺はまさに人、人、人のどんちゃん騒ぎ 酒飲みの人間や至るところに散ったごみ等見るに耐えない 健夜「ふうー、やっと桜並木を抜けたね。ん、あれは何の建物かな?」 京太郎「正面にあるのは東京国立博物館だな」 健夜「へえー、ここから見ると左右対称になってて綺麗だね」 健夜「それに荘厳というか、趣を感じるよ」 東京国立博物館もまた日本最古の博物館である 健夜の言っていた建物は本館で、和洋折衷の様式となっている 主に日本及び東洋の文化財を取り扱っているのが特徴だ 歴史好きにはたまらないかもしれないが、そうでない人にとってその展示は退屈なものかもしれない しかし本館については均整の取れた非常に美しい構造をしていて、思わずため息がこぼれる これだけでも見る価値があるかもしれない また、アニメ映画『時をかける少女』ではここが舞台の一つとなっている 魔女おばさんこと芳山和子はここに勤めていることになっているのだ そして間宮千昭が見に来たと言う「白梅ニ椿菊図(はくばいにつばききくず)」はここのものだった もちろんこの絵は実在しないものだが 健夜「あ!あれが上野動物園なんだ」 京太郎「そうらしいな、行きたいか?」 健夜「うーん、動物園なら茨城にもあるし、せっかくだから別のがいいな」 京太郎「そうか。なら博物館と美術館だったらどっちがいい?」 健夜「それだったら美術館かな、博物館の展示ってなんだか苦手なんだよね」 京太郎「それは分かる、歴史とか好きならまた変わってくるのかもしれないけどなー」 健夜「で、どこにあるのかな?」 京太郎「あっちだな」 健夜「ああ、あの四角い建物だね。変わった形してるんだ」 健夜「あ!あれってもしかして有名な『考える人』かな」 京太郎「そうだな、オーギュスト・ロダンの彫刻だな」 健夜「あれ?でも前にテレビで見たのは別の場所だったような…」 京太郎「ああ、ロダンの『考える人』は世界中にたくさんあってその一つがこれなんだよ」 健夜「へえー、一つじゃなかったんだ」 京太郎「そゆこと。しかし暑いな、さっさと中入ろうぜ」 健夜「そうだね」 建物の中に入ると、その無機質な外観と相まってかとても涼しい さっそく受付で常設展のチケットを購入し、展示を見ていく 健夜「すごい繊細…布と肌の質感が本物かそれより綺麗に見えるよ」 京太郎「ドルチの『悲しみの聖母』だな」 京太郎「この美術館の絵画の中でも特に人気の高い作品だ」 京太郎「実際一目でその美しさは分かるし、何度でも見たくなるよ」 健夜「ふーん、そうなんだ」 健夜「私さ、こういう分かりやすいというか、一目で綺麗ってわかる絵のよさは理解できるんだけどさ」 健夜「宗教画の楽しみ方がよく分からないんだけど…」 京太郎「宗教画かー……うーん」 京太郎「俺もよく分からないだよな、宗教画」 健夜「そうなの?」 京太郎「ぶっちゃけて言えばさ、宗教画って聖書の二次創作だろう?」 京太郎「分からなくても無理ないと思う」 健夜「あはは、ひどい言い様」 京太郎「それだったら、俺はこっちのルノワールとかモネの作品が好きだな」 健夜「この女の人の絵は見たことあるよ、名前は知らないけど」 京太郎「『帽子の女』だな。光の描き方がすごいよな」 京太郎「ルノワールはかなり親しみやすい画風なんで、世界的に人気の画家だ」 京太郎「んでこっちのがモネの作品だ」 京太郎「モネもルノワールも同じ印象派だけど、それぞれ個性があっておもしろいよな」 健夜「そうだね、でもどちらかというと私は――」 そんな他愛の無い会話をしていると、あっという間に時間が経っていった 展示物も大体見終わったので外に出ると、もう日が落ちてかなり暗くなっていた 京太郎「そろそろ帰るか」 健夜「うん、そうだね」 健夜「あ、見て!噴水がライトアップされてるよ、綺麗…」 京太郎「…せっかくだから見ていこうぜ」 健夜「いいの?ありがとう」 噴水の近くにベンチが備え付けてあったので、二人でそこに腰掛ける 健夜「今日はありがとう、とても楽しかったよ」 京太郎「どういたしまして。でもこういうの実は初めてだったからさ、正直緊張したよ」 健夜「そ、そうなんだ……じゃ、じゃあ初めて同士だね///」 京太郎「そういうことになるのかな//」 健夜「///」 京太郎「はは…」ポリポリ 健夜「私…」 京太郎「ん?」 健夜「私、京太郎くんには本当に感謝してるんだ」 京太郎「どうした、いきなり」 健夜「いきなりじゃないよ、いつもそう思ってるんだ」 健夜「入学式の日、京太郎くん、私に話しかけてくれたでしょ?」 健夜「正直あの時は、「金髪不良少年が私になんの用!?」って思ったよ」 京太郎「金髪…はその通りだけど、不良少年っておい!」 健夜「はは、ごめんごめん」 健夜「でも誰も私に話しかけない中、京太郎くんは何度も私にかまってくれたよね」 健夜「少しずつだけど、京太郎くんとも普通に話せるようになって…」 健夜「家族以外でそんな仲になったのは初めてだったんだよ?」 京太郎「……」 健夜「そんな時、麻雀部に誘われて、先輩達もいい人ばかりで…」 健夜「学校の中に居場所があると、登校するのがとても楽しくなるんだね。初めて知ったよ」 京太郎「……」 健夜「文化祭なんて、今までの私にとってはただの苦痛な行事の一つだったんだ」 健夜「でも真面目に参加して、皆と一緒に準備すると、楽しいものになるんだって気付いたよ」 健夜「京太郎くんのおかげで、クラスの女の子達とも仲良くなれたしね」 京太郎「…俺は何もしてないよ。健夜には魅力があって、誰かがその事に気付いただけさ」 健夜「ううん、そんなことない」 健夜「その後は大会に出たり、海に遊びに行ったり、合宿したり、色んなことがあったね」 健夜「そして今は、京太郎くんとここにいる」 健夜「なんだか、この何ヶ月かは私にとってはずっとジェットコースターに乗ってる気分だったよ」 健夜「京太郎くんがいなかったら、絶対こんなことになってなかったと思う」 健夜「だから、本当に心から感謝してるんだ。ありがとう」 健夜「えへへ……なんだかこういうのって恥ずかしいね///」 京太郎「そうだな」 健夜「京太郎くん…」 京太郎「健夜…」 健夜の手に、自分の手を重ねる。暖かい だんだんと二人の距離が近づいてゆく、そして――― 「あれは何をやっているのでしょう、マム」 「ノーウェイノーウェイ、あなたにはまだ早いわ」 「それにしても最近の高校生は進んでるのね~、ママとパパなんか――」 京太郎・健夜「!!」バッ 京太郎「……」 健夜「……」 京太郎「か、帰るか//」 健夜「そ、そそそそうだね//////」 京太郎・健夜「はぁー…」 健夜「ね、ねえ、京太郎くん」 京太郎「なんだ?」 健夜「来年もまた、一緒にここに来ようね」 京太郎「……そうだな」 健夜「?」 上野駅から電車に乗り、宿泊先のホテル近くの駅まで戻ってきた 京太郎「ふうー、結構疲れたな」 健夜「一日中動き回ってたからねー」 京太郎「この荷物のせいじゃないんですかねえ…」 健夜「そ、それは悪いと思ってるよ!」 京太郎「はいはい」 健夜「もうっ!」 健夜「あ、そうだ。ちょっと買わなきゃいけないものがあるんだった」 京太郎「そうなのか?だったら付き合うよ」 健夜「いいよ、もうホテルまですぐそこだし。一人で大丈夫」 京太郎「そうか?」 健夜「うん、今日はありがとうね、とても楽しかった。またね明日ね」 京太郎「おう、また明日」 そう言って、健夜は向かいの交差点を歩いて渡って行く 信号は青、人はまばら、夏の日差しが道路を照らしている えっ?夏の日差し? 今は夜だったよな? あれっ? なんだこの映像 いや、この光景……前にも…どこかで そうだ……この後……確か…車が来て…それで… 「あぶなーいっ!!!!」 京太郎「ッ!!」 荷物を捨てる、全力で走る 健夜を抱き寄せ――歩道に倒れこんだ 京太郎「大丈夫か!!」 健夜「ッ!?え?え!?」 混乱しているようだが、見たところ目立った外傷は無いようだ よかった、本当によかった… _______________________ _____________ ____ 京太郎「落ち着いたか?」 健夜「うん、なんとか……」 結局、信号無視した車は俺達のとなりを通り過ぎ、ガードレールにぶつかって停止した その後、救急車とパトカーが来て一時辺りは騒然となった 俺達は警察の人に事情を説明し、救急隊員の人にも簡単に診てもらった 京太郎「ごめんな、健夜の本ばら撒いちまって」 健夜「ううん、そんなのいいよ。それに本はきれいにすればまた読めるしね」 京太郎「そうだな…」 京太郎「歩けそうか?」 健夜「うん、余裕だよ!!」ガクガクガク 京太郎「いや、だめだろ!?生まれたての小鹿みたいになってるぞ」 京太郎「ほら」 健夜「なに、その格好は?」 京太郎「ホテルまでおんぶしてやるから、乗れ」 健夜「い、いや、いいって。恥ずかしいし…」 京太郎「それで転んで怪我したら大変だろ?な、頼む」 健夜「う、うん…そうだね。じゃあお願いしようかな」 京太郎「よっこいしょ、っと」 健夜「ど、どうかな」 京太郎「どう、って?」 健夜「その……重くないかな?」 京太郎「いや、全く。むしろ軽すぎるくらいだな」 京太郎「それに幸いなことに、背中にあたるものがないから気を遣わなくていいしな」 健夜「」グイッ 京太郎「ちょ、やめ!しまってる、しまってるからっ!!」 健夜「まったく、京太郎くんはいちいち他人をからかわないと死んじゃう人なのかな!?」 京太郎「まあな、でも健夜限定だぞ?」 健夜「余計性質が悪いよね!?」 京太郎「冗談だよ」 健夜「もうっ!」 健夜「でも……」 健夜「さっきはありがとう。とってもかっこよかったよ」 京太郎「う、なんだか照れるな//」 健夜「でも、あんな危険な真似もうしないでね?」 健夜「京太郎くんがいなくなったら、私……」 京太郎「……安心しろ、俺はちょっとやそっとじゃ死なないから」 京太郎「それに、そんな約束はできないな」 健夜「え」 京太郎「健夜のピンチは、俺が必ず助けるから」 京太郎「だからどんな時間にどんな場所にいようと、跳んで助けにいくよ。必ず」 健夜「よ、よく、そんな恥ずかしいセリフを……///」カァァ 健夜「で、でも…ありがとう。覚えておくよ…///」ボソボソ 京太郎「ああ、そうしてくれ」 ________ _____ __ 京太郎「……」 京太郎「……」 健夜「…zzz」スースー 京太郎「寝たか…」 まあ、無理もない。ただでさえ疲れていたのに、あんなことがあったのだ 京太郎「……」 京太郎「なあ、健夜。俺思い出したよ」 京太郎「あの日、あの時、何があったのか」 ――8月上旬 インターハイ 神代さんとの面会日 京太郎「ここか…」 トシさんに渡された地図を頼りに、神代さんが待つ旅館に到着した 東京のど真ん中にもこんな立派なものがあるんだなあ 受付の人に名前を告げると、すぐに部屋まで案内された。話は通っていたのだろう 京太郎「失礼します」 中に入ると、40代くらいの男性が座っていた もっと厳しい雰囲気の人を想像していたが、この人からそういうのは感じられない 京太郎「こんにちは、神代さんですね。今日はよろしくお願いします」 神代「こんにちは、よく来てくれたね。ささ、座りなさい」 _________ ______ __ 神代「うーむ、何から話そうかねえ」 神代「まあ、まずはタイムリープとはどういうものなのか話そうかな」 神代「熊倉さんから聞いてるかもしれないけど、これは自体は別に珍しくはないよ」 神代「私の経験から言うと、若い人に多いと言えるかな」 神代「ほら、君も若いでしょ。ま、理由はよく分からないけど」 神代「で、タイムリープの現象はね、トンネルを考えると分かりやすいかなあ」 京太郎「トンネルですか?」 神代「そそ。でも普通のトンネルじゃないよ、ある時空を別の時空を結ぶトンネル」 神代「君はそのトンネルを通ってきたってわけ」 京太郎「そのトンネルはどうやってできるんですか?」 神代「うーむ、実はトンネルには2種類あってね」 神代「一つは元々そこにあるもの、けどこれは普通の場所にはないんだ」 神代「少なくとも、君みたいな高校生が行くようなところには無いと考えていい」 神代「もう一つは、突発的に新しくトンネルができるタイプのものだね」 神代「原因は様々で、人によるもの、自然現象によるもの、あとはオカルトとかかな」 京太郎「……人によるもの、って例えばどんなのですか?」 神代「そうだねえ、突発的に感情が大きく変化するのが原因であることが多いかな」 神代「例えば、生命の危機に直面するような事故に遭遇したときとかね」 神代「ほら、映画とか小説でよくあるような」 神代「さらに言うと、オカルト持ちの人がそういう目に会うとなりやすいと思うよ」 京太郎「逆に言えば、オカルト持ちでなければタイムリープはしにくいと?」 神代「あくまでそういう傾向にあるだけだけどね」 神代「でも君は今のところは、オカルト能力を持っていないだろう?」 神代「だから君の場合は、他の人間のオカルト能力が関係している可能性は高いね」 なるほど 神代「まあ君の場合、12年も跳躍したんだ。相当強力なオカルト能力者が関係しているのかも」 京太郎「あの、それで…肝心の帰り方なんですけど」 神代「そうだったね、それが一番重要だよね」 神代「でも、その答えはすごく簡単だよ。あるものを持っているだけでいいんだ」 京太郎「あるもの?」 神代「"心の底から帰りたいたいという気持ち"。要は気分しだい…」 神代「逆に言うとね、京太郎くん、君は心の底では帰りたくないと思っている」 神代「そうなんじゃないかな?」 京太郎「そう……かもしれません」 神代「まあ、君にも事情があるのだろう。詳しくは聞かないよ」 神代「ただね、だからといって未来を変えようとはしてはいけないよ」 京太郎「なぜです?」 神代「これも熊倉さんから聞いてるかもしれないけどね、歴史を変えるのにはリスクが伴う」 神代「そして、たとえ改変がうまくいったとしてもその埋め合わせはいつか必ず来るよ」 神代「どういう形で、とまでは分からないけどね」 やはり、未来を変えるのはだめみたいだな ならば、自分の力でなんとかするしかない 神代「あと、なるべく早いうちに帰ったほうがいいね」 神代「この時代にいればいるほど、君のこの時代での存在が大きくなる」 神代「そうすれば、未来での不確定性もどんどん増していくだろう」 京太郎「どういう意味ですか?」 神代「うーん、例えば熊倉さんは、未来では君のことを知らなかったのだろう?」 神代「だが、この時代では既に君のことを知ってしまっている」 神代「つまり、君の知っている未来とこの時代が辿る未来には明らかに矛盾が生じてしまっている」 神代「このくらいのごくごく小さな矛盾ならまだいいんだけどね」 神代「だけど、君がここで過ごば過ごすほど、その矛盾は看過できなほど大きくになってくる」 京太郎「そうなるとどうなるんですか?」 神代「分からない…だけどそれが善いものであるとはとても思えないね」 京太郎「……」 神代「もしかしたら、ドクの言ってたみたいに銀河が消滅しちゃうかも。なーんて」 京太郎「??」 神代「あ、ごめん。分からないよね」 神代「これがジェネレーションギャップかあ、歳はとりたくないものだねまったく」 京太郎「はあ…」 神代「聞きたいことはもうないかな?」 京太郎「そうですね……何か、向こうに持っていけるものはないんですか?」 神代「それは無理だね。来たときの格好でしか帰れないから」 京太郎「そうですか…なら、帰る時間と場所は選択できるんでしょうか?」 神代「それも無理。SFみたいにそんなに便利なものでもないんだよね」 神代「だから、タイムリープした瞬間にしか戻れないよ」 京太郎「そう…ですか。ありがとうございました」 神代「……じゃあ最後におじさんから一つアドバイス」 神代「君みたいな悩み多き青少年には、時としてどうしていいか分からないときがあると思う」 神代「そういう時、自分の頭で考えることは何よりも重要だろう」 神代「だが、考えすぎて、理屈を優先して、自分の気持ちを忘れてはいけない」 神代「だから、最後の最後は自分の気持ちに素直になってみるといい」 トシさんも、同じこと言ってたな 京太郎「そうですね、ありがとうございます」 神代「さ、若者はとっとと帰った帰った!」 神代「年寄りの説教ほど、聞くに堪えないものはないから」 ――8月上旬 インターハイ 女子の個人戦が終了した 結果は副部長が三回戦敗退、本人は楽しかったと喜んでいた ついに俺達の夏が終ったのだ 祭りの後はいつも寂しい、でもこの祭りはとても楽しかった またいつか今度こそ、俺も参加してやろう そうすれば、咲や部長も喜ぶだろう そのときは健夜も喜んでくれるだろうか? ――8月中旬 部活 インターハイが終ったとはいえ、部活動自体は続いている 先輩達は事実上引退なのだが、それでも部活には顔出してくれる まあ、先輩達がいなくなると俺と健夜だけになるから助かるんだけどね 部員1「ふぃー、終った終わった。このままどこか遊びにいかねー」 部長「アホ、受験に備えて勉強するべきだろうが」 部員2「といいながら、未だに部活に来ている部長であった」 部長「うっ!それは、その…たまには息抜きも必要であってだな…」オロオロ 部員1「おしっ!なら遊びに行こう、そうしよう」 部員1「すこやんも行くよな!?」 健夜「はい、せっかくだから」 副部長「京太郎くんはどうかしら?」 京太郎「えーと、実はちょっと用事がありまして……」 健夜「えっ!?」 副部長「あら、そうなの?」 部員2「この前もそんなこと言ってたよね」 部員1「私たちに隠して何を企んでいるのやら…」 京太郎「そ、そんなんじゃありませんよ」 部員1「ほんとかな~」 京太郎「あっ!もうこんな時間だー(棒)お先に失礼します!」ダッ 健夜「……」 ガラガラガラ ふうー、危ない危ない。あんまり追求されるとボロが出かねないな さて、家に帰って着替えて、さっさと行かないとな ―次の部活の日 健夜「一緒にかえ――」 京太郎「銀河の歴史がまた1ページ」ダッ ―次の次の部活の日 健夜「今日は大丈――」 京太郎「それでは次週をご期待ください。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ…」ダッ ―次の次の次の部活の日 健夜「……」 京太郎「次回も健夜といっしょにレリーズ!」ダッ ガシッ 健夜「ちょっと待とうか」ニコ 京太郎「ナ、ナニカナ、スコヤサン…」 健夜「最近何かコソコソしてるみたいだけど、どこで何をしてるのかな」ニコニコ 京太郎「エ、イヤ、ソノデスネ…」 健夜「もしかして私に言えない様な事なのかな」ニコニコ 京太郎「ソウイウワケデハ…」 健夜「別にね、京太郎くんのこと信用してないわけじゃないんだよ?」ニコニコ 健夜「でもね、もうすこし私のこと信用してほしいかなー、なんて」ニコニコ 京太郎「オッシャルトオリデ…」 健夜「だいだいね――」クドクド 部長「あ、あれがいわゆる修羅場ってやつなのか?」ドキドキ 部員2「ちょっと一方的だけどね」 部員1「すこやんは意外と尻に敷くタイプだね、ありゃあ」 副部長「愛が深いのも考え物ねえ」 京太郎「」 健夜「」 健夜「んん…//で、結局何をしてるの?」 京太郎「すまん、今はちょっと言えないんだ。でもじきにに分かると思う」 京太郎「それまで待ってもらえるか?」 健夜「うん…」 京太郎「お詫びじゃないけどさ、今度また二人で遊びに行かないか?」 健夜「え、いいの?最近忙しいんじゃない?」 京太郎「大丈夫大丈夫!俺も健夜と一緒に出掛けたかったからな」 健夜「そ、そうなんだ…だったらいいよ///」 京太郎「じゃあ、来週の水曜日はどうだ?」 健夜「うん、その日なら大丈夫」 京太郎「よかった。詳しいことはまた後でな。もう行かなきゃ」 健夜「うん、分かった。いってらっしゃい」 京太郎「ああ、行ってきます」 部長「まるで夫婦だな」クス ――8月下旬 デート前日 京太郎「うーん、どうするか…」 デート前日だというのに、未だに俺はどこに行くのか迷っていた 京太郎「だいたい茨城県民って、どこにデートに行くんだよ…」 京太郎「何も無いじゃん、何も無いじゃん!」 ついには考えあぐねて、机の整理をし始めてしまった これはあれだ、テスト前に部屋の掃除をしたくなってしまう例の… パラ… 京太郎「ん?何だ、これ」 『アクアワールド 前売り券』 京太郎「これは、確か…」 以前、健夜のお母さんから頂いたものだ 京太郎「はは、なるほどね…」 もし…仮に、運命と云うものがあるとしたら、こういうことをいうのかもしれない 京太郎「決まりだな」 ――8月下旬 デート当日 さて、服装オッケー、財布オッケー、ハンカチとティッシュは持った えーと後は…… あっ!危ない危ない、大事なものを忘れるところだった これを忘れると、この2週間の努力が水の泡になってしまうからな 京太郎「じゃあ、行ってくるよ」 トシ「ああ、気をつけてね」 京太郎「あー……トシさん」 トシ「ん?」 京太郎「いつも、ありがとう」 トシ「ふふ、こちらこそ」 トシ「さあ、行ってらっしゃい」 待ち合わせ場所の駅前に向かう そこには既に、かわいらしい姿をした女の子がベンチに座っていた 京太郎「おはよう」 健夜「あ、おはよう!」 京太郎「すまん、待たせちまったみたいだな」 健夜「ううん、私も今来たところだから…………ハッ!!」 京太郎「……」 健夜「……」 健夜「普通逆だよね」 京太郎「だな」 京太郎「でも、俺の『人生で一度は体験したみたい事』第6位を経験できたからいいや」 健夜「なにそれっ!?ていうか1位から5位はどうなってるのそれ!?」 京太郎「さ、早く行こうぜ。電車に乗り遅れちまう」 健夜「え、ちょっと待ってよ。すごく気になるんだけど!?」 ___________________ ___________ ____ 電車で水族館近くの駅まで来て、今はバスに乗っている 天気は見事な晴れ。海の景色も素晴らしい 健夜「ここの水族館来るの久しぶりだよ。小学生のとき以来かなー」 京太郎「俺も水族館なんて、学校の遠足で行ったきりだと思う」 健夜「へえ、確か京太郎くんて長野出身なんだよね?」 健夜「長野県に水族館なんてあるの?」 京太郎「失礼な、一応あるぞ。そんなに大きくなかったけどな」 京太郎「それより、冬になると遠足でよくスキーをしに行ったりしたなあ」 健夜「いいなあ、私の所なんか普通に近くの公園に行ったりしただけだったもん」 京太郎「まあそれは雪国の特権ということで…」 京太郎「でも、雪ってそんなにいいものでもないぞ?」 京太郎「道路だけじゃなく、屋根に上って雪を落とさなきゃならんし」 京太郎「子供のころは雪のせいでよく転んだし」 京太郎「近くに買い物に行くにも一苦労だし…」 京太郎「でも、小さい頃は雪が降るとそれだけではしゃいだりしてたっけか…」 京太郎「今では、雪が降ると『めんどくせー』としか思わないのにな」 健夜「あはは、そうかもね」 健夜「でもそのおかげで、スキーとか滑れるようになったんでしょ?」 京太郎「まあな」 健夜「じゃあ、いつか私に教えてよ。実はまだしたことないんだ」 京太郎「……」 健夜「京太郎くん?」 京太郎「…そうだな、いつか必ず」 健夜「?」 京太郎「おっ、見えてきたな。あれがそうなんじゃないか」 健夜「あの大きい建物?前に来たときと違う気がするんだけど…」 京太郎「ああ、なんだか今年リニューアルオープンしたらしいぞ」 健夜「そうなんだ、楽しみだね!」 _________ _____ __ 京太郎「どうする健夜、微妙な時間だし先にお昼ごはん食べないか?」 健夜「う、うん。そうだね…」 京太郎「中にフードコートあるし、行こうぜ」 健夜「……」 京太郎「どうかしたか?さっきから口数少ないけど」 健夜「え、えーとね……その…」 京太郎「?」 健夜「こ、これっ!!」ズイッ 京太郎「ん?見ていいのか……お弁当じゃん!」 健夜「……」コクコク 京太郎「これ、健夜が自分で作ったのか?」 健夜「うん。いちおう…」 京太郎「俺の分もあるのか?」 健夜「も、もちろんだよ//」 健夜「というより、京太郎くんのために作ったというか……」ボソボソ 京太郎「?」 健夜「さ、向こうに机と椅子あるし行こっ!」グイッ 京太郎「お、おう」 早速健夜の作ったお昼ごはんを机の上に広げる 主食とおかずがバランス良く敷き詰められている さらにフルーツまで用意してあり、盛り付けもなかなか綺麗だ 京太郎「おお、意外とうまそうじゃん!!」 健夜「意外とは余計だよ!?」 健夜「でも京太郎くんの舌には合わないかも…」 京太郎「え、なんでだ?」 健夜「ほら、京太郎くんってお料理得意でしょ?それに比べて私はヘタクソだし……」 京太郎「あはは、それはそうかもな」 健夜「ひどいっ!」 京太郎「でもいいんだ、健夜の作ったご飯を食べられるだけで」 健夜「そ、そう///」 京太郎「さ、食べようぜ」 健夜「うん」 モグモグ 健夜「どうかな…」ジー 京太郎「うん、10段階評価でいうと4ってところだな」 健夜「それは喜んでいいのかな…」 京太郎「なに、これからどんどん上手くなっていけばいいさ」 京太郎「それより俺は、健夜の作ったものを食べられるだけで嬉しいから」 健夜「うっ…あ、ありがと//」 京太郎「うーん、でもこの味付けどこかで……健夜、これお母さんに手伝ってもらったろ?」 健夜「な、なぜそれを…」 京太郎「この煮物の味付けなんて健夜のお母さんのにそっくりだし、こっちの照り焼きだって――」 健夜「え、え、なんでそんなこと知ってるの?」 京太郎「ああ、言ってなかったけ?」 京太郎「実はな…文化祭の後意気投合しちゃってさ、何度かおじゃまして料理について教えあったり」 京太郎「今どこのスーパーでどの品物が安いのか、とか話しながらお茶したり――とかしてたしな」 健夜「主婦の会話!?お母さんと仲良すぎない!?それに私そんなこと知らないんだけど!?」 京太郎「えー、だって健夜って土日はお昼過ぎまで寝てるじゃん?」 京太郎「俺その時間にしかいなかったからなあ」 健夜「」 京太郎「ん?どうした」 健夜「乙女の秘密を暴いてそんなに平然としてるなんて……」 京太郎「乙女て……」 健夜「もう、知らない!勝手に食べれば!!」ガツガツ 京太郎「はいはい、すいませんでした」 昼食を食べ終わり、少し休憩をとると、いよいよ水族館に入場した さすがリニューアルしたばかりなので、清潔感があっていい感じだ 健夜「見て見て、すごい大きな水槽…」 京太郎「ほんとにな。イワシの大群がすごいキラキラしてるな」 健夜「あはは、あそこで泳いでる亀見て!」 京太郎「魚に纏わりつかれてる、何してるんだろう?」 健夜「さあ、分からないけど、なんだかかわいいね…」 京太郎「すごいな、サメも一緒に泳いでるんだな……他の魚食べないのかな?」 健夜「水族館の魚は餌は足りてるから、基本的に襲ったりしないらしいよ」 京太郎「基本的には?」 健夜「うん、だからたまに襲ったりすることもあるんだって」 京太郎「へえー、他の魚からしたらたまったもんじゃないなそれ…」 健夜「ふふ、そうだね」 京太郎「しかし、水族館に来ると腹が減ってこないか?」 健夜「えー、ならないよ。なんで?」 京太郎「俺よく料理はするからさ、食材を見ると完成品が思い浮かんじゃって…」 健夜「食材って…」 京太郎「ほら、あそこのイワシなんてうまそうだろ?たたきにすると最高なんじゃないか」 健夜「うっ……確かに」 京太郎「あのブリなんかいいじゃないか、脂身が多そうだから照り焼きにするか鍋にするか…」 健夜「うぅ…」ゴクリ 京太郎「向こうの水槽の大きなエビはシンプルに刺身にしようかな。頭は鍋のダシにしよう」 健夜「……もうやめて!お腹空いてきちゃうよ!?」 京太郎「やっぱりなったじゃないか」 健夜「京太郎くんのせいだからね!?」 健夜「うー、もうまともな目で展示見れないよ…」 京太郎「はは、わるいわるい!」 京太郎「じゃあ、あまり食材っぽくないあっちの展示を見ようぜ」 健夜「えー、なになに……サメと…マンボウだね!」 健夜「確かに、これならお料理は想像しにくいもんね」 京太郎「ちなみにサメの肉は鶏肉に似ていて、マンボウも意外と全国各地で食べられ――」 健夜「もうやめてっ!?」 _________ ______ __ 健夜「すごいサメの数だね…それに何種類もいるみたい」 京太郎「なんでも、この水族館の一押しがサメとマンボウらしいぞ」 健夜「へえー、言うだけあって確かにすごい数…」 健夜「あ!あのサメかっこよくない?」 京太郎「どれどれ……ふーむ、メジロザメっていうのか。確かにかっこいいな」 健夜「でしょ!」 京太郎「なんというか、ロシアの諜報機関に所属していて暗殺とかやってそうな顔をしてるな」 健夜「やけに具体的だね…」 京太郎「そうだな、例えるならサメ界のプ○チンといったところか…」 健夜「それはいけない」 京太郎「おっと、そうだったな」 健夜・京太郎「……」 健夜「あ、あれなんかどうかな」 京太郎「えーと、レモンザメか。名前はかわいらしいが……目がイッちゃってるな」 健夜「…うん、そうだね。あんなの海で見かけたら間違いなくパニックになる自信があるよ」 京太郎「こっちはあれだな、シリアルキラータイプだな」 京太郎「さっきのは計画的に殺人を犯すのに対して、こっちは特に理由も無く犯行に及ぶに違いない」 健夜「ひどい言い様だね…まあ、分からなくもないけど」 京太郎「おい、またすごいのを発見したぞ、あれ!」 健夜「うわっ!すごい強面…歯がむき出しになっててこわっ!」 京太郎「あれは…シロワニっていうのか。サメなのにワニって…ひょっとしてギャグで言っているのか!?」 健夜「へえ、見た目はあんなのなのに、おとなしい性格で人もめったに襲わないんだって…」 京太郎「嘘付け!あの顔は絶対中南米のマフィアのボスをやってて、麻薬取引で金稼いでる顔だよ!!」 健夜「ああ…確かにそんな感じ」 _________ _____ __ 健夜「想像してたのと違う…」 京太郎「え、何が?」 健夜「なんていうか、もっとこう『かわい~!』とか『すご~い!』とか」 健夜「水族館てそういう楽しみ方をするものだと思ってたよ…」 京太郎「そうか?楽しいならいいじゃん」 健夜「私たち水族館に来て、料理の話とサメの犯罪者顔の話しかしてないよ!?」 京太郎「わがままだなー。じゃああっち行こうぜ」 健夜「えーと『愛くるしい海獣たちが待ってます』…か。よさそうじゃん!」 京太郎「おお、いたいた。アザラシにラッコかあ」 健夜「……」 京太郎「ん、どうした?」 健夜「かわい~!これだよ、これ!!私が求めてたのは!!」 京太郎「そうですか」 健夜「あのラッコかわい~!」 京太郎「二匹が手を繋いでるな。かわいいけど、なんでだ?」 健夜「ラッコはね、海面に浮いたまま寝るんだ」 健夜「で、そのとき離れ離れにならなないように手を繋いで寝るんだよ」 京太郎「なんだよそれ、可愛すぎるだろ…反則じゃねえか」 健夜「でしょ~」 京太郎「あっちにいるアザラシもかわいいな」 健夜「正確にはゴマフアザラシだね。少年アシベの『ゴマちゃん』と同じアザラシ」 京太郎「ゴマ、ちゃん…?」 健夜「少年アシベのゴマちゃんだよ、さすがに知ってるでしょ?」 京太郎「アア、アレネ。イマオモイダシタヨ…」 知らないとは言えない…これがジェネレーションギャップというものか…… 健夜「すごいムニュムニュしてそう、家に持ち帰って抱き枕にしたいくらいだよ」 京太郎「それは、あのアザラシがかわいそうだから止めた方が…」 健夜「ちょっとそれ、どういう意味っ!?」 健夜「向こうにいる鳥?なんだろう」 京太郎「えーと、なになに……エトピリカ、だと…」 健夜「知ってるの?」 京太郎「ん、まあな。エトペンのモデルになった鳥だろ?」 健夜「京太郎くん、エトペンなんか知ってるんだ…以外」 京太郎「ふふ、まあな…なにせ、世界一幸せなペンギンだからな」 健夜「どういう意味?」 京太郎「俺と代われっ!!と毎日思っていたってことさ…」トオイメ 健夜「?」 _________ ______ __ 京太郎「そろそろ時間だし、帰るか」 健夜「うん、そうだね」 京太郎「…なあ、今日は楽しかったか?」 健夜「うん、もちろん!」 京太郎「そうか、よかった。本当に…」 健夜「?」 京太郎「なあ、その……帰る前に少し話したいことがあるんだが」 健夜「帰り道の途中じゃだめなの?」 京太郎「ああ、大事な話なんだ」 健夜「!!」 健夜「そ、それって、ももももしかして…///」 京太郎「……あそこならゆっくり話せそうだな」 健夜「う、うん…//」ドキドキ 健夜「で、なにかな//」 京太郎「……」 京太郎「この4ヶ月いろいろあったよな」 健夜「なに、突然?まあ、そうだけど…」 京太郎「最初健夜と会ったときなんか、すげえビクビクしててさ」 京太郎「俺、こいつと付き合っていけるのか?って思ったもんだよ」 健夜「ひどい!そんなこと考えてたんだ」 京太郎「はは、すまんすまん」 京太郎「そういや、出会ってすぐの頃はよく本の話をしたっけか」 京太郎「健夜、普通に話すときはビクビクしてるくせに、本の事となると途端に饒舌になってたよな」 健夜「や、やめてよ…なんだか恥ずかしいから///」 京太郎「いろいろ健夜から本を借りて…結構読んだなあ。楽しかったよ、すごく」 健夜「そ、そう?ありがとう//」 京太郎「その後は、半ば無理やり麻雀部に誘ったけ」 京太郎「正直あのときのことは反省している、後悔はしていない」 健夜「後悔もしてよ、もう!」 健夜「ま、でも、そのおかげで色々な事が経験できたんだけどね…」 京太郎「そうだな、短い間だったけどすごい密度だったような気がするよ」 健夜「そうだね」 京太郎「他にもたくさんあったなあ」 京太郎「トシさんに弟子入りしたり、文化祭で馬鹿やったり」 京太郎「初めて大会で勝ち進んで、合宿で思いっきり練習もして」 京太郎「みんなで海水浴に行ったのも楽しかったなあ」 京太郎「あの時の健夜の水着姿、ほんとに可愛かったぞ」 健夜「あぅ…///」 京太郎「東京に行って、インターハイで応援して」 京太郎「健夜、ぜんぜん実力を出せなくて、めちゃくちゃ落ち込んでたよな」 京太郎「でも、最後の対局はほんとかっこよかったよ。びっくりするくらい」 京太郎「また、ああいうのを見てみたかったんだけどな……」 健夜「……え、それってどういう――」 京太郎「健夜、よく聞いてくれ」 京太郎「俺、転校しなきゃいけないんだ」 健夜「え?」 健夜「い、いきなり何言ってるの?」 健夜「あ!そうだ、またいつものくだらない冗談だね!」 京太郎「健夜……」 健夜「もう、京太郎くんは…さあ、帰るんでしょ?行こうよ」 京太郎「健夜…すまない。本当は最初から分かっていたことなんだ。いつかは帰らないといけないって」 健夜「もう、いいよ。そういう冗談は……だからやめて」 京太郎「でも、気付いたらあまりにもみんなと仲良くなっちまって、言い出せなかったんだ」 健夜「お願いだから…」 京太郎「すまない」 健夜「……なんでなの」 京太郎「すまん、それだけは言えない」 健夜「私にも?」 京太郎「健夜だからこそ、だ」 健夜「意味わかんないよ」 京太郎「だろうな」 健夜「……でも、転校しても、またすぐ会えるんだよね?」 京太郎「いや、もう会えないかもしれない」 健夜「~~ッ!!なにそれっ!意味わかんないよ、さっきからっ!!!」 京太郎「……」 健夜「……」 健夜「ねえ、今日さ…いつかスキーを教えてくれるって約束してくれたよね?」 京太郎「そうだな」 健夜「東京で、あの公園で…」 健夜「来年もまた、一緒にここに来ようって約束してくれたよね?」 京太郎「ああ」 健夜「あの事故の後……私がピンチのときは必ず助けてくれるって言ってくれたよね!?」 京太郎「……」 健夜「あれも全部嘘だったの!?」 京太郎「そうだ」 健夜「っ…!!」 健夜「馬鹿っ!!」ダッ 京太郎「……」 泣いてたな……大事な人を泣かせるなんて、我ながら最低だ 京太郎「いや、これで良かったのかもな」 ……ああ、結局渡せなかった、これ _________ _____ __ 京太郎「ただいま」 トシ「おや、おかえり。案外早かったんだね」 京太郎「…うん」 トシ「……」 トシ「どうしたんだい?」 京太郎「単刀直入に言うよ、トシさん。俺帰ることにしたんだ」 トシ「……そうかい。だから今日健夜ちゃんと…」 トシ「きちんとお別れはできたのかい?」 京太郎「どうだろう、正直よく分からないや」 トシ「京太郎のことだ、自分に対して未練が残らないように、冷たくあしらったんだろう?」 トシ「違うかい?」 京太郎「はは、トシさんには適わないな……ほんとに」 トシ「京太郎こっちにおいで」 京太郎「どうしたの、急に」 トシ「いいから、ほらっ」ギュ トシ「半年も一緒にいるのに、こうするのはこれが初めてだね」 京太郎「うん、そうだね」 トシ「京太郎、この半年間本当にありがとう」 京太郎「お礼を言うのは俺の方だよ」 トシ「そんなことないよ。あんたからは色んなもの貰ったんだから」 京太郎「それを言うなら、俺だってトシさんから色んなもの貰ったよ」 トシ「お互い様だね」 京太郎「そうだね」 京太郎「…いろいろ言うべきことがあった気がするんだけど、出てこないや」 トシ「ふふ、私もだよ」 京太郎「しばらく、このままでいい?」 トシ「うん」 その後、自分の部屋に戻り、荷物の整理をした だけど、それもあっけなく終ってしまった まあ、半年程度ならこんなものなんだろう 結局、麻雀部の先輩やクラスメイトにはお別れを言わなかった たとえ言ったとしても、理由を聞かれて、返答に窮するだけだ 寂しいが、仕方がないのかもしれない 半年振りに清澄の制服に袖を通し、玄関に向かう トシ「なかなかきまっているじゃないか、似合ってるよ」 京太郎「ありがとう、なんだか照れるね」 京太郎「あー、あと悪いんだけど、これを健夜に渡しておいてくれないかな」 京太郎「本当は最後に渡すつもりだったんだけど」 トシ「これは……分かったよ、必ず」 京太郎「学校のこととか、色々と後始末をしてもらうのは申し訳ないんだけど…」 トシ「何言ってるのさ、大人に迷惑をかけるのも子供の仕事の内だよ」 京太郎「そう言ってもらえると助かるよ、ありがとう」 京太郎「あと、これ。トシさんにも」 トシ「なんだい?やけに大きいね……あらっ?」 京太郎「料理の練習でだいぶ磨耗しちゃったから、新しい調理器具を買ったんだ」 京太郎「どうかな…なるべく良さそうなのを選んだんだけど」 トシ「うれいしいよ、ありがとう京太郎。でも高かったろうに…」 京太郎「今月短期のバイトで稼いだからね、どうってことないよ」 京太郎「それより、俺がいなくなってからもカップラーメンは控えてほしいかな」 トシ「ふふ、善処するよ」 京太郎「もうっ」 トシ「……」 京太郎「……」 トシ「行くのかい?」 京太郎「うん」 トシ「帰りは?」 京太郎「少し遅くなるよ」 トシ「そうかい、いってらっしゃい京太郎」 京太郎「いってきます」 京太郎「ばあちゃん」 この半年間、色んなことがあった。本当に楽しかった だからできれば、ずっとここで過ごしたいくらいだ だが、そういうわけにもいかない ついに帰るときが来たのだ トシさん、麻雀部の先輩方、クラスメイト、そして健夜… みんなと別れるのは寂しいが、彼らのおかげでとても楽しい日々を過ごすことができた 伝えることはできないが、本当にありがとう 京太郎「さて…」 おあつらえ向きの下り坂が見えてきた だから、助走を付ける タンッ! みんなの顔がフラッシュバックする タンッ!! この半年の出来事が一挙に頭の中を駆け巡る…健夜 タンッ!!! 健夜……本当はあの時俺は… 京太郎「いっけええええええええええ!!!」 ――8月下旬 健夜「やっぱり、このままじゃダメだよね……」 あれから、2日たったけど私はいまだに行動できずにいた でも、このまま分かれの挨拶すらもできないのは、もっとダメだ よしっ! 健夜「おかーさん、ちょっと出掛けてくる」 _________ _____ __ 健夜「つ、着いてしまった…」 あー、勢いで来たものの、なんて言えばいいんだろう? あんな別れ方したし、会うのは気まずいよ… 健夜「はぁー…」 トシ「おや、健夜ちゃんじゃないか。どうしたんだい?」 健夜「あ、熊倉さん。えと、その…京太郎くんいますか?」 トシ「……まあ、上がりなさい」 健夜「?はあ…」 玄関に上がると、以前とは異なる違和感を感じる、なんだろう? それになんだか、物が減ってるような もしかして… トシ「さて、今日はどうしたんだい?」 健夜「えと、熊倉さんも知ってますよね?京太郎くんが転校すること…」 健夜「だから、その…最後の挨拶に……」 トシ「そうかい、ありがとう健夜ちゃん」 トシ「でも、残念だけど、京太郎はもう行ってしまってね。ここにはいないんだ」 健夜「そう…ですか……」 やっぱり、感じた違和感はそういうことだったのだ トシ「健夜ちゃん……」 健夜「はは、少し遅かったみたいですね……」 トシ「京太郎のこと、恨まないであげて。あの子にも事情があって――」 健夜「分かってます!!分かってますけど…」 トシ「……」 トシ「これ、京太郎から健夜ちゃんにって」 _________ _____ __ 健夜「ただいま」 健夜母「あら、おかえり。早かったわね」 健夜「うん……ごめん部屋行くね」 健夜母「ちょっと、健夜!?」 バタン はは…バカみたい。別れの挨拶すらできないなんて あの時…きちんと話を聞いてあげればよかった 熊倉さんから渡された、箱を見る 開ける気にはどうしてもなれなかったけど、それでもなんとか包装を解いていく 現れたのは、シルバーのチェーンに薄い青と透明の宝石があしらわれている―― 健夜「これは、あの時の…」 間違いない。合宿のとき、京太郎くんと瑞原さんと行ったデパートで見つけた、あの時のネックレスだ そういえば最近、京太郎くん忙しそうにしてた。きっとこのためにアルバイトしてたんだ 健夜「覚えててくれたんだ……」 健夜「馬鹿……」 こんな物より、私は京太郎くんがいてくれさえすれば、それで…… ――9月上旬 二学期始め 二学期が始まった 朝のホームルームで先生が京太郎くんの転校のことを伝えると、クラスがざわめいた その後なぜか、何人ものクラスメイトが私を慰めてくれた 中学生の頃の私だったら考えられないことだったので、素直に嬉しかった でも正直、何を言われても心に響いてくることはなかった 今日は特に授業などもなかったので、早めに終ってしまった なので、荷物を持って早々部室に向かう ガラガラガラ 健夜「失礼します」 シーン… 健夜「…まあ、誰もいないんだけどね」 さすがに2学期ともなると、先輩達もほとんど顔を出せなくなる だから、今日からは本当にひとりぼっち 健夜「……一人で麻雀なんかできるわけないじゃん」 健夜「馬鹿……京太郎くんの馬鹿」 することもないので、仕方なく持ってきていた文庫本を読む 健夜「……」ペラペラペラ 健夜「……」ペラペラ 健夜「……」ペラ… 健夜「はぁ……」 だめだ、なんだか集中できない 以前なら2時間でも3時間でも、いや1日中、本の世界に没頭することができたのに いつからだろう?どうして変わってしまったんだろう? そんなのは分かりきっている、京太郎くんと出会ったからだ 京太郎くんが私の世界を広げてくれたから、私の興味を外に向けてくれたから… 本当はもっと京太郎くんと過ごしたかった 他愛のない、いつものバカ話をずっとしていたかった 二人で大会に出て、また全国に行きたかった 2年生になったら、新しい部員が来てもっと部活が盛り上がるはずだった 3年生になったら、部活も引退して進路について二人で真剣に語り合うはすだった どうして、転校なんかしたの?どうして、最後の挨拶もさせてくれなかったの? どうして、急にいなくなっちゃうの?どうして、ちゃんと理由を教えてくれなかったの? どうして?ねえ、どうしてなの、京太郎くん。お願いだから答えてよ…… 分かれることを知っていたなら、どうしてあの時私に話しかけてきたの? 私が一人だったから、同情して付き合ってくれていたの? 私のこと、本当はどうでもいいって思ってたの? こんなに辛い気持ちになるくらいなら、ずっとひとりぼっちの方がマシだったよ 健夜「馬鹿……」ポロポロ 馬鹿……馬鹿!……馬鹿!! 麻雀なんて…もう辞め―― コンコン 健夜「!!」ゴシゴシ コンコン! 健夜「は、はい。どうぞ」 ガラガラガラ 「失礼しまーす」 健夜「は、はい」 「ここ、麻雀部であってますよね?」 健夜「はい、そうですけど…えーと何か用ですか」 「えーと、実は…」 コンコン 健夜「!!」 「失礼します」 健夜「え、また!?」 コンコン 「しつれいしまーす」 健夜「」 _________ ______ __ 結局、その後来たのは計4人。いずれも1年生の女の子だ 健夜「えーと、皆さんどういったご用件で…」 「あはは、敬語はいいよ。同い年なんだし」 健夜「う、うん…」 健夜「で、なんの用なのかな?」 「はい、これ」 健夜「えーとなになに……入部届かあ。なるほどなるほど」 健夜「……」 健夜「うえ゛!?」 健夜「入部届っ!?入部届って、あの入部届っ!?」 「それ以外になにかあったけ?」 「ないと思うけど」 健夜「ということはつまり…四人とも麻雀部の入部希望者ってことっ?」 「「うん!」」 健夜「そう、なんだ」 健夜「でも、どうして急に…?」 「熊倉君が誘ってくれたんだよねー」 健夜「えっ」 「8月の中頃くらいかなー。いきなり電話してきてさ」 ちょうどインターハイが終って、先輩達が引退した頃だ 「そうなの?私なんかいきなり家まで来たからびっくりしちゃったよ」 健夜「……」 「でも、すごい熱心ていうかさ…鬼気迫るかんじだったよね」 健夜「……」 「何度もお願いされたからね、最後にはオーケーしちゃったもん」 「私の時なんか――」 健夜「……」 健夜「……」 健夜「……」 健夜「……」ポロポロ 馬鹿は…馬鹿は私だ。私、自分のことしか考えてなかった 京太郎くんはこんなにも私のこと考えていてくれたのに 「えっ、え、えちちtちょっといきなりどうしたの?だだだ大丈夫?」 「落ち着け!どこか痛いところでもあるの?」 健夜「ううん…違うの……ただ、自分が…情けなくて、それで…」ポロポロ 「うん、大丈夫。大丈夫だから」ポンポン 健夜「ありがとう……来てくれて…ありがとう…」ポロポロ 「うん、うん…」 生まれたての赤ちゃんのように、その後もずっと泣き続けた _________ _____ __ ピンポーン トシ「おや、健夜ちゃん」 健夜「熊倉さん、お願いがあります!」 トシ「どうしたんだい、急に」 健夜「私に麻雀を教えてください!!」 トシ「…今も教えてると思うけど」 健夜「違うんです!もっと全国で……いや世界で戦えるくらい強くなりたいんです!」 トシ「……世界とは大きく出たね。どういう心境の変化だい」 健夜「京太郎くんがどこに行ったのかは知りません」 健夜「けど、私がもっと麻雀で強くなって、もっと有名になれば」 健夜「きっと、京太郎くんも見ていてくれるから……」 健夜「だから、強くならなくちゃいけないんです!」 トシ「それは自分のためかい?」 健夜「正直分かりません」 健夜「でも、私の麻雀をまた見たいって言ってくれたんです」 トシ「……」 健夜「京太郎くんからは、とても多くのものを貰いました」 健夜「信じられないほど、たくさん」 健夜「だから、ほんの少しでも、私からあげられるものがあるなら」 健夜「自分のためと言われても、構いません!」 トシ「ふふ…」 トシ「まったく、二人ともそっくりなんだから……」 健夜「?」 トシ「いいよ、明日から毎日おいで。みっちりしごいてあげるから」 健夜「あっ、ありがとうございます!!」 トシ「さあ!さっさと、京太郎に追いつかなきゃね。時間がなくなっちゃうよ」 --------------------------- その後は早かった 1年生が終るまで、私は熊倉さんの指導を徹底的に受けた 団体戦では残念ながら、全国に行くことはできなかった しかし、最後の大会では県で2位に食い込むことができた 私たちの最初の実力からすれば、相当成長できたのは確かだろう 私はこのままこのメンバーで、2年生になってもやっていくんだとばかり思っていた だけど、1年生での終わりに突然お父さんの転勤が決まり、転校することになった 同じ茨城県だったが、新しい家から通うには少し遠すぎたのだ 新しい高校の名前は『土浦女子高校』 制服はブレザーではなく、丸襟にグレーのリボンのものに変わった 初めてできた友達や部活の仲間、熊倉さんと分かれるのは辛かった きっと京太郎くんもあの時、こんな気持ちになったのだろう 引越しの後気付いたけど、京太郎くんから預かっていた文化祭の衣装がいつの間にかなくなっていた 京太郎くんとの数少ない思い出だったから、必死になって探したけど見つからなかった もし誰かの手に渡っているなら、せめて大事に扱っていてほしい 熊倉さんも程なくして、福岡の麻雀の実業団で監督をするため引越しをしたそうだ 転校してからも麻雀はずっと続けた、何ものにも優先して そのせいか、3年生の全国大会では団体戦優勝を果たすことができた 京太郎くんは見ていてくれたのだろうか?そうだと嬉しい 高校を卒業してからは、ありがたいことにプロのオファーがあった 私は飛びついた それからも、私はひたすら麻雀をし続けた まるで、最初の目的を忘れてしまったかのように そして…… ――12年後 東京 インターハイ会場 恒子「すこやん、お疲れー!」 健夜「お疲れ様、こーこちゃん」 恒子「いやー今日もアラサーらしく、年季の入った名解説でしたな」 健夜「アラフォーだよ!!」 恒子「……」 健夜「間違えちゃったじゃん!何言わせるの!!」 恒子「いや~、今のはさすがにすこやんが悪いと思うんだけど」 健夜「もうっ、まったく!こーこちゃんは!」 恒子「はいはい、悪うございました…」 恒子「ん、あれっ?すこやんにしては珍しく、ネックレスなんて着けてるんだね」 恒子「どうしたの、若作り?」 健夜「私まだ20代だからね!?そのくらいのファッションはするよ!」 恒子「へぇー、アクアマリンとダイアモンドかあ。デザインは若い人向けみたいだけど、大丈夫?」 健夜「大丈夫ってなに!?」 恒子「でも、すこやんにしてはいいセンスしてるじゃん。なんでいつもは着けないの?」 健夜「うーん…なんでだろ?」 健夜「なんだか今まで、どうしてもそういう気分になれなかったんだよね……」 恒子「ふーん……さては男ですな?」 健夜「ななな、なんで分かるの!?」 恒子「ふふふ、女がアンニュイな表情をしたら、それ即ち男が関係していると相場が決まっているのだよ」 健夜「へえ、こーこちゃんすごいんだね」 恒子「それほどでもあるよ!」フフン 恒子「……もしかして彼氏からのプレゼントとか?」 健夜「彼氏か…そうだったら良かったんだけどね…」 恒子「"だった"ってことは、昔の?」 健夜「うん、学生時代にちょっとね」 恒子「へえ、行かず後家四天王の一角と呼ばれたすこやんにも、そんな時代があったんだねえ」 健夜「行かず後家なんてよく知ってるね!?ていうか、そんなの初めて聞いたよっ!?」 恒子「初めて言ったからね」 健夜「……ちなみに他の三人は?」 恒子「えーと、野依プロと瑞原プロと、あと一人誰にしようか?」 健夜「こーこちゃん、そのネタその二人には絶対に言わないほうがいいよ。命に関わるから」 恒子「命って、そんなー」 健夜「……」 恒子「……肝に銘じます」 恒子「しかし、すこやんにもそんなことがあったんだねー。その子とは結局?」 健夜「うん、転校しちゃってそれっきり」 恒子「ははー、まるで一昔前の少女漫画みたいな展開だね」 恒子「でも、その子はすこやんのことをとても大切に思ってたみたいだね」 健夜「……どうして?」 恒子「だって、このネックレス高校生が買うにしてはかなり高いもん」 恒子「5万か6万くらいはしたんじゃないのかな?」 恒子「好きな娘以外にそんなプレゼント、普通はしないよ」 健夜「……」 恒子「すこやんは、その男の子のことどう思ってたの?」 健夜「……分かんない、忘れちゃった」 恒子「そう」 恒子「……」 恒子「さあ!明日で仕事が一区切りするから、その後飲みに行くぜー!!ね、すこやん」 健夜「うん、そうだね。ありがとう、こーこちゃん」 さて、今日は解説の仕事は終ったからホテルに帰ろう なんだか疲れちゃった。きっと昔の話をしたからだ あれから12年が経った 私は強くなり続けた…と思う 体も成長した。む、胸だってほらっ!? ……ごめんなさい、嘘つきました。ほとんど変わってません プロになって、色んな大会に出た。そして勝ち続けた 気付いたら、いつの間にか世界ランキングが2位になっていたこともある ねえ、京太郎くん。見てよこれ、私のカード 『国内では無敗』『永世称号七冠』『恵比寿時代は毎年リーグMVP』 だってさ。この『Grandmaster』なんて仰々しいの、私には似合ってないよね 私強くなったんだよ?銀メダルだってとったことあるんだから その時の私、見ていてくれた?その時の私、かっこよかった? 京太郎くんがあの時言ってくれたみたいに 少しでも恩返しできたのかな、私… ねえ、京太郎くん。私、疲れちゃったよ。少し頑張りすぎたからかな こーこちゃんにはああ言ったけど、私はあの時から……いや今でもあなたのことを… 健夜「会いたい……」 もし、もう一度出会えたら…あの時言えなかったことを――― 「あぶなーいっ!!!」 健夜「へ?」 横を見る。横断歩道に猛スピード迫ってくるワゴン車。距離は20メートルくらい 健夜「あ」 これは助からないな。こうどうしようもないと、案外冷静になるものなんだ ここで、私死んじゃうんだ。あっけない ああ、私の人生ってなんだったんだろう? でも、今にして思えば案外幸せだった言えるのかもしれない 仲の良い友達も何人かいるし、他人から見れば麻雀選手として大成功を収めたといえる あれ?あと、何かあったけ? まあ、いっか。どうせここで終ってしまうんだから でも…前にもこんなことが ドンッ 健夜「え」 すごい衝撃が伝わる でもこれは、車というより、人の 振り向くと、そこには金髪の男の子が 健夜「あ、きょうた――」 グシャ 肉の潰れる嫌な音がした 今度こそ、私は気を失った ________ _____ __ ―病院 「ハイ、いいですよ。お疲れ様」 健夜「ありがとうございました」 「特に異常は見当たりませんね。気になるところがあれば、またいらして下さい」 健夜「はい。あの…あの男の子は今」 「まだ、手術中ですね」 健夜「そう、ですか」 「……私の見たところ、頭からの出血は多いようでしたが、それほど深いものではないようです」 「肋骨にひびが入っていますが、中に以上はないようでした」 「左足は骨折していますが、それほど酷いものではないので、将来障害が残る心配はありません」 「追突する直前、車が横にそれたので、正面衝突を避けられたのが良かったのかもしれませんね」 健夜「そう…ですね」 「自分の命を顧みず、他人を助けることのできる素晴らしい青年です」 「うちのスタッフが全力で取り組んでいるので、安心してください」 「じきに手術も終るでしょう……彼のこと、待ちますか?」 健夜「はい」 事故のとき、私はもう助からないと思った しかし、周りにいた人達の証言によると、男の子が飛び出してきて私を突き飛ばしてくれたらしい 私は歩道に逃れたが、その子は…… 警察の人によると、車は70~80キロ近くスピードを出していたらしい それで、あの怪我で済んだのは奇跡的とのことだ それでも、あのような酷い怪我を負ってしまった 私はすぐに気を失ってしまったので、その後の出来事は詳しくは知らない 気付いたら病院にいて、よく分からない検査を受けていた そして今、彼の眠るベッドの横で、私は座っている 健夜「……」 健夜「ありがとう。あなたのおかげで、私助かったよ」 健夜「ねえ、あなたは誰なの?金髪のそっくりさん」 健夜「ん?なんだろこれ……学生証?」 健夜「……」 健夜「名前だけ、名前だけならセーフだよねっ?」 健夜「苗字は『須賀』、名前は……」 健夜「『京太郎』……かあ」 健夜「……」 健夜「……」 健夜「えっ?え、ええええっ…え?!??」 ここここれは、どういうこと?もしかして本当に、京太郎くん本人? いや、この子も京太郎くんなんだけどね!? でででも、顔とか体つきとかはほとんど同じに見えるし いや、でもあれから12年経ってるし、同じってありえないよね!? はっ!もしかして、この子京太郎くんの息子さんとか…… ということは、もう他の誰かと結婚してて…… 健夜「うぅ……」キリキリ やめよう、秒速5センチメートルみたいな妄想は。私の胃に優しくない 第一、自分の息子に同じ名前をつける親がどこにいる! 健夜「はあー……」 傍からみたら、私ただの変質者だね、これ 健夜「ねえ、早く目を覚ましてよ『京太郎』くん……」 恒子「すすすこやーん!!」バーン 健夜「あ、こーこちゃん」 恒子「事故にあったって聞いて、だだだ大丈夫!?」 健夜「落ち着いて、こーこちゃん。私は何ともないから」 恒子「そ、そうなの!?よ…よかったあ」ヘナヘナ 健夜「心配してくれたんだね。ありがとう」 恒子「あれ?……この子はどうしたの?」 健夜「この子が私を助けてくれたの。でも代わりに…」 恒子「そう、なんだ」 健夜「幸いそこまで酷い怪我じゃないらしいけど、まだ意識が戻らないんだ」 恒子「そう……すこやんのことありがとね、少年」 ~~~~~~~~~~~~~~~~ 良子「少々遅れましたが、どうやら無事なようですね」 えり「そうですね」 はやり「まったく、心配したんだから…」 咏「まったくだねぃ」 野依「よかったっ!!」 靖子「まあ、無事でよかったよ。ほんと」 はやり「……」 良子「どうかしました?」 はやり「うーん、あの子…」 良子「あの金髪の子ですね?どうやら、彼が小鍛治さんを助けてくれたようですが」 はやり「うん、そうなんだけど。あの男の子、どこかで会ったことがあるような……」 野依「……」 野依「痴呆っ!!」 はやり「あ゛、今なんつった」 ビクッ!! 野依「難聴っ!!」 咏「これは、やばいねぃ…」ヒソヒソ 良子「Oh……」 はやり「久しぶりに切れちゃった☆……雀荘行こうか☆」 野依「望むところっ!!」 はやり「でも、二人じゃ麻雀できないからなあ…☆」チラ 咏・良子「」ビクッ!! 咏「あー!私このあと雑誌の取材があって――」 良子「実は解説の仕事が残っていまして――」 はやり・野依「ん?」ニコニコ 咏・良子「……お供させていただきます」 みさき「あれ?そういえば藤田プロがいませんね、さっきまでここにいたのに」 咏・良子(あのカツ丼、逃げやがったな…) はやり「じゃあ行こうか☆二度と麻雀のできない身体にしてあげるよ☆」 野依「こっちの台詞っ!!」 ~~~~~~~~~~~~~~~~ 健夜「なんだか、外が騒がしいね。何かあったのかな?」 恒子「さあ?お年寄りが世間話でもしてるんじゃない?」 健夜「病院なんだから静かにして欲しいよね、まったく」 健夜「……京太郎くん」ギュ 恒子「すこやん…」 恒子「すこやん、もしかしてその子のこと知ってるの?」 健夜「分かんない…」 恒子「え、それってどういう」 コンコン 健夜「は、はい、どうぞ」 ??「失礼します、こちらに須賀くんがいると聞いて」 健夜「は、はい。こちらです」 健夜「えと、あなた達は?」 ??「申し遅れました、私は清澄高校麻雀部の部長の竹井と申します」 久「それとこちらが、部員の染谷、宮永、片岡、原村です」 久「私たち、須賀くんと同じ部員なんです」 健夜「そう、だったんだ」 咲「京ちゃん!!京ちゃん!!」 優希「イヌ…なにやってんだじぇ」 和「須賀くん…」 まこ「それで、容態のほうは?」 健夜「手術は成功したんだけど、まだ意識の方が…」 まこ「そう、なんか…」 久「…私のせいだわ、あの時買出しなんか行かせなければ……」 まこ「あほ、単なる偶然じゃ。自分のせいにしたって何にもならんぞ」 久「……そうね、その通りだわ。ありがとう、まこ」 久「それで、その…事故の詳しいこと聞いてもいいですか?」 健夜「はい」 __________ ______ __ 久「そうですか、ありがとうございました」 健夜「い、いや、お礼を言うのはこっちの方だから」 咲「でも、京ちゃんらしいね」 優希「いつも、他人ことばっかり。少しは自分のことも考えろ…ばか」 健夜「……あの、良かったらこの子のこともっと教えてくれませんか?」 久「敬語はいいですよ、小鍛治プロ」 健夜「え、ばれてたの!?」 和「麻雀やってる人で、小鍛治プロのことを知らない人なんていませんよ」 まこ「それに、福与アナもおるしな」 恒子「あれっ、分かっちゃた?私も有名になったもんだね~」 久「小鍛治プロからの頼みとあらば仕方ないですね。悪いけど、咲お願いね」 咲「え、私ですか?」ビクッ 久「この中なら、あなたが一番須賀くんと付き合いが長いわ。よろしくね」 咲「は、はあ」 久「私達は先に帰るわね。たくさんいても邪魔になるし」 恒子「なら、私も帰るよ。咲ちゃん、すこやんのことお願いね」 健夜「普通逆じゃない!?」 その後、咲ちゃんから色々な話を聞いた 中学時代どんなことがあったのか、どんな会話をして、どう思ったのか 高校に入ってからこと、大会のこと、そして今日のこと 咲「いつも、自分のことは後回し。他の人のことを第一に考えてるんです」 咲「まったく…バカなんだから」 健夜「…そうだね、昔からそうだったんだよね」 咲「?」 健夜「ありがとう、咲ちゃん。私の頼みなんか聞いてくれて」 健夜「明日も試合でしょう?早く帰って休んだほうがいいよ」 咲「…そうですね、そうします」 咲「小鍛治さんはこの後…」 健夜「もう少しだけ、ここにいるよ。一人じゃ寂しいもんね」 ――??? ~~~~~~~~~~~~~ 「う……ぁ…」 何をしてるんだい? 「いえ…何もできないんです」 本当かい? 「ほら、見てください。包帯でグルグル巻きでしょう?」 「これじゃあ、動けませんよ」 なんで包帯なんかしてるんだい? 「えーと…なんででしょう?怪我でもしたかなあ…」 いいや、怪我なんかしてないはずだよ。ほらっ! 「ちょっと、止めてくださいよ。痛いじゃないですか!」 本当に? 「あれっ?痛くない…?なんで…」 怪我してるわけでもないのに、そんな包帯を巻いているから身動きが取れなくなるのさ さ、起きなさい。私と彼が言った、同じ言葉があるだろう? それを思い出すんだ 「え、もしかして…あなたは――」 ~~~~~~~~~~~~~~~ ――事故から三日後 京太郎「うぅ……」 うあ、体がだるい。つか左足全く動かねえ…どうなってんだ なんか後頭部もジンジンするし、最悪だな あれ?俺何してたんだっけ? たしかこっち戻ってきてそれで…… 京太郎「た、助かったのか…俺!?」 まじかよ…絶対ダメかと思ってたのに 京太郎「よっしゃーーーーーっっ!!!!」 京太郎「って、痛っ…!声出しただけで、ハンパなくいてぇ…」 はあ、てことはここ病院か そういえば、肝心の健夜は無事だったのだろうか? 歩道に押したまでは確認したんだが、それ以上覚えてねえ コンコン 「失礼します」 ん、誰だ?とういかこの声、最近まで聞いてような――やべっ! ガチャ 健夜「『京太郎』くん、起きてる?わけないよね…」 無事だったかあ、よかった……本当によかった 健夜「今日もお見舞いの品、持ってきたんだけど。既にいっぱいだね」 健夜「ねえ、今日の試合、咲ちゃんたち勝ったみたいだよ。よかったね」 健夜「解説のとき、こーこちゃんたら酷いんだよ。全国放送でアラサーネタ連発するし」 健夜「自分だって、もうすぐアラサーなのにね」 健夜「……」 健夜「ねえ、『京太郎』くん。早く目を覚まして。本当のこと教えて」 健夜「あなたは、あの京太郎くんなんでしょう?」 健夜「咲ちゃんから聞いたよ、いろんなこと」 健夜「昔から、変わってないんだね。私、びっくりしちゃった」 京太郎「……」 健夜「私あれから、すごく強くなったんだよ?」 健夜「なにせ、元世界ランク2位なんだからね。すごいでしょ?」 健夜「銀メダルだって取ったんだから…」 京太郎「……」 健夜「……」 健夜「私…あなたに、頑張った、って。それだけでいいの……だから…」ポロポロ 健夜「京太郎くん……」ポロポロ 言うべきなのだろうか? 正直言うと、助かったときのことは全く考えていなかった だが、俺のことをいまさら言ったところでどうなるというのか もしかしたら、既に健夜には付き合っている男性がいるかもしれない そんなところに、12年前の俺が現れたらどうだろう? そんなことしたって、健夜を困らせるだけだ いや、たとえ彼氏がいなくたって同じようなものか… それに、そもそもタイムリープなんて荒唐無稽なこと信じてもらえるはずがない なら言わないほうがいい それが健夜のため だけど…… 『自分の気持ちに素直にね』 ……ありがとう、トシさん 健夜「……じゃあ、もう行くね」ゴシゴシ 京太郎「……待った」 健夜「え」 京太郎「久しぶり、健夜」 健夜「えっ!あ…え、え?」パクパク 健夜「きょ、京太郎くんなの?あの…」 京太郎「そう、あの京太郎だ」 健夜「…なんとも、ないの?」 京太郎「言ったろ、ちょっとやそっとじゃ死なないって」 健夜「で、でも、まだ高校生なんでしょ!?」 京太郎「まあ…その……いろいろあったんだ」 京太郎「詳しいことはまた後で話すよ。それでも信じてくれるか?」 健夜「……私、ひと目見て分かったもん…京太郎くんだって」 健夜「違うかもしれないって思ったよ?けど、苗字は違ったけど名前も顔も一緒で…」 健夜「変だって思った。そんなのありえないって…」 健夜「でも、咲ちゃんからあなたの話を聞いて分かったの」 健夜「この人は間違いなく京太郎くんなんだって」 健夜「昔から全然変わってなくて、びっくりしたんだから…」 京太郎「そういう健夜だって、あの頃と全然変わってないじゃないか」 健夜「そ、そんなことない!あの後、いろんなこと…いっぱいあって……それで…」ジワァ 京太郎「……」 健夜「ばか~~っ!!勝手にいなくなって…」 健夜「急に現れたと思ったら…今度は事故で!」 健夜「すごく、すっごく!心配したんだからっ!!」 京太郎「す、すまん」 健夜「もう起きないかもって何度も何度も思って……それで…」 健夜「バカ、アホ、トンチンカン!!」 健夜「ヘンタイ!ドスケベ!他の人の胸ばっかり見てっ!!」 健夜「バカバカバカバカバカバカバカばかばかばかばかーーーーー!!!」 京太郎「そこまで言わなくても…」 京太郎「どうしたら許してくれる?」 健夜「許さないもん!」 京太郎「もん、って……じゃあ、どうしたいい?」 健夜「えと…その、あのー……」 健夜「………!!」 健夜「ききききキス、してくれたら許してあげないこともない…かも/////」モジモジ 乙女か!いや、もう乙女じゃないのか? 京太郎「えっ!?そのー、聞きにくいことなんだが……彼氏とかいないのか?」 健夜「」 健夜「……」 健夜「いたことないもん…」ボソ 京太郎「え?」 健夜「今まで、一人もいたことないって言ったの!わるいっ!!」 京太郎「い、いや悪くないです。むしろ嬉しい…かな」 健夜「そ、そう、なんだ…///」 京太郎「ああ」 健夜「じゃあ、その……する?」 京太郎「いやその前に、ちょっと待ってくれ」 京太郎「最後分かれたとき、本当に言いたかったこと、言わせてくれ」 健夜「うん」 京太郎「好きだ」 健夜「私も。あの頃からずっと」 京太郎「健夜…」 健夜「京太郎くん…」 健夜の手に、自分の手を重ねる。暖かい だんだんと二人の距離が近づいてゆく、そして――― ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ トシ「どうやら、うまくいったみたいだね」 トシ「……あらあら、年寄りはとっとと退散しようか」 トシ「確かこういう時は、こう言うんだったかな」 トシ「二人は幸せなキスをして終了」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ――5年後 京太郎「うー、緊張してきた…」 健夜「大丈夫だよ、なんたって私が教えてきたんだから」 京太郎「そうだな、いつもありがとう」 チュ 健夜「…えへへ」 恒子「おー、暑い暑い!暖房効きすぎかなあ、この部屋は」 健夜「こーこちゃん!?」 健夜「…もしかして、見てた!?」 恒子「いんやあ、見てないよ」 健夜「よかったあ」 恒子「二人が熱ぅ~いキスをしてることろなんてね」 健夜「も、もうっ!見てたんじゃん!?早く実況に戻りなよ!」 恒子「はいはい……あと京太郎くん、タイトル戦頑張んなさい」 京太郎「はい!」 健夜「もうっ、こーこちゃんは…」 京太郎「…福与さん、いい人だなあ」 健夜「えっ!うわ、浮気!?」 京太郎「そんなことしないよ…」 京太郎「福与さん、俺が初のタイトル戦で緊張してるから、わざとああ言ってくれたんだよ」 健夜「そ、そうだったんだ。後で感謝しなくちゃだね」 はやり(3×)「おーい、京太郎くん!」 京太郎「あ!お久しぶりです、瑞原プロ」 はやり(3×)「久しぶり。今日はよろしくね」 健夜「ちょっ…!すごい格好してるね、それ」 健夜「痴女…というより、もはや露出狂だよその服!?」 はやり(3×)「えー、最近流行ってるんだよこの服、ほらこれ見てよ」 健夜「なにスマホまで出して…なになに」 『茨城在住のあるデザイナーは、スランプに陥っていた』 『あるとき、茨城で開かれていたフリーマーケットを覗くと、そこにはとんでもない服が』 『これにインスピレーションを受けた彼は、次々と新作を発表してゆく』 『最初は麻雀界隈の一部のみで流行っていたものの、今ではその茨城スタイルは世界的なものになりつつある』 『そのブランドの名前は、彼がフリーマーケットで発見した服に付いていた文字からとった』 『K.K、と』 はやり「ねっ!」 京太郎・健夜「Oh…」 K.K=Kumakura Kyoutaro です…本当にありがとうございました トシ「ほら、試合はじまるよ。早く行きな、二人とも」 京太郎「監督!」 京太郎「そうですね、行ってきます」 トシ「ああ、いってらっしゃい」 ________ _____ __ 京太郎「今日は負けませんよ、嫁と娘が見てるんです」 はやり「まだまだ、新人君には負けないよ」 アカギ「久しぶりだな、京ちゃん……だが、勝つのは俺だぜ……!」 野依「負けないっ!!」 京太郎「あー、そういえば…」 はやり「ん?」 京太郎「……約束、守ってくれましたね」 はやり「なんのこと?」 京太郎「いえ、何でもありません。さあ、いきますよ!!」 京太郎「カンッ!!」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6070.html
~やっぱり京咲がナンバーワン~ 第一章【小悪魔テク! 文学少女の逆襲】 咲「……」ジィー 京太郎「でさ、その時に優希が」 和「え? そんなことを?」クスクス 優希「もぉぉぉぉ! 変なこと言うな!」 京太郎「あはは、悪い悪い」 優希「むむぅ」 京太郎「今度タコスおごってやるからさ」 優希「えへへ、なら許す!」 和「もう、ゆーきったら」 京太郎「和にも今度奢ってやるよ」 和「え? い、いいんですか?」 京太郎「ああ、当たり前だろ」 和「……ふ、ふふっ」グッ 咲「(これは由々しき事態かも!)」 宮永家 咲「うぅ、このままじゃ京ちゃんを取られちゃうよぉ」グスグス コンコン 咲「? お父さん?」 ガチャ 照「違う、私」 咲「お姉ちゃん! いつ帰ってきたの?」 照「ついさっき。もう私と咲は和解済み。お父さんとお母さんも仲直りしてる設定」 咲「設定とか言っていいのかわからないけど……ごめんね、今話したくないんだ」ゴシゴシ 照「泣いてたの?」 咲「うん」 照「理由を話して。力になれるかも」グッ 咲「えー? お姉ちゃんには無理だと思う」 照「どうして?」 咲「だって京咲の話だし」 照「……京照じゃないなら出番は無いね」ドサッ 咲「(と言いつつベッドに座るんだ)」 照「でも今日は特別に咲の力になってあげる」 咲「え? 本当!?」 照「咲の様子から察するに、他の女の子に京ちゃんを取られそうなんでしょ?」 咲「う、うん」 照「それは私としてもまずい。ここは停戦協定」 咲「ありがとう! お姉ちゃん!」 照「もっと褒めて」ニコニコ 咲「……うん」 数分後 咲「……という感じなの」 照「なんという……なんという」ワナワナ 咲「どうにかなりそうかな?」 照「なる」 咲「ほ、本当!?」 照「私は東京で、最新の流行のモテテクを学んだ。敵はいない」キラーン 咲「す、凄い! これがインターハイチャンプ宮永照!!」 照「もっと褒めて」ニコニコ 咲「……うん」 ........ ....... .... ... / 丶 / ヽ / . / / ;イ l ! . '――‐y' / l ! !\ ! l ! l / ̄Ⅵ\ 厂 ̄\l / ! | | / ニニ \_,イニニニ ∨ / ! | | ! | | | | l / | ∨》 l 乂ソ 乂_ン ル’⌒) | / / / | / ..... ワ _ .イ | 厶_/| / うフラT Tフ叮[ /l | l/ヽィ'゙ ̄イ゙ ゙̄/゙ ̄ ̄_厂`ミ /l/l/. ____________ √{`ヽ,乂__厶彡 ̄/ `Y '/ /, / `丶_(乙)__彡゙ |. '/ /, / // ハ \ ,, | '/ /, 〉--/ { / ! } 〉--ミ ,ハ. '/ /, (==彳 {_/ \ノ / `ヽ彡 '/ /, / 乂__ /⌒丶,、_/. '/ /;ー―√√/\{_____ / / } ℡zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz℡┬┴┴┴―――‐┐ `ヽ / 人  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 照「ということで、早速このサイトを参考にする」カタカタ 咲「(結局パソコン頼みなんだ……)」 照「出た。これこそがモテテクの極地!」 咲「どれどれ……」 モニター「モテる女子力を磨くための4つの心得」 咲「モテる女子力を磨くための4つの心得!?」 照「そう、モテる女子力を磨くための4つの心得」 咲「……」ジィー 照「この四つの項目を達成すれば、京ちゃんはもうメロメロ」 咲「す、凄い!」 【モテる女子力を磨くための4つの心得】 ※原文ママ 1. あえて2~3世代前のケータイを飲み会に持っていく あえて2~3世代前のケータイを使うようにしましょう。 そして飲み会の場で好みの男がいたら話しかけ、わざとらしくケータイを出していじってみましょう。 そして「あ~ん! このケータイ本当にマジでチョームカつくんですけどぉぉお~!」と言って、男に「どうしたの?」と言わせましょう。 言わせたらもう大成功。 「ケータイとか詳しくなくてぇ~! ずっとコレ使ってるんですけどぉ~! 使いにくいんですぅ~! ぷんぷくり~ん(怒)」と言いましょう。 だいたいの男は新しいケータイを持ちたがる習性があるので、古かったとしても1世代前のケータイを使っているはずです。 そこで男が「新しいケータイにしないの?」と言ってくるはず(言ってこない空気が読めない男はその時点でガン無視OK)。 そう言われたらあなたは 「なんかなんかぁ~! 最近iPhone5が人気なんでしょー!? あれってどうなんですかぁ?」 「新しいの欲しいんですけどわかんなぁぁああい!! 私かわいそーなコ★」と返します。 すると男は「iPhone4でしょ? 5はまだ出てないよ。本当に良くわからないみたいだね。どんなのが欲しいの?」 という話になって、次の休みの日にふたりでケータイ選びのデートに行けるというわけです。 あなたの女子力が高ければ、男がケータイ買ってくれるかも!? 咲「たったこれだけでケータイを買って貰えるの!?」ドッギャーン 照「ね、凄いでしょ?」ニヤリ 咲「ほ、他には……」 【モテる女子力を磨くための4つの心得】 ※原文ママ 2. Twitterで><を使うとモテる 「キャー!」とか「悲しい!」などを表現する「><」をコメントに入れると Twitterの男性ユーザーは「なんかこの子カワイイなぁ」や「支えてあげたいかも」と思ってくれます。 インターネット上では現実世界よりもイメージが増幅されて相手に伝わるので 「><」 を多用することによって、 男性はあなたを可憐で女の子らしいと勘違いしてくれるのです。 そういうキャラクターにするとほぼ絶対に同性に嫌われますが気にしないようにしましょう。 咲「うぅ、私Twitterやってないよぉ」シクシク 照「問題無い。メールでアピールすればいい」 咲「あ、そっかぁ」 照「それならTwitterと違って、特定多数に見られないから同性にも嫌われない」 咲「お、お姉ちゃん頭いい!」 照「もっと褒めて」ニコニコ 咲「……うん」 咲「次は……」 【モテる女子力を磨くための4つの心得】 ※原文ママ 3. とりあえず男には「えー! なにそれ!? 知りたい知りたーい♪」と言っておく 飲み会などで男が女性に話すことといえば自慢話や趣味の話ばかり。 よって、女性にとってどうでもいい話ばかりです。 でもそこで適当に「へぇーそうなんですかぁ~?」とか「よくわかんないですけどすごいんですねぇ」と返してしまうと、 さすがの男も「この女ダメだな」と気がついてしまいます。ダメ女だとバレたら終わりです。 そこは無意味にテンションをあげて、「えー! なにそれ!? 知りたい知りたーい♪」と言っておくのが正解。 たとえ興味がない話題でも、テンションと積極性でその場を乗り切りましょう。 積極的に話を聞いてくれる女性に男は弱いのです。 いろいろと話を聞いたあと、「〇〇は〇〇で、〇〇が〇〇なんですね! 覚えたぞぉ! メモメモ!」 とコメントすればパーフェクト。 続けて頭に指をさしてくるくる回しつつ 「キュンキュンキュン! キュンキュンキュン!」と言って、「どうしたの?」と男に言わせるのもアリ。 そこで「私のハードディスクに記録しているのでありますっ☆」と言えば女子力アップ! そこでまた男は「この子おもしろくてカワイイかも!?」と思ってくれます。 私は学歴も知識もありませんしブスですが、こういうテクニックを使えば知識がない私のようなバカ女のほうがモテたりするのです。 男は優越感に浸りたいですからね。 咲「知りたい知りたーい……」カキカキ 照「これでもう京ちゃんの心は咲に釘付け」 咲「で、でもいいの? 私ばっかりこんな」 照「私はお姉ちゃんだから我慢する。それに、咲となら京ちゃんを共有してもいい」 咲「お、お姉ちゃん!」ジィーン 照「感動はいいから褒めて」 咲「……お姉ちゃんは優しいね」 照「もっと褒めて」ニコニコ 咲「……うん」 咲「そして最後は……」 【モテる女子力を磨くための4つの心得】 ※原文ママ 4. レストランではオムライスを食べられない女をアピールせよ 男とレストランに入ったら、真っ先にオムライスなどの卵を使った料理を探して 「あーん! 私これ食べられないんですよねぇ~(悲)」と言いましょう。 するとほぼ100パーセント「どうして? 嫌いなの?」と聞かれるので、 「嫌いじゃないし食べたいけど食べられないんですっ><」と返答しましょう。 ここでまた100パーセント「嫌いじゃないのにどうして食べられないの?」と聞かれるので、 うつむいて3~5秒ほど間をおいてからボソッとこう言います。 「……だって、……だって、卵割ったらヒヨコが死んじゃうじゃないですかぁっ! 赤ちゃんかわいそうですぅ!」 「まだ生まれてないのにぃぃ~(悲)。ピヨピヨとすら鳴けないんですよ……」 と身を震わせて言うのです。 その瞬間、あなたの女子力がアップします。 きっと男は「なんて優しい天使のようなコなんだろう! 絶対にゲットしてやるぞ! コイツは俺の女だ!」 と心のなかで誓い、あなたに惚れ込むはずです。 意中の男と付き合うことになったら、そんなことは忘れて好きなだけオムライスを食べて大丈夫です。 「食べられないんじゃなかったっけ?」と言われたら「大丈夫になった」とか「慣れた」 「そんなこと言ってない」と言っておけばOKです。 咲「お、オムライスにこんな秘密が!?」 照「……これで四つ全てを習得した。咲はもう立派な小悪魔ガール」 咲「こ、小悪魔!?」ガーン 照「もう何も怖くない。後はたっぷりと京ちゃんを篭絡するのみ」 咲「え、えへへへっ! やったぁ」 照「きっとこのサイトの著者も応援してくれてる」 咲「うん。見ててくださいね……」ジッ 著者 アラサー嬢 ※ 当然元ネタの作者は違います 咲「アラサー嬢さん!」 一方その頃 ____ ,. .. .´ . . . . . . . . . . . . . . `ヽ /| / . . . ./ . . . . . . . . . . . . . . . . . . .\ \_WW/ |WWWW/. / . . . . . i . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . i . ヽ ≫ ≪ ′ . . . . | . . ./| . /|/| . . ∧ . /i . | . . . . ≫ し オ ≪ i . . . . .| . . レ'V |/ |/ .V |/| . | . i ≫ よ ム ≪ | . . . . .| . . |´ ̄ ̄  ̄ ̄`| . | . | ≫ う .ラ ≪ | . . . . .| . 抖芋ミ 仗芋ミ . .| . | ≫ ! .イ ≪ | . . . . .| . . |弋 ノ 弋 ノ . .| . | ≫ .ス ≪ | . . . . .| . . | ' | | . | ≫ に ≪ | . . . . .| . . | 、_ _ | | . | ≫ ≪ | . . . . .| . . |`} 、 イ | | . | /MMMMMMM、\ | . . . . .| . . | | ┬セ . . . . .| .| | . | | . . . . .| .i. |ノ { .i . . . . . | .l ,八 }<⌒厂八|  ̄ ̄厂} ./、. ′ ({ {. | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Y ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ヽ∧┬┬┤ | | 翌日 京太郎「おはよう咲」 咲「あ、京ちゃん!」トテトテ 京太郎「なんだか機嫌いいな? 何かあったか?」 咲「う、ううん。それより、今日の放課後は何か予定ある?」 京太郎「今日か? 今日は特にねぇけど?」 咲「ならさ、二人で出かけない?」 京太郎「ん? 別にいいけど?」 咲「えへへ、やったぁ!」 数十分前 照「飲み屋には私達の年齢じゃいけない」 咲「う、うん」 照「だから放課後にレストランに誘う」 咲「わ、分かった。頑張る!」 照「私も見守ってるから大船に乗ったつもりでいて」 咲「頑張るよ!」 現在 咲「(京ちゃんをメロメロにする……!)」 京太郎「(咲のやつ、なんか気合入ってんな)」 放課後 咲「京ちゃん! 早く行こっ!」 京太郎「ああ。でもどこへ行くんだ?」 咲「えっとね……駅前のファミレスでいい?」 京太郎「あそこか。いいぜ」 咲「よし! じゃあ急ごう!」ガシッ 京太郎「ちょ、おい! 引っ張るなよ!」 ダダダ 咲「(小悪魔テク小悪魔テク!)」メラメラ 京太郎「(なんか疲れてんのかなぁ、咲)」 ファミレス カランカラン 咲「着いたー!」 京太郎「おい、急ぎ過ぎだろ……」ハァハァ 店員?「よく来たね。どうぞこちらへ」 咲「はい!」 京太郎「あれ? 今の店員さん、照さんに似てなかったか?」 咲「き、気のせいじゃないかな? それよりほら! 早く早く!」 京太郎「お、おう?」 店員?「……頑張れ咲!」グッ 店員?「水です」コトッ 京太郎「ありがとうございます」ニコッ 店員?「愛してる」 京太郎「え?」 咲「げふんげふんげふん!」バンバン 店員?「やっぱり京照がナンバーワン……」ボソボソ 咲「京咲だもん」 京太郎「??」 咲「いいからほら! メニューメニュー!」 京太郎「お、おう? 何食おうかなー」ペラ 咲「(お姉ちゃんが見守ってくれてる内に、実践しなきゃ!)」 1. あえて2~3世代前のケータイを飲み会に持っていく 咲「あ、あー!!」バッ 京太郎「!?」ビクッ 咲「和ちゃんにメールするの忘れてたなー! 今メールしてもいいかなー?」 京太郎「お、おう? 好きにすれば?」 咲「ありがとう。じゃあ……」ガサゴソ 紙コップ「」 京太郎「……は?」 咲「えっとぉ、メールを打つには……」パコパコ 紙コップ「」グシャグシャ 店員?「(咲、うまいね。あんな古い電話を使っていたら、京ちゃんも放っておけないハズ!!!)」 京太郎「(いきなり目の前で咲が糸電話でメールを打ち始めたんですが)」キョトン 咲「(い、今がチャンス!!!)」 ;,. ;,. ;, ; ;, .; ,. ;,... ...; ;..... ; ;;... .... ;. , ;, . . ,,, ; ;,,,,., ; ,., ;; .,. ; ,;. ;, .; ,;,.; ;. ;,. ., , ; ,;, .,;.;;., .;, , .;.. ;.. ,,. . . . ̄ . . .. .、 ; ; ; ; ;; rァ ,,., ; ; ; ; ;; ; ; ; ;,. ; ;,;. ;, .;, , ..;,. . ,;. ,,;.;. ,;.. ー-=‐''" ...... .. . . .. . . .. . ...丶 ,. ;., ., ,.;., .;, ,;. ; ,;.;., .;;.;..,;. .;, ;..; , , ;.. `¨ラ.. . . . . . . . . . .. . . ヾ 、 ;, .;, ;.;,.;, ;,. ; ; , .;. ;, .;, ; ;.;,;. ,;. . ;,.. /. / .. i] .. . i . ... . . . .. ' ヽ . -イ , .;, .; ,;. ; ;., ;.;;.,; .;, ;, , . ;.. .. ;, ;.. ./.. /.. . ..|A . | ハ l l } / .l ;,; ;,. ;,.;,... ;, .;, ;. ,,.;..; ,;. ;; ;,. ; 厶イ / '.ニ\ |/○}イ ィ N .l ノ ,.; ,;.,. ,;. ;.;.;;. ,;. ;, , .;, ..; ,;., .; |Λ 〔ト、'.ニニヽ|-ニニノイノ .ノ }. 斗' ; ;,. ;,. ,; , . .;. .; ;, ;. ,; ;. , , .; ノ) `} 入 /ン ´ ; ,.; ; .;, .; , ., . , .;, ;. ,; ;. ; ` }Λ{ .>r--- ´l<_ , ,;. ; ,; .;..;, ;. ,; .;, ;. ; ___ r--y''"´ | ノ  ̄二二ヽ . -‐'フ ., .; , ,;. ;. , . ,;. ,;... ; ./ ) .| ‘. ̄´ / .ィ⌒ 、 ヽ'く / '',, ,; .;.;, ;. ;, ;, ; ,; .. l 厂 ̄ Λ ‘. ./ .イl7 、 ` ァ ; ., ;. ,; ;. ;, ;... . . ... ,; ,.. ヾ イ \ ‘ / .ィl| |ル \/ ,....., , ;. , ;, .;;.......;, ;, ;. ;,,,.; , .,,... く\ .|弋≧=彡□≦=-彡 、 /ム ,.., .;, .;, ,;. ; ,;. .;;.;, ;, , .;.;;., ; , , , ;..;.;, ;. \\ |  ̄ /liノ心 〕ト、//ヽl ,.,, ;,. ;, ;., ;. , .,. ,; 京太郎「!?」ゾクッ 咲「あ~ん! このケータイ本当にマジでチョームカつくんですけどぉぉお~!」ジタバタ 京太郎「?!?!?!?」 京太郎「……え?」 咲「……」ジタバタ 京太郎「(これ、何? え? 頭でも打ったのか?)」 咲「(あれ? どうしたの? ってこないな……まだアピールが足りないのかな?)」チラッ 店員?「(もっと! もっと激しく咲!!」)」カンペ 咲「(分かったよお姉ちゃん!!)」コクッ 京太郎「お、おい?」 咲「はぁぁぁぁ!? マジありえないんですけどぉぉぉぉお!! このケータイぃぃぃぃ!!」ガンガンッ 京太郎「ひっ!?」 咲「どうしたらいいのぉぉぉぉぉおっ!?」ガタガタガタ 京太郎「お、おい! どうしたんだ咲!?」ガシッ 咲「(来た!!)」ピコーン! 店員?「よっしゃ!!」 咲「ケータイとか詳しくなくてぇ~! ずっとコレ使ってるんですけどぉ~!」 京太郎「(え? これケータイなの? というか、お前普通の機種持ってただろ? あれ? 俺の誤解なの?)」アセダラダラ 咲「使いにくいんですぅ~! ぷんぷくり~ん(怒)」 京太郎「」 / | |.. . ゙、 . ゙、゙、. \ |. i | i |. ∧ 、.i. .i . ` 、. ! | |、 | | i | ! | | | 、 > | | i 「! ヽート!、 リ ! |ハ ト | ̄ ̄. ,..-、| i | !゙、 _、!二゙、-| イ リ ! |ヽ | / へ.゙、 丶ヾヽ ´{ i` ヽ! 1!| /| !ノ゙、リ (……マジカヨ) ヽ \ !丶  ̄ Vイ ハ |\ i. 丶 \゙、 ` リ `ヽ `┬ 、 ヾ / i ;ィノ U ,....-ィ /,, ‐レリ _  ̄ /゛=!_ \ `ー-、_ _/ ゛== 、 \ / ̄ヽ、 ゛===-、 咲「(決まったッ!!)」ドヤッ 店員?「(クリティカルヒット!!!)」ニヤリ 京太郎「(お、落ち着け俺! これはきっとアレだ! 咲のいたずらか何かだ!)」 咲「(次は新しいの買わないの? ってくるはず!)」ドキドキ 京太郎「(飲まれるな。平常心で……落ち着いて対応するんだ)」 咲「(お願い京ちゃん! 来て!!)」 京太郎「あ、あー……なら、新しいのに買い換えればいいんじゃないか?」 咲「(キタァァァ!!!!)」 店員?「っしぃぃぃ!」 京太郎「ほら、今はスマフォとかあるし……」 咲「なんかなんかぁ~! 最近iPhone5が人気なんでしょー!? あれってどうなのぉ?」 京太郎「あ、いや。新しいのはiPhone6だな。5とか使ってるのはアラフォーくらいだよ」 ※ 1に悪意はありません 咲「新しいの欲しいんですけどわかんなぁぁああい!!」ジタバタ 京太郎「ひっ!?」ビクッ ,.  ̄ ̄ ̄ .、 ,. ´ `ヽ、 / , / / イ | , 、 ヽ / /_/_ / ' ' / | _}_ / | .∨ . / .,ィ/ // l{ | | .| } / / }` | . / .// | { { 从 {从 | / イ / イ/ | | .| { / ' { |/' Ⅵ \ / ' } , } { , 从 ィ=ミ ィ≠ミ/ /-、 / | / {` . . . ' . . . . ム / Yl}ィァ ∧ 从 __ _ / イ__///ア ∨ 、 V ノ 、 ヽイ //// ` . .... } }'/ 〃- く ___ `T ´/ | /, - }-、 / / `ー-´l/ イ} とイ-、 ノ、\ / / /-/ / . 八 / ∨ \ /{ { / / / . ./ \' / .、 ∨__〉 , Ⅵ ,/ / . ./ /__/ /∧ , { { .∨ イ . ./ ∨二二 イ ∧ . | ∧ .}' . ./ \__,/ 、 , Ⅵ 「 ̄} 乂 \ | { |_」 \ ヽ | | / . .∧ |\ } 咲「私かわいそーなコ★」 京太郎「」ガタガタガタガタガタ 店員?「このパフェんっめ……」モグモグ 京太郎「(やばい。一度咲を病院に連れていった方が……)」ブルブル 咲「(あっ、しまった。先に京ちゃんがiPhoneについて突っ込んできちゃった)」ショボン 店員?「(さぁ、どうする咲!?)」モグモグ 咲「(うぅー、どうにかしなきゃ!)」 京太郎「な、なぁ咲」 咲「でもぉぉぉぉぉ!!!」 京太郎「!?」 咲「やっぱりiPhone7が欲しいなぁぁぁぁあっ!!!!」ガタガタ 京太郎「ひゃぁぁぁあっ!?」ガターン! 咲「いつ発売なのぉぉぉぉ!?」ドンドンドンッ!! 京太郎「ご、ごめん! わからない!! 分からないんだ! 許してくれ!!!」 咲「えぇぇぇぇ!? 分からないのぉぉぉぉ?!」 京太郎「は、発売されたら買ってやるから!! だから許してくれ!! な!?」 ,' . . . . ' . . . .| , イ .l | ̄`丶 .| . .| , -‐-、 | | i . . . . \ ,' ! . . . . . / . . . !',| | . |__| . . .j . . j| . . . . | . .| . \ | ... i ヽ ! . . .| . . . . ! . ! . . . | i| ヽ| j . ./| ./ ! . . .;'j .,'| ./ | .| . . . .| . . i ! . . . . .| . . . .', |ヽ . ヒニ三≠/ j/ j . .///_j/ j/| . . . ' i . . . . i | . . . . .! . . . ヽイ X ハ ` / ///"ィハ,`ヽ f . . / . i` 丶 、i. ! . . . . ! . . . . .\{{ { { kd i{ r! }} / . / . . i| ! . . . / ヽ . . . . . !ヽ.マOイ ソ Y) イ!.ノ// . . . . i ドキッ. ;. . . {{ \ . .ヽ `¨¨´ 、 `¨´ { . . . . . . . i ', . 八 `丶\ ゙゙゙゙゙ ゙゙゙゙゙ l . . !. ト、 . i ヽ|ヽヽ. ! ハ| ヽl. \.ー\ ⊂ニ つ .イj/ ! | ヽiヽ }丶 , ---- 、 . ヽヽl ./ /\ \イ l / / , ヘ.Y´ ,xへ| // / ,.へ.\ 咲「え? いいの?」 京太郎「あ、ああ」ゼーハー 咲「(え、えへへ! やった! これで京ちゃんに携帯を買って貰える!)」ニコニコ 店員?「ピンチをチャンスに変えたね、咲」ニヤリ 京太郎「(多分、咲は全国大会の疲れでおかしくなってるんだ。そうに違いない)」ドギマギ 咲「(やっぱりあのサイトは本物だったんだ! よーし、このまま頑張ろう!)」ニコニコ 京太郎「(今日は咲の言うとおりにしておこう)」 咲「(次の実践は……)」 2. Twitterで><を使うとモテる 咲「(Twitterはやってないから……メールで)」 京太郎「……」ビクビク 咲「ね、ねぇねぇ。ちょっとメールで話さない?」 京太郎「え?」 咲「ほら、たまにはそういうのも新鮮だし」サッ 京太郎「(普通の携帯持ってんじゃん)」ガビーン 咲「ねぇ? いいでしょ?」 京太郎「お、おう(ここは合わせておくか)」 咲「えっと……」カチカチ 京太郎「……」 咲「えへへ、送信っと!」 京太郎「(本当に大丈夫なのか、咲)」 ブーッブーッ 京太郎「(どれどれ?)」パカッ 【ファミレス><デートだね><】 京ちゃんはもう何にするか決めた>< ><><><><><><><><私はまだ迷っちゃうなぁー><えへへ><全部美味しそうに><見えるよね><><><私は><京ちゃんと一緒なら><なんでも><><><><美味しく><><食べられるけどね><><><><><><><><><><><><><>< 京太郎「(……なんだこれ)」ドンビキ 咲「(ど、どうかな?)」ドキドキ 店員?「(メールは流石に見れない)」 京太郎「あー、まぁ。いいんじゃないか」パタン 咲「(や、やった!)」 京太郎「(正直内容はあまり入ってこなかったかな)」 咲「(この調子で京ちゃんを落とす!!!)」 3. とりあえず男には「えー! なにそれ!? 知りたい知りたーい♪」と言っておく 京太郎「メールはもういいだろ。早くメニュー決めようぜ」 咲「うん。どうしよっかなー」 京太郎「……なぁ、咲」 咲「何? どうかしたの?」 京太郎「あのさ。お前、少し疲れてるんじゃないか?」 咲「えー! なにそれ!? 知りたい知りたーい♪」キャピッ 京太郎「!?」ゾワッ 咲「もっと教えてよー、詳しくー♪」ニコニコ 京太郎「あ、いや! 悪気があるわけじゃなくて! 俺はただ純粋に心配して、だな」 咲「ふむふむ」 京太郎「お前が何か疲れたりして、おかしくなってるんじゃないかって」アセアセ 咲「(よし、今だ!)」キラーン 店員?「行ったれー! 咲ぃー!」 咲「京ちゃんは私を疲れてるおかしい奴だって思ってるんだね! 覚えたぞぉ! メモメモ!!」 京太郎「……え?(あれ? これ、怒ってんのか?)」」サァー / . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .ヽ / .... . . . |. . . . /| . . . . . / . . . . | . . . . . . . . . . . . .. / . . / . . 斗─- l{ . . . . /| ./| . . ハ . . . . . . . . . . . . .. r-、 / /7 . ./ | ./ Ⅳ / ―- 、 | . . . . . . . . . . . . | 八 ヽ . . r- .rテ≠ミ ∨ |/ \/ . ./⌒) . . . ヽ ‘, /^l| /| i{ ん,ハ j/}/ { ⌒) 〉⌒ヽ、| |/圦.._}弋うン __ / / ̄ ̄ ./ ノ ⌒ヽ'. lN i//) ' ´ ̄ ̄` ノ . . . |/ 〈 ⌒ヽ| i .八 _ (//) rイ . . ./| { 々ノ \ マ ノ /| ./j/ ‘, | __≧... _ イ /ニニ\ ,〉 从 /|ニニニニニニ7ヽ /ニ二二\ /7 ,')]/ |ニニニニニ7__ /ニニニニニ二>、 咲「キュンキュンキュン! キュンキュンキュン!」グルグル ※人差し指を頭に当てて、指をくるくる回しています 京太郎「」 咲「キュンキュンキュン! キュンキュンキュン!」グルグル 京太郎「や、やめてくれ……! 咲、咲ぃ!! 何やってんだよ!!!!」 咲「私のハードディスクに記録しているのでありますっ☆」キャピッ 京太郎「……あ、ぁぁ……咲ぃ」ポロポロ 咲「(京ちゃんが私の可愛さに泣いてる!?)」ドキッ 店員?「凄い、なんて女子力なの」ゾクゾク 京太郎「くそ、くそぉ……(俺が不甲斐ないばっかりに)」グスッ 咲「(これはもう疑いようがないよ! ここで勝負を決めなきゃ!)」 4. レストランではオムライスを食べられない女をアピールせよ 店員?「(遂にやるつもりだね、咲。ここはアシストしなきゃ!)」ダッ 京太郎「なぁ、咲。もうやめ……」 店員?「ご注文をどうぞー!」 咲「(ナイスアシストだよお姉ちゃん!) えーっと、どうしようかなー」 店員?「このお店はオムライスがオススメ」 京太郎「……」 咲「「あーん! 私オムライス食べられないんだよねぇ~(悲)」 京太郎「……そう、なのか? 嫌い、だったっけ……?」 咲「嫌いじゃないし食べたいけど食べられないのっ><」 京太郎「……なんで?」 店員?「(大チャンス!!!)」 咲「……だって、……だって、卵割ったらヒヨコが死んじゃうんだよっ!」 京太郎「……食用の卵は無精卵だから」 咲「赤ちゃんかわいそうですぅ! まだ生まれてないのにぃぃ~(悲)」 京太郎「永遠に生まれないけどね」 咲「ピヨピヨとすら鳴けないんだよ……」ブルブルブル 店員?「(驚異の女子力!!!)」 京太郎「……」 店員?「それで、注文は?」 咲「あ、オムライスで」 店員?「かしこまりましたー」 京太郎「え? 食べられないんじゃ……」 咲「え? そんなこと言ったっけ?」 京太郎「言った」 咲「え、えっと……多分大丈夫になったんだよ」 京太郎「そっか」 咲「うん!」 京太郎「……」 数分後 咲「えへへ、美味しいね」モグモグ 京太郎「ああ。そうだな」 ___,-、 _, ---- 、 , ´ / ` < ⌒\ / | . `ヽ、 / / / l| V ` 、 .' / , { { | | | 、 、_ \_ | | | | |∧| { ハ V 、\  ̄´ | | {/--{ 从 | , |-|、 | 、 \` ' | ,..- | | | ,ィtォ=ミ∧ |,ィtォ、} / |l ハ\_、 /イ{ { r 从 { Vソ ∨' Vソ/イ |∧} ∨乂 \ |/ j' リ }∧ ー . ` ムl/ / 、 八 _ _ 人 }イ/|\ / 「<l| ` .__/_ |////>、 | 「/| -=≦、[二]//l} |、}l∧_ -=≦///////////\ |/////≧=- 京太郎「なぁ、咲」 咲「なぁに?」ニコニコ 京太郎「今まで、お前の気持ちに気づかなくてごめん」 咲「え?」ドキッ 京太郎「俺、ダメな奴だったよ。だけど、これからは頑張るから」 咲「(こ、こここここここ!? これって告白!?)」 京太郎「い、一緒に……ヒグッ、戦っていこうかな……グスッ」 咲「(嬉し泣ききたぁぁぁ! えへへ、私も京ちゃんのこと大好きだよ!!!)」ニヤニヤ 京太郎「(こんな大事な話をしてるのにニヤニヤと……もう、咲の精神は)」ブルブル 店員?「ふふ。悔しいけど、咲と京ちゃんの相性はさすが」 咲「えへへへっ!」 京太郎「咲ぃ……俺が、俺がなんとかしてやるからな」 咲「うん! これからもよろしくね!」 / . . / / i / / . / . . ; イ / . ! ! // .. _ / . / ; イ ;ィ // / / . ! /;/´ ̄ / . / ; -‐/T77i ̄ ; -‐' / 7ナー-、_ / レ ! | ´ / . ∠ イ ___! / /ノ!ナ| // ! /. ;ヘ! ァ"7 iヾ '´,;-ァ=! ;ィ、 / / ! /; イ {ヽ|.'{ b ! h レ i ' /イ !、 // / / | ! ` ゝ ン_ ,!'_ ;ン/ / i 、ヽ、 .!/ !/ / ヽ i , , , , , , , i / / iヽヽ / / / ゙、_| | | /_ノ . ゙、 \ヽ / // ;ハ _ _ ! i 、 、 . i ヽ! ∠./‐' / / 、  ̄ /v、 ヽ 丶 .. ! / / / _,ノ ` r 、 , イ、/ ' ! /\ .、 ! / /;/ `ヽ、__;ィ | ー-`〒´-‐ ' ´ | レ' ヽ;ハノ // _,..-'´ | || !丶,、 _,... -―' ´ | || | `ー-、 照「頑張れ咲。やっぱり京咲がナンバーワン」 第一章 カンッ
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6048.html
設定 京太郎物 京太郎が怜と姉弟で園城寺京太郎に 色々あって千里山が共学 時々地の文あり 以上に注意です。 ◇大阪 園城寺家 ジリリリリリ 京太郎「ん……」バシッ 京太郎「………朝か」ポケー 京太郎「起きないと……な」 京太郎「ふぁーあ」ムクリ 目覚ましの耳をつんざくような音に叩き起こされベットからのそのそと京太郎が起き上がる。 いつもの”日課”を行うべく。 ガチャッ 京太郎「トキ姉ー、起きてるかー?」 京太郎「……って起きてる訳ないか」ハァ 怜「…………」 自身の大事な家族であり、実の姉である園城寺怜の部屋の扉を開ける。 そう、それこそが彼の日課だった。 子供の頃から続く、実の弟である園城寺京太郎の日課。 京太郎「ったく……そろそろ起きないと遅刻するってのによぉ」ポリポリ 京太郎「はぁ……俺が起こさないとトキ姉は何時までも寝てるからなぁ……」 まだ小学生の頃からだろうか、姉は『だって私病弱やからー』とか『うぅ…私低血圧だから朝起きるの辛いわぁ……』と何かと理由を付けて自分から起きようとしなかった。 当然、というべきだろうか。 姉は未だ起きずに、ただただ布団が静かに呼吸に合わせて上下に動いているだけだ。 京太郎(いや、実際問題確かにトキ姉は病弱なんだけどさ……) 京太郎(もう高校3年生になるってのに弟に起こし続けてもらうっておかしくねーか…?) 京太郎(普通はいい年頃の弟に自分の部屋に入られるのとか嫌だろうに……) などと、もう数十回、数百回と繰り返したであろう自問を繰り返す。 だが結局の所は『俺が起こさないと、トキ姉はそのまま寝過ごして遅刻するから起こす』という結論に達するのも数百回目だ。 そんなこんなを考えている内にベッドの中で穏やかに寝息を立てている姉のすぐ側まで歩みを進めていた。 京太郎「トキ姉起きろー」ユサユサ 京太郎「早く起きないと遅刻すんぞー」ユサユサ 掛け布団の上から怜を気遣いつつ、優しく体を揺する。 怜「…………」 だが京太郎の優しさを他所に無常にも怜は無反応だ。 京太郎(と…まぁここまでは割りと想定済みなんだよな) 京太郎(こんな簡単に起きてくれれば苦労しねぇし……)ハァ 京太郎「トキ姉ー!いい加減起きろー!」ユッサユッサ 中々起きない姉に巻き込まれて自身まで遅刻するもの嫌なので、それを防ぐためにも先ほどよりも強くその体を揺する。 いい加減起きてもらわねば困るのだ。 怜「………ん」 怜「………すぅー……すぅー」 京太郎「……これでもだめか」 一瞬身じろぎをしたと思って揺するの止めるが、またすぐに寝息を立て始める。 寝覚めのいい時はこれで起きてくれるし、悪い時でみ『後5分ー……』とか言って時間を稼ぐのだが 京太郎(この反応……今日は強敵だな……) 京太郎(まぁ……こうなれば致し方無いよな)ニヤリッ 京太郎「………すぅー」 京太郎「いい加減起きろおおぉぉぉ!」ガバッ 姉の体を優しく包み込む掛け布団を一気に逸るという強行手段に京太郎は移る。 これを実行すればこれまで姉は100%起きていた。 だが 怜「………ん」スッ しかし剥ぎとった掛け布団を掴む京太郎の手を姉の白く小さい右手が素早く掴みとり、自身の胸元へと持っていく。 まるで布団の代わりに温もりを寄越せと言わんばかりにぐいっと、非力な姉なりの全力で手を引っ張る。 直後、京太郎の手に姉のおもちの感触と薄いピンク色のパジャマ越しに伝わる肌の暖かさが伝わってくる。 怜「んんっー………」ギュッ さらに左手もが出撃し、京太郎の手だけでは飽き足らず腕までも掴みとり自身の体へと引き寄せ密着させる。 怜「……………」ニコニコ 京太郎「……トキ姉絶対起きてんだろ」 目こそ瞑ったままだが、頬が完全にだらしなく緩みきった姉へ容赦なく声をかける。 怜「………ばれてもうた?」ペロッ イタズラっぽく舌をチョロっと覗かせた姉が目を開ける。 京太郎「そりゃな……」 京太郎「さっさと起きねーと母さんが作ってくれたご飯が冷めるし、遅刻すんぞ」パッ 怜「ぁ………」 何歳になっても子供の頃のように自由奔放に京太郎をからかう姉に半ば呆れつつもスッとその手を姉の胸元から抜き取る。 ギューッと京太郎の腕を抱きしめているつもりだったようだが、如何せん姉は非力なので抜くのは容易かった。 京太郎(……空気が冷たい) 姉の体温を直に感じていたせいだろう。 外気に触れた手が少しだけ肌寒く感じてしまった。 京太郎「それじゃ俺はパッパと着替えて先に茶の間に降りてるからトキ姉も早く来いよー」スッ とりあえず寝間着から着替えなくてはどうしようもないので、一度自身の部屋に戻るべく姉に背中を向ける。 怜「えっ、着替えさせてくれないんか?」 京太郎「いやいや、流石にそろそろ自分で着替えろよ」 京太郎「前にも言ったけどさ、この事を友達に話したら高校3年生の姉を弟が着替えさせるのはどう考えてもおかしいって言われたんだぞ……」ハァ 京太郎「それを聞いて先週でトキ姉も、最後だからー後生だからーって言ってアレで最後になったはずだろ?」 怜「……そんな事もあったなぁ」メソラシ 京太郎「おい」 怜「ええか、京ちゃん」キリッ 怜「私はな、やっぱりこう思うんや……」 京太郎(トキ姉が表情を引き締めると大体碌な事言わないんだよなぁ……) ベッドの上でご丁寧に正座をしながら、真っ直ぐに姉が京太郎を見据える。 怜「私は病弱やし、私達は姉弟やろ?」 京太郎「……あぁ」 怜「姉弟は仲が良いほうがええやろ?」 京太郎「…………あぁ」 怜「そう……ならやっぱり私の着替えは京ちゃんがやるべきや」ビシッ 京太郎「いや、その理屈はおかしい」 何処かのドラゴンロードとかいうアダ名を持ってそうな少女の如きドヤ顔でビシィっと俺にか細い人差し指を向けて来る。 怜「えー……」 怜「なんでや……?」 京太郎「いや、むしろ今の説明で納得しろって方が無理だろ」 怜「うぐっ……」 怜「今日の京ちゃんはえらい辛辣やなぁ……」 京太郎「遅刻したくないからな」 京太郎「それじゃ、俺は部屋に…」クルッ 再度反転して自身の部屋に戻ろうとする。 怜「京ちゃんもしかして反抗期入っちゃたんかいな……?」 京太郎「いや、ちげぇよ…」 だがそんな姉の声に反応してしっかりと振り返ってしまう。 最早条件反射だ。 パブロフの犬 そんな単語が頭をよぎる。 怜「私……京ちゃんに見捨てられたら生きていけへん……」ジワッ 京太郎「っ……」 だが、振り返った京太郎の目に入った姉は予想外な事に涙目だった。 怜「…………ぐすんっ」 怜「ごめんな……京ちゃん」 怜「これからは私一人で着替えるわ……もう京ちゃんに迷惑はかけへん……」 怜「こほっ……こほっ……」 怜「病弱な上に……弟離れ出来ない姉で……ぐすっ……ごめんなぁ……」パッ 姉がこぼれ落ちる涙を抑えるように目を両手で覆い隠す。 京太郎「………はぁ」スッ 京太郎「しょうがねぇ……今日だけだぞ……」 そんな姉の姿を見て先ほど決心は何処へやら。 ベットで肩を震わせている姉に再度近づいていく。 どうしても大事な姉のこういう姿を見ると心が痛むのだ。 京太郎(……俺も姉離れ出来てないんだろうな)ハハッ 軽く自嘲気味に笑う。 京太郎(この間も昼休みに屋上で互いにあーんしあいながら弁当を食べていた時に、隣に居たセーラさんに『もう結婚しちゃえばえんちゃうっ!?』なんてからかわれたのを思い出すぜ……) 京太郎(その時に俺もまんざらでもない、なんて思っちまったんだよな……) 京太郎(一緒に昼食を食べていた竜華さんに『姉弟じゃなければ絶対に結婚してるでー』なんて爆笑しながら言われたし……) 京太郎(あの時のトキ姉は珍しい表情をしていたなぁ) 京太郎(まるで結婚後の情景を思い浮かべているように幸せそうに微笑むながら頬を染めて…) 京太郎(何というか……そう、恋する乙女って感じだった) 京太郎(トキ姉ももう高校、3年生だし多分好きな人とか居るんだろうな) 京太郎(なら……せめてその人とトキ姉が結ばれるまでの間は着替えやお風呂の面倒は俺がやってやらないとな) 京太郎(弟として、な) 京太郎(トキ姉曰く、弟は着替えだけじゃなくてお風呂で体を洗いっこしたり、食事をあーんさせあうのとかは当たり前らしい) 京太郎(トキ姉曰く、姉以外の女の子の事を考えるのもあまりよろしくないらしく、たまに俺が竜華さんの事を考えているとまるで未来や俺の考えを予知しているのかのように少しだけ不機嫌そうに絡んでくる) 京太郎(背中からおもちを押し付けてきたり、うなじに舌を這わせてきたり俺の思考を遮るように……) 京太郎(弟だからいいけど……あんな事をもし他の男にやっていたらと考えるとトキ姉の未来が少しだけ不安になる) などと思考に耽っている内に姉のパジャマ越しにでもわかる程に細い体が目の前にあった。 京太郎(それじゃ、着替えさせますか)スッ 姉が座っているベッドの上に同様に腰掛け、制服へと着替えさせるべくパジャマの一番上のボタンへと手を掛ける。 怜「………くっ……」ビビクン 京太郎「………ん?」 だがよく見るとその肩が泣いているのとは別な感じで震えている事に気づいた。 京太郎(まるで……笑いを堪えているような……) 京太郎「………はっ」 京太郎「おい、トキ姉」 声のトーンを下げ、ドスを利かせた声で姉へと話しかける。 怜「な……なんでしょう?」カタカタ 京太郎「手……どけてみろよ」 怜「………ふしゅー……ぽしゅー……」 姉が目を覆い隠し俯いたまま口笛を吹き始める。 京太郎「いや、吹けてねぇしッ!」バッ 怜「うぐっ」 直後、姉の手を優しく、されどしっかりと掴みとり自身に引き寄せその顔を覗き込む。 京太郎「………おい」 そこには泣き顔のなの字もない程にニヤけきった姉を顔があった。 京太郎「………泣きまねか?」 怜「………」 怜「はいっ!」ニコッ 無駄に満面の笑みで元気よく(当社比1.5倍。常人の0.8倍程度)返事をする。 だが今更元気よく返事をした所で色々と手遅れである。 京太郎「………今日は自分で着替えろ」 京太郎「オーケー?」 怜「………はい」シュン その後結局、自身が着替えた後に姉の部屋を覗きこむとまだ下がパジャマを着たままだったのでしょうがなく着替えを手伝い一緒に下へと降りる。 ……… …… … ◇園城寺家 食卓 怜「あ~~ん」ニコニコ 京太郎「ほいっ」ヒョイ 怜「んっ」パクッ 怜「ほれっ」スッ 京太郎「ん……」アーン 怜「よく噛んで食べるんやでー?」ニコニコ 京太郎「うん」モグモグ 母「……ホント、アンタ達は仲いいわよねぇ」ハァ 怜「姉弟やからなっ♪」ニコニコ 京太郎「まぁ姉弟だしな」ウンウン 母「まぁ仲が悪いよりよっぽどいいけど……」 母「間違いだけは起こさないでちょうだいね……」 京太郎「ははっ、当然だろ」 京太郎「なっ、トキ姉?」 怜「………せやせや」メソラシ 母(……本当に大丈夫かしら?)ハァ 京太郎(俺はどっちかというと竜華さんみたいなタイプが好きだしな) 京太郎(トキ姉もかわいいって思う時はあるけど……まぁ実姉だしな)ウンウン 京太郎(うん……やっぱりあの竜華さんのおもちは捨てがたい!) 等と男子高校生らしい考えをしているとその考えを邪魔するように姉の声が響く。 怜「あーもうこんな時間やー」 怜「京ちゃんはやく学校いかへんとー」ボウヨミ 何故かやたらと棒読みである。 京太郎「誰かが起きないせいでこんな時間にな」ジトー 怜「ふっ」ドヤァ 京太郎「いや、褒めてねぇよ!?」 母「漫才はいいからさっさと食べて学校行きなさいなっ!」 二人「「は、はいっ!」」 ……… …… … その後二人で家をダッシュで出て、大急ぎで千里山高校へと向かうも案の定と言うべきか姉が手前の坂で力尽きる。 怜「……あかん……もう限界や……」 京太郎「だから……いい加減鍛えろよ」ハァ 怜「私病弱やから……♪」ニコッ 仕方ないので姉を背負いながら一気に坂を駆け上り、呼吸困難になりつつも辛うじて高校へと到着する。 遅刻ぎりぎりだった。 京太郎「はぁ……はぁ……」タラー 怜「もうちょっとやでー」ニコニコ 3年生の教室がある3階への階段を一段一段ゆっくりと登って行く。 京太郎(トキ姉が千里山高校へと進学した中学2年生の頃からほぼ毎日この行動を続けているせいか、ハンドボール部を辞めたのに体力や筋力が随分と鍛えられた気がするぜ……) 尚、中学は高校より始業開始が30分遅いため、姉を高校に送り届けた後にダッシュで自身の中学へと向かうのが京太郎の日常だった。 怜「京ちゃんふぁいとやでっ!」ギュッ 姉がより一層俺へと強く手や足を絡めてくる。 そのせいで背中に当たるおもちの感触が先ほどよりも強く感じられる。 京太郎「お、おうっ」ドキッ 京太郎(……トキ姉のおもち……少し成長したな……) 京太郎(って何を考えているんだ俺は……!?)ブンブン 怜(京ちゃんの背中……少し成長したなぁ……) 怜(………)スンスン 怜(……もう子供の頃から嗅ぎ慣れた匂いやけど) 怜(京ちゃんの匂い……やっぱり好きやわぁ)ニヘラッ 怜(にししっ) …… … 千里山学生A「お、京太郎君がんばっー!」 千里山学生B「いつもお姉ちゃんのために偉いなぁ」ニコッ 千里山学生C「もうちょっとで教室やでー」フリフリ 京太郎「はいっ!ありがとうございます!」ニコッ 既に見慣れているからだろう、その光景を見られても普通に応援される。 つい昨年まで女子校だったせいか、千里山高校の男女の比率は2:8と言った所だ。 特に3年生はその全員が女子のため、思春期の男子にとってその声援の効果は絶大だ。 怜「…………」ムスー 京太郎(うん……顔は見えないけどトキ姉が不機嫌な気がするぞ) 何故か竜華さんやセーラさんとかを除く他の女の子と接するとトキ姉は不機嫌になる。 本当に何故かはわからないが。 宛もなくその理由を考えていると、首筋にぬめっとした感触が這い回る。 京太郎「!?」ビビクン 怜「ん……れろぉっ……むちゅっ♪」 京太郎(アイエエエエ!?ナンデ!?) 京太郎(ナンデ!?ナメテル!?) 怜(にししっ……慌てとる慌てとるっ♪)ニヤニヤ 怜(まっあんまり困らせても可哀想やし、この辺りでやめとこか)ピタッ 京太郎(止まった……) 京太郎(廊下に居た先輩達に見えない角度でよかった……)ホッ 京太郎(ばれたら嫌な予感しかしなかったぜ……) 京太郎(トキ姉め……家に帰ったら絶対に文句言ってやるぞ……!) 怜(……と思ったけど……なんかあの京ちゃんの味?とでも言うべきやろか……とりあえず我慢出来ひん) 怜(最後にもう一舐めだけ……ええよな?) ガララ 竜華「あっ、やっぱり居たっ!」 竜華「おはようー京太郎君、怜ー!」フリフリ セーラ「うんうん、そろそろ来る頃と思ってたわ!」 数メートル先の教室のドアが開き、何だかんだ姉絡みで付き合いの長い二人の先輩が廊下に出てくる。 京太郎「あ、竜華さん、セーラさんおはようござ」 怜「ぺろっ♪」 京太郎「ひうっ!?」ビビクン 止んだと思った所への不意打ちにより京太郎が姉を背負ったままバランスをその場で崩す。 竜華「あ、あぶないっ!」 怜「きゃっ………」 京太郎(このままじゃトキ姉が地面に……!) 京太郎(それだけは!)ギュッ 咄嗟に姉の細い腰を抱きしめ、姉を自身の上に行くようにするべく自身の体を反転させる。 京太郎(っ……少しだけ背中を打ったけど、トキ姉が地面に落ちることは回避出来たはずだ……!) セーラ「だ、大丈夫か……なっ……!?」 竜華「怪我はな……い……んんんッ!?」 何故か二人の語尾が急速に弱まっていく。 京太郎「ふがふが」 怜「んぁっ………」 京太郎(あれ、大丈夫ですって喋ろうとしたのに声が上手くでねぇ) 京太郎(痛みは全然ないのに……) 京太郎(……って冷静になったら口の上に何かが乗ってる?) 京太郎(………)チラッ 辛うじて動く目線を口の上に向けるとそこには 怜「ふふっ……大胆やなぁ……京ちゃん」ハァハァ 息も荒く、頬を紅潮させた姉の姿があった。 京太郎(………ってことは)オソルオソル そう、京太郎の口には今姉のパンツが密着していた。 京太郎(………あ、やべ)タラー 見れば周りの少女たちが全員口元を抑え、或いは目を背けている。 元女子高には刺激が強すぎたのだろう。 京太郎(……その後結局立ち直った竜華さんとセーラさんがトキ姉を俺の上から引っ張ってどけるまで俺はトキ姉のパンツの食感と匂いを味わうはめになった) 京太郎(この事件は千里山で後々まで語り継がれる事となるのだが、それはまた別のお話) 京太郎(ちなみに去り際にトキ姉が) 怜「そういう事がしたいならもっと早く言ってくれればええのにっ……♪」ボソッ と小さく耳元で囁いてきたのは聞こえなかったことにした。 ◇夕方 園城寺家付近 京太郎(そしていつも通り、ハンドボール部をやめた俺が今所属している部活の麻雀部での部活動を終えて家路についた) 京太郎(……と、まぁ色々とあるけどそれが今の俺とトキ姉の日常だ) 京太郎(夕暮れ時の歩道を姉弟で手を繋いでゆっくりと歩いている) 京太郎(……これは小学生の頃からずっとやっている事だな) 怜「京ちゃん」 なんて昔の思い出を思い出していると姉から声がかかる。 京太郎「ん」 怜「いつもありがとなー」ギュッ 京太郎「ん?何がだ?」 怜の白い手が京太郎の手をよりしっかりと、深く握ってくる。 京太郎は知らないがそれは所謂恋人繋ぎという物だった。 怜「色々と、やでっ♪」ニコッ 京太郎「気にすんなって」ナデナデ 空いた方の片手で自身より遥かに小さい姉の頭を優しく撫でる。 指の間をサラサラとした艶のある姉の髪がすり抜けていく。 怜「んっ」ギュッ 京太郎(昔からトキ姉は頭を撫でられると気持ち良さそうに目を細めるんだよなぁ)ウンウン 怜「あ、せや」 怜「京ちゃん」 京太郎「んー?」 怜「明日の朝もまた起こしてなー?」クビカシゲ 京太郎「……はぁ、いいぜ」グッ 怜「やったっ♪」ニコニコ カンッ ◇大阪 元旦 四天王寺 怜「うわぁ……ぎょうさん人がおるなぁ……」 京太郎「噂には聞いていたけど……すげぇなこれは…」 京太郎は今、初詣だけでおおよそ10万人もの人が参拝に訪れるという四天王寺に来ていた。 竜華「怜は人混みとか嫌いやもんなぁー」 セーラ「ここに来るもの初めてなんとちゃう?」 部活の先輩であり、自身がもっと小さい頃からトキ姉絡みで何かとつるんでいる事が多い竜華とセーラと一緒に。 ちなみに余談だが麻雀を始めたのも彼女達とトキ姉の推薦だった。 怜「だって私病弱やし」ドヤァ 怜「人混みに行ってお正月から風邪とかうつされたら嫌やもん」 竜華「なんでドヤ顔で言うとるん…?」ハァ 京太郎「」 セーラ「……話は変わるんやけどな、なんかさっきからすれ違う連中にジロジロ見られてる気がするわ」 セーラ「俺の思いすごしやろか?」ウーン 京太郎「あははっ、多分気のせいじゃないと思いますよ」 セーラ「へ?なんでや?」キョトン 何故かわからないといった様子でセーラが首をかしげる。 怜「まぁこんだけの美少女が3人も揃ってその中心に一人だけ男がおるんや」 怜「目立つやろうなぁ」ニシシ いたずらっぽく目を細めて姉が笑う。 京太郎「まぁ、そういう事です」 セーラ「はぁ、美少女が三人って何処におるんや?」 セーラ「竜華と怜は……まぁわかるけど三人目って…」 京太郎「ははっ、何を言っているんですか?」 京太郎「セーラさんの事ですよ」 セーラ「……俺ぇ?」クビカシゲ 京太郎「ええ、そうです」 京太郎「今のセーラさんはとても可愛らしいですよ?」 セーラ「かわい…………ふ、ふぇっ!?」カァァ 何を隠そう、今のセーラは普段の学ランや男性的な服装からは想像のつかない女性物の着物を着ていた。 柄は落ち着いた色合いの京小紋。 だがそのシックは雰囲気がセーラのサバサバとした快活な魅力をより引き出していた。 ……間違いなく竜華の手によってだろう、施された薄い化粧が普段は隠されたセーラの少女らしさをしっかりとアピールしている。 京太郎「多分10人の男女が居たら10人がセーラさんに振り返ります」ニコッ セーラ「お……おまぁ……!」 竜華「ふふっ、良かったなぁー?」ニコニコ 竜華「嫌がってたけど」 竜華「お望み通り京君に褒められちゃってっ」ペロッ 片目を瞑った竜華がチョロっと舌を出しながらセーラに微笑む。 セーラ「竜華お前ぇ……!!」ボンッ 林檎のように顔を真赤に染めたセーラが恨めしそうに竜華をジト目に睨みつける。 竜華「くっくっく…セーラの乙女モードがお正月から見れるなんて珍しいなぁ」 竜華「これは今年こそインターハイで優勝出来るかもしれへんでー」ニヤニヤ 怜「せやせや、幸先いいなぁ」ニヤニヤ セーラ「むぐぐ……」 京太郎(うわぁ……悪い顔だ) もし四天王寺で悪い顔コンテストなんて物があれば、間違いなく優勝できるだろう表情で怜と竜華がセーラを見つめる。 京太郎「って……お望み通りってどういう意味です?」キョtン 先ほどのセーラのように訳がわからないといった様子で京太郎が首をかしげる。 竜華「………はぁ」 竜華「今年も困難な道程になりそうやな」 怜「京ちゃんは一筋縄ではいかないで……」ハァ 二人がほぼ同時にため息をつく。 苦笑いのおまけ付きだ。 その理由を知らぬは当の本人だけだった。 京太郎「なんでため息…?」 セーラ「絶対知らない方がええでッ!」クワッ 京太郎「は、はいっ」ビビクン その気迫に押し切られる形で思わず頷いてしまう。 竜華「せや!京君京君!」グイグイ 京太郎「ん、どうしましたか竜華さん」クルッ 右を歩いている京太郎の服の袖を竜華がくいっくいっと引っ張る。 人混みに引っかからないように注意しつつ顔を竜華の方へと向ける。 竜華「そういえばうちの着物の感想聞いてなかったけど、どうや?」クルッ そう言って竜華さんが微笑みを浮かべながらその場で小さく一回転する。 その際に竜華の長く綺麗な黒髪が京太郎の顔を掠め、竜華のシャンプーだろうか? 竜華の雰囲気とよく似たどこか優しい香りが 鼻孔をくすぐる。 チラチラと京太郎達の方を見ていた人々がその様子を見て思わず、おぉ……っと感嘆の声が漏らす。 主にというか9割以上は男から、だが。 直後彼女連れと思わしき男は彼女にどつかれて向き直らされていた。 京太郎(けど……気持ちはわかるぜ……) 何しろ俺もその様子に一瞬目を奪われてしまったのだから。 竜華さんはセーラさんとは違い、紺色の下地に鮮やかな花と鞠模様の振り袖を着ていた。 紺色の下地と竜華さんの黒髪が落ち着いた雰囲気を醸し出しつつも、各所にあしらわれたピンクを基調としつつ、様々な色に染められた華の模様がアクセントになっている。 セーラと同様に普段はしていない化粧を薄くだが施してある事で、元々美少女と呼んでも差し支えのない竜華の華やかさがさらに引き立てられている。 竜華「もしかして……変……かな……?」シュン なんて事を考えていると、竜華が落ち込んでしまった。 恐らく反応が無いせいでイマイチと思われたと考えたのだろう。 京太郎「いえ、とても似合っていますッ!」 京太郎「何かあまりにも綺麗で見惚れてしまって返事が出来ませんでした」ニコッ 率直に思った通りの事を言う。 竜華「そ、それは良かった……」カァァ 竜華「ふふっ……ふふふっ…♪」ニヘラッ 直後、竜華が俯く。 ……ちなみに京太郎からは見えないが頬を染めて非常にだらしのない顔でにやけながら。 竜華(……もし似合ってないとか言われたら泣いてたかもしれへんなぁ) 竜華(けど……褒められてもうた……案外今年こそいけるかもしれへんなっ!)ニコニコ 京太郎「何だろう……この状態……?」 何故か左右に頬を染めた状態に陥った美少女が二人居るといった状況に陥ってしまった。 怜「自分の胸に聞くんやなー」 自身の腕の中にすっぽりと収まっている姉が適当っといった感じで返事をしてくれる。 怜「ん~~……ぬくいわぁ……♪」スリスリ そう、姉は今自身の両肩にそれぞれ俺の腕を乗せて、まるでマフラーの代わりと言わんばかりに首に巻きつけている。 時折、少し寒いのかすりすりと俺の手に頬ずりをしてくる。 京太郎「だから防寒具を着ていけって言ったんだよ」 怜「え~~……なんでや?」 京太郎「だってトキ姉寒そうだし」 京太郎「……ってか実際擦りつけてくる頬冷たいしな」 怜「いやいや、そんな物付けちゃったらこうやって京ちゃんに頬ずり出来ないやない?」 怜「そんなん論外や」 怜「京ちゃんの温もりを肌で味わえないくらいなら凍え死んだ方がマシやっ」ニコッ 京太郎「やれやれ……正月から変わらねぇなぁトキ姉は……」ハァ 怜「ふふっ……くしゅんっ!」 強がりつつもやはり寒いのか姉が可愛らしいくしゃみをする。 京太郎「……だから言ったんだよ」 怜「にししっ……くしゅんっ……」 京太郎「はぁ……正月から一つ貸しだからな」スッ 3人と違い普段着で来ていた京太郎がロングコートを脱ぎ、姉の着物の上から着せる。 ちなみに姉は淡い水色の下地に水玉の模様が入った着物を着ている。 口にこそ出していないが、何処か儚い雰囲気を持った姉によく似合っていると思った。 怜「んっ……ありがとな、京ちゃん」ニコッ 京太郎「前よりは体調が良いっていってもトキ姉が病弱なのには変わりがねぇんだから無理すんなよ」ギュッ 怜「あっ……」カァァ 姉に回している腕に入れている力を強め、こちらへと引き寄せる。 抱きしめるような形になるが、姉に風邪でもひかれたら困るので仕方ない。 基礎体力が無いせいで姉は一度風邪を引くと長引きがちな上に、苦しそうにしている所を京太郎としても見るのは非常に心苦しい物があった。 京太郎「……着物の上からコートって……まぁ変かもしれねぇけど許してくれよ」ギュッ 京太郎「トキ姉が辛そうにしている所……見たくねぇからさ」 怜「………んっ♪」コクンッ 怜(羽織らせてくれたコートから…京ちゃんの匂いが……)スンスン 怜(にししっ………元旦から幸せや)ニコニコ 怜「そや……お礼や」ピトッ 怜「京ちゃんの手……私が暖めたるっ♪」 自身の首元に回されている京太郎の腕から覗く手に自身の両手をピトッとそれぞれ密着させる。 腕部分と違い、手袋を履いていないせいで露出した京太郎の手はとても冷たかった。 京太郎「ってトキ姉の手も冷たいじゃねぇか」 怜「そんなんお互いで触れ合っている内に暖まるやろっ」ニコニコ 京太郎「ん……それもそうか」 怜「せやせやっ♪」 竜華(……この二人) セーラ(本当に姉弟なんやろか……?) セーラ(って言いたくなるくらい仲ええわぁ) 竜華(……今年も厳しい戦いになりそうや)ハァ 二人は内心でこれからの1年に予想される激戦を想像し、ため息をつく。 京太郎「っと着いたな」 そんなやりとりをしている内に賽銭箱の前へと到着する。 怜「さて、お参りしよか」 竜華「せやなっ~」 チャリーン それぞれ小銭を投げ入れる。 パンパン セーラ「今年こそ白糸台を倒して優勝出来ますようにッ!」 元気よくセーラが言う。 竜華「あははっ……セーラ願い事は口に出したらあかんで……」 怜「せやせや、口に出したら叶わなくなるってよく言うなぁ」 セーラ「ほ、ほんまかいなッ!?」ガビーン 京太郎「ふふっ、今のは聞かなかった事にしますんでもう一度お願いごとをするといいと思いますよ」 セーラ「わ、わかったでっ!」グッ 京太郎(……今年こそ千里山が……竜華さんやセーラさん、そしてトキ姉がインターハイで優勝できますように!) 京太郎(……それともしもう一つ可能なら) 京太郎(トキ姉が今年も一年健康で居てれますようにッ!) 怜(私達の最後の夏……竜華やセーラ、京ちゃんの助けに報いるためにも) 怜(うちをレギュラーに抜擢してくれた監督のためにも……勝てますように……) 怜(それと……もしもう一つ可能やったら) 怜(今年こそ京ちゃんと………を……ます……に♪)ニコッ ……… …… … 京太郎「さて、後がつかえていますし俺達は避けるとしましょうか」 竜華「せやなっ」クルッ セーラ「この後どうするんやー?」クルッ 二人が神社を後にすべく来た道を引き返す。 怜「京ちゃんっ」ギュッ 京太郎もそれに続くべく、後ろを向こうとするが片手をぎゅっと握られる事で立ち止まる。 京太郎「ん、どうしたトキ姉?」 怜「今年も一年仲良くよろしくなぁっ♪」ニコッ 京太郎「ん……当然だろ」ギュッ その手を握り返し、手を繋いだまま姉弟で神社を後にする。 そんな二人の顔には笑顔が浮かんでいた。 カンッ